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咲那・全裸の逃避行(第3話)
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夜が近づいてくる中、暖を取るための薪を集める咲那ー。
しかし、その途中でふと気が付いたことがある。
「そう言えば、あいつの粘液って・・・」
当たり前だが、その臭いたるや・・・。
「・・・そりゃ、くせえに決まってるよな・・・」
試しに、自身の体臭を確かめるべく、右腕に鼻を近づけてみるー。
「・・・」
・・・とてもではないが、二十歳の若い女性が纏っていいような臭いではない。鏡香と再会した時に、間違いなく指摘されそうである・・・。
「・・・こりゃ、駄目だ・・・マジで体を洗わないと」
思わず、形のいい鼻を摘まみながら、咲那は今まで拾ってきた薪を近くに置き、この森林地帯にある泉を目指した。
害蟲と戦う前に、一応この近辺に何があるかは簡単に把握している。確か、少し開けた場所に小さな泉があったはずだ。尤も、カラスの行水で簡単に取れるような臭いでもないだろうが、ある程度は落としておかなければー。
「・・・災難だ・・・」
かつてないほどの災難に、盛大にため息をつきながら、目的の泉の傍まで足を運んだ。
髪を下ろし、そして、かろうじて無事だったシューズを脱ぎ、そのつま先を水に浸したー。
「~~~っ!」
まだ、水温はさほど下がってはいないようだ。ちょうど心地よい冷たさに、思わず顔を綻ばせる咲那。
それにしても、露天風呂以外で、外で全裸で水に浸かるのは、いつ以来だろうか。
「まあ、たまには水浴びも悪くないよな」
独り言ちながら、全身に纏わりついた臭気を洗い流すべく、泉の中を軽く泳ぐ咲那ー。
おそらく、ここに男性がいた場合、その美しい肢体に釘付けになるのは間違いないだろう。晶曰く「モデル並みの美人」との評価からもわかるように、たわわに実った胸部や引き締まりながらもそれでいて弾力を感じさせる白い双臀、艶めかしい肌、あとは、夕闇の中、金色に輝く艶やかな髪。エルフもかくやといった美貌とプロポーションー。
咲那は、東方西方出身の両親の間に生まれたハーフだ。金色の髪は、西方の父、東方的な顔立ちは東方出身の美しい母に由来するーと、育ての親である剣の師匠から説明された。実際に、両親と暮らした記憶はほとんどない。したがって、自身の両親の顔もわからなかった。
ただ、それでも特に寂しいと思ったことはない。師匠のほか、何かと気にかけてくれる姉代わりの姉弟子もいた。大樹の治安維持組織《ゼクスティン》の副長、一条紗耶香がその人だった。
「・・・さすがに、今こんな恰好してるなんて知れたら、じじいや紗耶香のやつから笑われちまうだろうな・・・」
自慢の姉弟子にして、生涯のライバルでもある紗耶香のしかめっ面を思い浮かべながら、咲那は体の汚れを落とすべく夕闇に沈む泉を泳ぎ回る。
「・・・タオルもないのが、つらいとこだよな・・・」
何せ、衣類に関するものは何も所持していないのだ。体を拭くこともできない。
しばらく水浴びをしたら、すぐに魔法剣エクセリオンの力で薪に火をつけて暖を取らなければ。
「・・・!?」
その時、何者かの気配を感じた。
人間のものではないー蟲でもない別の存在だ。
咲那は、いつでもエクセリオンを取り出せるように準備をし、胸元を腕で隠しながら、背後を振り返ったー。
しかし、その途中でふと気が付いたことがある。
「そう言えば、あいつの粘液って・・・」
当たり前だが、その臭いたるや・・・。
「・・・そりゃ、くせえに決まってるよな・・・」
試しに、自身の体臭を確かめるべく、右腕に鼻を近づけてみるー。
「・・・」
・・・とてもではないが、二十歳の若い女性が纏っていいような臭いではない。鏡香と再会した時に、間違いなく指摘されそうである・・・。
「・・・こりゃ、駄目だ・・・マジで体を洗わないと」
思わず、形のいい鼻を摘まみながら、咲那は今まで拾ってきた薪を近くに置き、この森林地帯にある泉を目指した。
害蟲と戦う前に、一応この近辺に何があるかは簡単に把握している。確か、少し開けた場所に小さな泉があったはずだ。尤も、カラスの行水で簡単に取れるような臭いでもないだろうが、ある程度は落としておかなければー。
「・・・災難だ・・・」
かつてないほどの災難に、盛大にため息をつきながら、目的の泉の傍まで足を運んだ。
髪を下ろし、そして、かろうじて無事だったシューズを脱ぎ、そのつま先を水に浸したー。
「~~~っ!」
まだ、水温はさほど下がってはいないようだ。ちょうど心地よい冷たさに、思わず顔を綻ばせる咲那。
それにしても、露天風呂以外で、外で全裸で水に浸かるのは、いつ以来だろうか。
「まあ、たまには水浴びも悪くないよな」
独り言ちながら、全身に纏わりついた臭気を洗い流すべく、泉の中を軽く泳ぐ咲那ー。
おそらく、ここに男性がいた場合、その美しい肢体に釘付けになるのは間違いないだろう。晶曰く「モデル並みの美人」との評価からもわかるように、たわわに実った胸部や引き締まりながらもそれでいて弾力を感じさせる白い双臀、艶めかしい肌、あとは、夕闇の中、金色に輝く艶やかな髪。エルフもかくやといった美貌とプロポーションー。
咲那は、東方西方出身の両親の間に生まれたハーフだ。金色の髪は、西方の父、東方的な顔立ちは東方出身の美しい母に由来するーと、育ての親である剣の師匠から説明された。実際に、両親と暮らした記憶はほとんどない。したがって、自身の両親の顔もわからなかった。
ただ、それでも特に寂しいと思ったことはない。師匠のほか、何かと気にかけてくれる姉代わりの姉弟子もいた。大樹の治安維持組織《ゼクスティン》の副長、一条紗耶香がその人だった。
「・・・さすがに、今こんな恰好してるなんて知れたら、じじいや紗耶香のやつから笑われちまうだろうな・・・」
自慢の姉弟子にして、生涯のライバルでもある紗耶香のしかめっ面を思い浮かべながら、咲那は体の汚れを落とすべく夕闇に沈む泉を泳ぎ回る。
「・・・タオルもないのが、つらいとこだよな・・・」
何せ、衣類に関するものは何も所持していないのだ。体を拭くこともできない。
しばらく水浴びをしたら、すぐに魔法剣エクセリオンの力で薪に火をつけて暖を取らなければ。
「・・・!?」
その時、何者かの気配を感じた。
人間のものではないー蟲でもない別の存在だ。
咲那は、いつでもエクセリオンを取り出せるように準備をし、胸元を腕で隠しながら、背後を振り返ったー。
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