テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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我ら悠久王国なり(第4話)

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 さらに翌日ー。

 普通の空間より位相をずらされた悠久王国レギューム・エタールヌムの城内。

 やたらと長い廊下を歩く来栖の靴の音が静かに響き渡るー。

「来栖様、ご機嫌麗しゅう」

 長い廊下の途中で、昨日司と乳繰り合っていた銀髪の娘が、目の前に立ちはだかった。名をイザベラという。いで立ちは、城のブラウスにコルセット、黒のショートパンツに、なぜか軍帽と軍靴というもので、別にこの悠久王国の軍隊ではないのだが(そもそも、ここにいるのは私兵ばかりで、正式な軍隊は存在しない)、勝手に自身を少尉と名乗っている。いきなり尉官クラスであった。

「・・・そういうお前は、全然機嫌がよさそうには見えないな」

 来栖が皮肉気に告げると、イザベラは多少すねたような口調で、

「・・・昨日のアレをご覧になられては、私としても・・・」

「・・・」

 司とは異なり、イザベラは他の一般的な女性と同じく、異性に裸を見られるのはさすがに羞恥心を刺激するものだったようだ。

「・・・私も気を付けているつもりなんだがね・・・当分の間、司が男ばかりとやり合っていたからな・・・油断した」

 一昨日はユリウスを連れ込み、彼と共に悦楽に浸っていた。その前も、他の少年を連れ込んでいたはずだ・・・正確に言えば、少年相当の姿かたちをした不老の男なのだが。

 つくづく、司の気まぐれにも困ったものである。

「昨日のことに関してはすまなかった・・・少尉殿」

 敢えて少尉の部分を強調しながら、イザベラに謝罪する来栖ーこの悠久王国には軍隊がないため、少なくとも軍の階級もないのだが、イザベラ自身の機嫌を取るため、敢えて彼女の趣向に併せることにする。

「・・・今度からは、お気をつけて・・・ところで、来栖様、昨日おっしゃられていた緊急招集についてなのですが」

「ああ」

 蟲生みの可能性のある娘を大樹へと逃がした魔女ー彼女を捕らえるのが目的だ。そのために、自分の部下たちに召集をかけたのだ。

「当然、僕らも参加だよね、来栖さん!」

 今度は、来栖の背後の方から、少年の声が聞こえてきた。金髪碧眼の美少年ーユリウスだ。こちらはいで立ちに関しては、飛空鎧乗りのパイロットスーツとなっている。

 彼は、もう出るつもり満々らしい。

「・・・イザベラなんかには負けるつもりはないよ、もちろん。司さんのためにも、ね」

 挑戦的な笑みを浮かべて、イザベラに対抗意識を燃やすユリウス。司のためなら何でもできるのがこのユリウスであり、そしてー。

「私も、あなたなんかに負けるつもりはないわ・・・司様のためにも、ね」

 イザベラであった。

 軽く、来栖がため息をつく。

 司の変わった性癖の一つとして、同性同士での性行為しか行わないというものがある。司が男の時は男と、女の時は女としか抱き合わない。

 これは、異性同士での性行為での妊娠を恐れてーとか、そういうことではない。さらに言えば、司たち不死者にはそもそも生殖能力はない。ただ、悦楽を感じるために、それを行うのであって、子孫を作ることはできないのだ。その代わり、自身の命は永遠なのである。

 司は、男の時は、外見年齢が大体12~15歳くらいの少年を、女の時は外見年齢が16歳~20代半ばくらいの美少女、美女を相手にすることが多い。どうやら性別転換により、好みとする年代層も異なってくるらしい。

 同性同士でしか相手をしないという司の変わった性癖のため、司に身を捧げようとする不老の者達の間で、ちょっとしたいがみ合いがある・・・男チームと女チームによる取り合いだ。お互いが目の敵にしているため、今のように少しでも顔を合わせるとその対抗意識ゆえに諍いが起こるのだ。

「・・・なんでもいいが、そろそろ広間に集まる時間だぞ、お前たち」

 これ以上ここで喚かれても面倒だー来栖は、にらみ合うイザベラとユリウスに、大広間に向かうように促したー。

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