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咲那と鏡香(第8話)

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「とにかく、アンタの手を借りるつもりはねえ」

 エクセリオンを突きつけながら、咲那は戦女神に啖呵を切った。

「それに・・・モリガンは、あれはあれでしっかりした奴だ。そう簡単にはやられねえよ」

「そうですね・・・ああ見えて、モリガンちゃんはしっかりしていますから・・・私も彼女のことを信じます」

 ここまで拒絶されたのでは、さすがのヴァルキリーも引き下がらざるを得なかった。

「交渉決裂・・・ですか。そちらにとって悪い話ではないと思ったのですが」

「あくまでも、今の時点では、だろ?」

 咲那が皮肉気に笑みを浮かべながら、

「あとでどういうふうに借りを返せと言われるか、わかったもんじゃねえしな」

「まあ、貸し借りはともかく、これは私たち自身の問題ですので、どうか、ここはおとなしくお引き取り願えないでしょうか」

 仕方がない・・・といった雰囲気で肩を竦めながら、ヴァルキリーは自身の翼を広げた。

「そうですね・・・今日のところは引き下がりましょうか」

 銀色に近い白色の翼をはためかせ、空に飛び立ったヴァルキリーは、今一度咲那と鏡香を見下ろしながら、

「ですが、あなた方は、いずれ我々の力にすがることになるでしょう・・・その時を楽しみに待っておりますよ」

 そう言い残すと、一筋の光とともに、はるかな天の高見へと飛び去って行ったー。

ーー

「二度と来るな!!」

 咲那の叫びが、果たしてヴァルキリーに届いたのかどうかー。

「あんな奴の手なんか借りなくても、あたしらだけで何とかなるさ」

「はい」

 惑星Σ-11にある浮遊大陸までの定期便が出るまでは、まだ時間がある。無事目的地にたどり着くまでにはさらに時間を要するが・・・。

「モリガンなら大丈夫だ・・・あたしは信じてるぜ」

 モリガンからの連絡が途絶えてから、既に2日目となるが、咲那も鏡香もモリガンのことはよくわかっている。そう簡単には誰かの手に落ちるようなやつではない。

「あいつは・・・絶対に大丈夫だ、何があろうとも、な・・・」

 自身に再確認するかのように咲那が独り言ちる。

「ええ、そうですね。私もモリガンちゃんなら無事乗り越えてくれていると信じていますから」

 鏡香も自分に言い聞かせるかのように呟いた。

 遥か彼方の空の上ー果たして、モリガンは今どこで何をしているのかー。
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