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黒羽一人旅(第7話)

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 一夜が過ぎ、朝、起きてから廊下でメリル、アメリアの二人と邂逅した黒羽ー。

 ちなみに、今の黒羽の姿はやはり学生服姿の女子学生といったところだ。服装だけでなく、髪型も変えており、もはや知り合いの誰が見てもまさか黒羽だとは思いもよらないことだろう。

「おはようございます」

 メリルの方から挨拶してきた。昨日、メリルの姿は魔法で確認していたが、改めてこうして対面してみると、まさかあの魔女の少女の現在の姿が今の目の前の女性だとは、にわかには信じられなかった。さっそく出かけるつもりなのか、ローブを羽織り魔女特有のとんがり帽子をかぶっていた。

 黒羽は、モリガンの母親である魔女エレオノーラとは直接の面識はないものの、その姿を見たことはある。なるほど、現在のモリガンの姿は、母親に似せて変装したのか、と黒羽は得心した。確かに、あと10年くらいたてば今のような姿になる可能性はある。

「おはよう」

 メリルの隣にいるアメリアも挨拶してきた。こちらは眼鏡の研究員風の女性だった。モリガンと一緒にいた女性ーあのアトリエの主、桐ケ谷楓という。

「おはようございます」

 黒羽は、微笑みながら彼女たちに挨拶を返した。その笑顔に、メリル達も親しみを感じたのか、さらに世間話をしてきた。

「学生さんですよね・・・この辺りで学校があるのは、北方の町かしら?」

 水無杏里たちが暮らしていた町よりもさらに北方にある都市ーそこには、前文明時代の教育システムを疑似体験できるという触れ込みで、かなりの規模の学校がある。

 とりあえず、その街から来た生徒であるとごまかす黒羽だった。

「そうですね、学校に提出するレポートの関係で、この村まで来ていました。自由研究みたいなものです」

 実際に学校に通った経験があるわけではないが、どのように運営され、教育が行われているのかくらいは把握している。したがって、よどみなく返答することができた。

「あら奇遇ね・・・私たちもこの村に研究がてら訪れたのよ。特に、こちらの彼女ーアメリアはその手の専門家なのよ」

 メリルに紹介され、アメリアが軽く頷いた。

 もちろん、黒羽はそれが嘘であることは承知している。自分も嘘をついているため、それを指摘するつもりもないが。

「私達、この村には数日位滞在することになるから、もしかしたら、外でご一緒することもあるかもしれないわね」

 どうやら、モリガン達はしばらくはこの村に身を隠すつもりのようだ。それを聞いた黒羽もしばらくの間ここに滞在しようと決めた。

「私の方も、あと2~3日くらいはここでレポート作成のため滞在することになりそうです」

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