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モリガン一人旅(第26話)

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 自分の家の近くに飛空鎧が不時着したことを知らされて、今更ながらに驚く楓ー。

「・・・」

 モリガンは、そんな彼女に対して呆れ顔且つ半眼で応える。

「・・・あれだけでかいもんが墜ちてくりゃ、普通は気が付くじゃろうが!!」

「いやあ、つい研究に没頭してて、わからなかったんだよ、マジで!!」

「・・・」

 ・・・開いた口が塞がらないとは、まさにこのことを言う。

 でも、よく考えてみれば楓のアトリエに着いた時に、楓は何も問題がなかったかのように普通にモリガンを出迎えていた・・・ということは、本当に気が付かなかったのだろう。

「ホルルも気が付かなかったのか!?」

 そう言えば、楓の執事である魔法フクロウのホルルはこのアトリエにいたはずだ・・・楓が仮に気が付かなかったとしても、彼ならば気が付いたのではないかー。

「生憎と、私は楓様の実験に付き合わされておりまして・・・目覚めたのは、モリガン様がいらっしゃる少し前だったのですよ」

「何じゃと!?」

 魔法フクロウを使っての生体実験か・・・そういや、楓は頻繁にこいつをモルモット扱いしていたのを思い出した。

 仮にも、魔法生物を実験の対象に使うのは、いうまでもなく本来なら禁止されているのだが・・・。

「まあ、危険な実験は一切やってないし、問題ないだろ」

「ないわけあるかー!・・・相変わらずこの女子は・・・」

 まあ、さすがに後遺症が残るやつとか、下手すれば生命に関わりかねないやつとかはやっていないようだが、それにしても・・・である。

「・・・魔法動物愛護協会の連中が見たらどうなることやら」

「その時はその時さ」

 大したことでもないかのように、楓が応える。

 駄目だ、これ以上この剣でこいつと話をしても、却ってペースに呑まれるだけで、建設的な話し合いにはなるまい。

 モリガンは、盛大にため息をついてから、飛空鎧の不時着までに使い魔を通して確認してきた事実を楓に告げた。

 飛空船の中から使い魔によって確認させた飛空鎧同士の戦い、その後の紫の機体のパイロットである東方の女剣士と空のチームの邪術師との戦い、あとは、不時着した飛空鎧の乗り手の少年と楓の顔見知りである水無杏里との邂逅についてー。

「・・・とまあ、こういうわけじゃよ」

 多少身振り手振りを加えながら、楓に事情を説明した。もっとも、いくら説明しても、自分の興味のあること以外はどうでもいいこの変人にとって、どれだけ意味があるのか・・・。

「・・・なんと、私の知らないところで、それだけ面白いことになっていたとは!!」

 ・・・意外にも、興味を持ってくれたようであったー。
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