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ミケとポン太

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ミケとポン太(第1話)

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「はらいた~まえ、はらいた~まえ」

 不気味な声が、日向荘の玄関付近から聞こえてくるー。

「くそ、何だってんだ、いったい・・・!?」

 毒づきながら、晶は玄関を目指すーその時。

「晶君!!」

「清野!?」

 なんと、1階の廊下には、鏡香と共に咲那のもとへと発ったはずの早苗がいた。彼女も、玄関から聞こえてくる怪しげな声に気が付いたらしく、いささか不安げな表情を浮かべながら、晶に呼び掛けてきた。

「あれ・・・清野、お前さん、鏡香さんと一緒に咲那姉のところに行ったんじゃ・・・」

「あ、ああ、ええと・・・」

 すると、なぜか早苗は顔を少し紅潮させ、少し慌てたような雰囲気で言葉を濁らせた。

「うーん、咲那さんの方は鏡香さんが何とかするからって・・・」

「・・・?まあ、確かに鏡香さんなら大丈夫だろうが・・・」

 普段の早苗とはいささか異なる雰囲気に、晶も訝し気な表情を浮かべるものの、今は玄関に迫る謎の声の方が重要だ。一刻も早く、その正体を確認しなければー。

「清野、これから謎の声の正体を確認しに行くぞ」

「うん、わかった」

 早苗は、一瞬の早技で自分の武器である鉄扇を取り出すと、晶の後に続いて玄関へと向かった。

ーー

「はらいた~まえ、はらいた~まえ」

 日向荘の玄関越しに、謎の声が聞こえてくる。

「よし、開けるぞ・・・清野、準備はいいか?」

「私はOKだよ、晶君!」

 早苗が両手の鉄扇を構えたのを確認して、晶は玄関を開ける。

「誰だ!?」

 晶が玄関を開けると、そこにいたのは・・・!

 ・・・動物!?

 いや、おそらくはミケさんと同種の蟲ーそれも益蟲だろう。ただ、その姿は、とある動物・・・というか、それをかなりデフォルメ化したものに似ているといった方が正しいだろうか。

 まず、先頭にいる狸・・・みたいなやつは、ミケさんとほぼ同じ体系で、こっちも糸目。糸目タヌキというのは、あまり聞いたことがないが、そうとしか表現しようがなかった。

 その他、後ろには狐や犬、そして土竜がいるが、土竜以外はみなミケさんと同体形で糸目、唯一土竜だけが図体がでかく、グラサンをかけており、以前晶たちが「秋の領域」で出会ったベンジャミンとよく似ていたー。

「・・・」

「・・・可愛い!!」

 晶が(あきれ果てて)呆然とする中、早苗はこの動物ーもどきたちのことを気に入ったらしく、目を輝かせて見つめているー。

「・・・何だ、お前らは?」

 何となく頭痛がしてきそうな感覚を覚えながら、とりあえず先頭にいる狸ーもどきに尋ねてみる。

「オレ様はポン太ってんだ」

 狸もどきは、偉そうにふんぞり返りながら名を名乗った。

「こいつらは、オレ様の舎弟だぜ」

 なぜだか自慢げに、後ろの動物たちを紹介する狸もどきことポン太。そして、なぜか全員「ふふふ・・・」と不敵に笑っている。

「・・・はらいた~まえって、叫んでいたのはお前らか・・・何なんだ、お前さん達は」

 額を抑えながら、晶は尋ねた。

 ミケさんは、お騒がせ魔女であるモリガンと異なり、全く役に立たない半面、面倒ごとは一切起こさない。まあ、「起こさない」というより、「単に何もしない」という表現が正しいのだが。

 しかし、今回のこいつらの登場を見ると、どちらかというとこれは「面倒ごと」である。

「なあに、ここにいるオレ様の知り合いにちょいと用事があるってだけだぜ」

 ふふん、と笑いながら、なぜか自信満々に応じるポン太。

「・・・」

「いるんだろ、ここにミケのやつが?」

「うん、いるよ、ミケさん」

「あ、清野・・・!」

 そう言えば、早苗は、ミケさんがこいつらの声に怯えているのを知らなかった。だから、あっさりとミケさんの所在をばらしてしまったのだ。

「ふふふ、ようやく見つけたぜ、ミケ・・・もう逃げられねえぜ、ベイベー」

 ・・・なんか、変に恰好をつけながら、ポン太が高笑いを始める。それにつられてか、後ろの舎弟たちも笑い始めた。

「・・・ミケさんよ、お前さん、こいつらと何があったんだ・・・?」

 頭が痛くなりそうな気分になりながら、この場にいないミケさんに問いかける晶。すると、ポン太自身がここへ来た目的を語り始めた。

「はらいた~まえ、はらいた~まえ・・・カネはらいた~まえ」

 ・・・なるほど、そういうことか。

 どうやら、祓うのではなく、払うであり、その対象は、悪魔ではなくカネだったようだー。

「借金取りか・・・」

 晶は盛大にため息をついたー。
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