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カイトと杏里、大樹へ(第11話)

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 さっそく、早苗と杏里のガールズトークが始まったー。

「杏里さんが暮らしている空飛ぶ島って、どんなところかな?」

 浮遊大陸のことを「空飛ぶ島」と表現する辺りがなんとも早苗らしい。杏里はくすくすとくすぐったそうに笑いながら、

「そうねぇ。浮遊大陸は、各大陸ごとに特色があるんだけど、私たちの暮らしている浮遊大陸は、お昼にまだら模様みたく日の当たる部分と影になる部分が分かれるってところが特徴かな」

「ええ、何それ、面白そうだねぇ」

 杏里の暮らしている浮遊大陸は、惑星Σ-11に内包される形で存在している。そして、この惑星Σ-11は、外見は巨大な回転ジャングルジムのようにも見える。要は、空隙がやたらと広く、わずかな鉱石の部分が外殻をなすという形状なのだ。

 したがって、惑星Σ-11の公転、自転と、実際の太陽の向きによって、日の当たる箇所と影になる箇所が鮮明に分かれるという特徴がある。

「私は、自分たちの浮遊大陸から出るのは今回が初めてだから、他の浮遊大陸がどうなっているのかわからないけど、少なくとも私たちにとって、日向と日影が広大なまだら模様なのは当たり前なのよね」

「一度、見てみたいなぁ」

 考えてみれば、早苗は大樹から出たことがなかった。一つ年下のモリガンは、しょっちゅう自身の魔法で他の場所に行ったりしているようだが、早苗自身は兄の江紀と共に大樹で生まれ、そして大樹だけで今まで生活してきた身である。

 早苗も今年で14歳。外の世界への憧れがあるのも無理からぬことだろう。

「モリガンちゃんなら、すぐに一っ飛びなのになぁ」

 今も浮遊大陸で東方の女剣士の動向を探っているモリガンを、うらやましいと思ったりする。

「そう言えば、モリガンとはどこで知り合ったんだ?」

 晶は、傍らで胡坐をかいているカイトに尋ねた。

 実は、今回の一件について、詳細に関しては知らされていないーというよりも、二人のことを教えてくれた鏡香自身も、モリガンから詳しいことを聞く前に二人を受け入れることとしたようだった。

 よほど時間的余裕がなかったのだろうと思われる。

「あ、はい・・・桐ケ谷楓さんという、私の知り合いの家で紹介されました」

 カイトの代わりに杏里が晶に答えた。

「桐ケ谷・・・そういえば、モリガンは知り合いに会いに行くとか言ってたな・・・ひょっとして、その知り合いってのが、その・・・楓さんなのかな」

「そうですね。二人とも、かなり親しかったようでした」

「ふむ・・・」

 モリガンがいろいろと一人で出歩いているというのはわかっていた。スタンドプレーが多い彼女のことなので、てっきり一人でいる方が好きなのかとばかり思っていたが、意外と交友関係は広いのかもしれない。

「今度、やつに詳しいことを聞いてみるか」

 自称「秋の領域最大の魔女」殿は、好き勝手やりまくるだけでなく、隠し事もとにかく多い。それならそれで、上手に立ち振る舞えばいいものを、すぐにばれたり騒ぎを起こしたりするので、そのたびに鏡香による「洗礼」を受けたりするのだ。

 器用なのか不器用なのか、よくわからない魔女殿であったー。
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