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続・モリガン一人旅(第3話)
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「あやつめ・・・飛空鎧から外に出たな」
使い魔の目を通して、モリガンは紫の飛空鎧のハッチから東方の女剣士が地上に降り立ったことを確認するー。
「先ほどは、あの邪術師と対等にやり合っておったようじゃからのう・・・」
「なあ、モリガン、邪術師ってのは、実際どんな奴ら何だ?」
モリガンが邪術師の名を口にしたのを受けて、楓が尋ねてきた。
「一応、私も邪術師に関してごく一般的な範囲なら知識もあるけど・・・なんか、生まれながらにしてやばい病気を抱えてるとか、そんな話を聞いたことがあるが」
「その認識で、概ね間違っておらんが・・・まあ、より正確に言えば、あやつらは、自身から生まれる瘴気をコントロールできん連中なんじゃよ」
「瘴気?」
楓も研究者の端くれー瘴気や害蟲については熟知しているつもりだ。
「瘴気は穢れ・・・害蟲は怪異・・・それぞれ根源となるものが異なるって話だよな」
自らの知識を確認するかのように反芻して、そこで楓が何かに思い至ったように、
「ってことは、もしかして・・・」
「お主が今考えている通りじゃ・・・まあ、瘴気というものは、大なり小なり誰もが持ちうるものー穢れのない人間などこの世には一人もおらんからな・・・」
穢れなき人間など、この世にはいないーそれは、どれだけ聖人君子とあがめられている人物であろうが、変わらぬ事実である。
「まあ、お前の母親でも持ってるってわけだよな」
「当たり前じゃ・・・いくら我が母エレオノーラが「聖女のような魔女」と称えられようが、人である限り穢れはあるーまあ、近い概念でいえば、「業」と言った方がいいのかもしれんがの」
モリガンの母エレオノーラは、その存在に触れた人々からは「聖女のような魔女」と称えられている。とはいえ、いくら超然としていようが、所詮は一個の人間だ。穢れなき人生など歩めるはずもない。
人はいくらあがいても、その穢れと共に生き続けることを余儀なくされる。そこに例外は、ない。
そして、モリガンは、穢れを「業」に近いものと例えた。なるほど、人は生まれながらにして「業」を背負っているとは、前文明時代の仏教でよく語られた話だ。
「邪術師は、実は「純粋」な連中なんじゃよ。ゆえに、本来なら誰もが備わっているであろう瘴気を体内で抑制する力が、あやつらは弱いのじゃ。だから、それを知らぬうちに外へと垂れ流してしまう」
モリガンは、先ほどの邪術師と東方の女剣士との戦いの光景を思い浮かべた。その邪術師が身にまとっていたのは、漆黒のローブ。おそらくは、普段人が多くいるような場所では、フードを目深にかぶっているだろう。なぜなら・・・。
「あやつらは、瘴気を自分でコントロールできんがゆえに、それを抑制する特殊な魔法繊維の衣類を身にまとう。邪術師が顔を他人に見せたがらんのも、吐息の中にすら混じる瘴気を抑えるためじゃな」
ただ、邪術師も何人たりとて付き合えないというわけではない。元から魔力的素質のある者達であれば耐性が備わっているので、そういう輩となら問題なく接触できる。
「西方では、邪術師の病を抑制ないしは治療するための研究も進んでおると聞いておる・・・問題は東方の方じゃな」
東方は、前文明時代のヒンドゥー教の影響を色濃く受け継いでいる地域も多い。モリガンが、瘴気を「業」と表現したのもそれが一因だ。つまりは「業=カルマ」であり、カースト制度の習わしが絡んで来るからである。
「ゆえに、あやつらを不可触賤民と同じか、あるいはそれ以上に厄介な存在とみなす風潮もある。結局、邪術師の多くは精神を病んでいくだけでなく、他害行為に及ぶ恐れもあるからのう」
少し眉をひそめながら、モリガンは静かに語った。モリガンは、あまりこの手の話は好きではない・・・まあこんな話題を好きだという物好きはそんなに多くは無かろうが。
「あの紫の乗り手が邪術師を目の敵にしているのも、東方のそう言った事情もある。要は、存在そのものが邪悪で危険という認識なのじゃよ」
「だから、有無を言わさず東方では殺すと、邪術師たちを?」
「・・・西方に比べ、まだ東方には人権意識に乏しい地域もあるからのう・・・せめて、西方側で邪術師の研究がもっと盛んになって、あやつらの病を根治できるようになれば、また話も変わってくるのじゃろうが」
そこまで言った後、再びあの邪術師の娘のことを思い出し、少し鬱になるモリガン。多分、彼女は自分より2~3くらい年上だろうが、それでも近しい年代の人間が周りから迫害される運命にあるのだと思うと、やるせない気持ちになる。
ーまあ、今のわしらにできることはほとんどないのじゃがなー。
あとは、あの邪術師の仲間たちが、いかに彼女を支えていくかということになるだろうー。
使い魔の目を通して、モリガンは紫の飛空鎧のハッチから東方の女剣士が地上に降り立ったことを確認するー。
「先ほどは、あの邪術師と対等にやり合っておったようじゃからのう・・・」
「なあ、モリガン、邪術師ってのは、実際どんな奴ら何だ?」
モリガンが邪術師の名を口にしたのを受けて、楓が尋ねてきた。
「一応、私も邪術師に関してごく一般的な範囲なら知識もあるけど・・・なんか、生まれながらにしてやばい病気を抱えてるとか、そんな話を聞いたことがあるが」
「その認識で、概ね間違っておらんが・・・まあ、より正確に言えば、あやつらは、自身から生まれる瘴気をコントロールできん連中なんじゃよ」
「瘴気?」
楓も研究者の端くれー瘴気や害蟲については熟知しているつもりだ。
「瘴気は穢れ・・・害蟲は怪異・・・それぞれ根源となるものが異なるって話だよな」
自らの知識を確認するかのように反芻して、そこで楓が何かに思い至ったように、
「ってことは、もしかして・・・」
「お主が今考えている通りじゃ・・・まあ、瘴気というものは、大なり小なり誰もが持ちうるものー穢れのない人間などこの世には一人もおらんからな・・・」
穢れなき人間など、この世にはいないーそれは、どれだけ聖人君子とあがめられている人物であろうが、変わらぬ事実である。
「まあ、お前の母親でも持ってるってわけだよな」
「当たり前じゃ・・・いくら我が母エレオノーラが「聖女のような魔女」と称えられようが、人である限り穢れはあるーまあ、近い概念でいえば、「業」と言った方がいいのかもしれんがの」
モリガンの母エレオノーラは、その存在に触れた人々からは「聖女のような魔女」と称えられている。とはいえ、いくら超然としていようが、所詮は一個の人間だ。穢れなき人生など歩めるはずもない。
人はいくらあがいても、その穢れと共に生き続けることを余儀なくされる。そこに例外は、ない。
そして、モリガンは、穢れを「業」に近いものと例えた。なるほど、人は生まれながらにして「業」を背負っているとは、前文明時代の仏教でよく語られた話だ。
「邪術師は、実は「純粋」な連中なんじゃよ。ゆえに、本来なら誰もが備わっているであろう瘴気を体内で抑制する力が、あやつらは弱いのじゃ。だから、それを知らぬうちに外へと垂れ流してしまう」
モリガンは、先ほどの邪術師と東方の女剣士との戦いの光景を思い浮かべた。その邪術師が身にまとっていたのは、漆黒のローブ。おそらくは、普段人が多くいるような場所では、フードを目深にかぶっているだろう。なぜなら・・・。
「あやつらは、瘴気を自分でコントロールできんがゆえに、それを抑制する特殊な魔法繊維の衣類を身にまとう。邪術師が顔を他人に見せたがらんのも、吐息の中にすら混じる瘴気を抑えるためじゃな」
ただ、邪術師も何人たりとて付き合えないというわけではない。元から魔力的素質のある者達であれば耐性が備わっているので、そういう輩となら問題なく接触できる。
「西方では、邪術師の病を抑制ないしは治療するための研究も進んでおると聞いておる・・・問題は東方の方じゃな」
東方は、前文明時代のヒンドゥー教の影響を色濃く受け継いでいる地域も多い。モリガンが、瘴気を「業」と表現したのもそれが一因だ。つまりは「業=カルマ」であり、カースト制度の習わしが絡んで来るからである。
「ゆえに、あやつらを不可触賤民と同じか、あるいはそれ以上に厄介な存在とみなす風潮もある。結局、邪術師の多くは精神を病んでいくだけでなく、他害行為に及ぶ恐れもあるからのう」
少し眉をひそめながら、モリガンは静かに語った。モリガンは、あまりこの手の話は好きではない・・・まあこんな話題を好きだという物好きはそんなに多くは無かろうが。
「あの紫の乗り手が邪術師を目の敵にしているのも、東方のそう言った事情もある。要は、存在そのものが邪悪で危険という認識なのじゃよ」
「だから、有無を言わさず東方では殺すと、邪術師たちを?」
「・・・西方に比べ、まだ東方には人権意識に乏しい地域もあるからのう・・・せめて、西方側で邪術師の研究がもっと盛んになって、あやつらの病を根治できるようになれば、また話も変わってくるのじゃろうが」
そこまで言った後、再びあの邪術師の娘のことを思い出し、少し鬱になるモリガン。多分、彼女は自分より2~3くらい年上だろうが、それでも近しい年代の人間が周りから迫害される運命にあるのだと思うと、やるせない気持ちになる。
ーまあ、今のわしらにできることはほとんどないのじゃがなー。
あとは、あの邪術師の仲間たちが、いかに彼女を支えていくかということになるだろうー。
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