テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

文字の大きさ
上 下
295 / 464

カイトと杏里、大樹へ(第4話)

しおりを挟む
 その後、モリガンの使い魔である執事君グレートが紅茶を持ってきて二人に振舞った。

「さぞ、お疲れでしょう。我が主より事情は窺っております。しばらくの間、必要な事柄についてはどうか私の方へ」

 主人であるモリガンには似ずに、なんとも執事らしく礼儀正しい使い魔である。まあ、だからこそ、モリガンも安心してこの場を任せていられるのだろうが。

「むむ、鏡香よ・・・お客さんですかニャ?」

 執事君グレートの挨拶が終わったところへ、1匹の猫・・・みたいな、なんとも肥満体で糸目の生物が現れ、和泉鏡香に尋ねていた。

「喋る猫さん・・・?」

 杏里が、小首をかしげながら、目の前に現れた胴長短足の二足歩行猫型生物を見つめる。人間でいえば、腰に当たる箇所に、巾着袋をぶら下げていた。

 尤も、杏里も楓の家で魔法フクロウのホルルと付き合いがあるので、しゃべる猫のような魔法生物がいたとしてもさほど驚くことはなかった。それは、カイトも同様のことだ。

「ああ、こちらは・・・」

 不思議そうに猫?を見つめる二人に対して、鏡香が簡単に紹介しようとする・・・が、その前に当の猫?自体が自己紹介を始めた。

「我輩は、ミケと申しますニャー。みんニャ、我輩ニョことを「ミケさん」と呼んでおりますニャー。お二人にもそう呼んでもらえるとありがたいですニャー」

 腰に巾着袋をぶら下げた猫もどきは「えっへん」と言わんばかりに腰ーに当たる部分に前足ー両手を当ててふんぞり返った。

「ミケさんというのね・・・初めまして。私は水無杏里と言います」

 その愛くるしい(見るものによって評価は異なるものの)見た目に、思わず微笑を浮かべながら、杏里は自己紹介をする。

「僕はカイトだよ・・・よろしく、ミケさん」

 杏里に続き、カイトもミケさんに対して自己紹介した。

「ミケさんは、蟲さんなんですよ」

 鏡香が、近寄ってきたミケさんの頭を軽くナデナデしながら告げる。

 ・・・例の如く、ミケさんが「フフフ・・・」と不敵に笑うが、特に意味は感じられなかった・・・。

「蟲さんなんですか・・・てっきり魔法生物さんなのかと思ってました」

 杏里が少し驚いたように、ミケさんを見つめ直す。彼女は、ミケさんがてっきりホルルと同じ魔法生物だと思っていたのだ。

 蟲ーというと、どうしても害蟲の存在を思い起こさせる。もちろん、こうして「日向荘」で鏡香やモリガンと一緒に暮らしているミケさんが、害蟲であるとは思えないとしてもだ。

「ミケさんは益蟲さんですね・・・うちのチームにはなくてはならない存在なんですよ」

 鏡香がミケさんを抱っこする。ミケさんが再び不敵な笑みを浮かべた。

 見ようによっては、猫型の抱っこちゃん人形を抱きかかえているように見える光景でもあった。

 その微笑ましい光景に、思わず微笑する杏里。その傍らで、「ははは・・・」と所在気なく笑うカイトの姿があったー。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

スーパー忍者・タカシの大冒険

Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...