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モリガン一人旅(第10話)
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「空のチームの連中は・・・この付近じゃとゼルキンス村か」
モリガンは、有人である桐ケ谷楓のアトリエの近くに小さな村があることを思い出した。確か、一面の綿花畑があるだけで、他には特に見どころとなるようなものが一切ない場所だったはずだ。
「珍しいのう。あんな何もない場所に連れ立って行くとは・・・む」
5人のメンバーのうち、金髪ツインテールと黒髪メガネの女子たちが、何やら村長宅へと届け物をしているようだった。
「なんと、こやつら配達もやっとったのか・・・そういえば、空のチームは兼業で特急便とかやってるのが多いと聞いたことがあるのう」
なるほど、本業は《ユグドラシル》と同じく害蟲退治なのだろうが、それだけでは厳しいのでこうして副業として配達もやっているというわけか。
元が空賊上がりなだけに、生活力はそれなりにあるというわけだ。
「邪術師のことは少し気になるが・・・今度は紫の飛空鎧の方も見てみるかの」
分裂させた使い魔に、紫の飛空鎧を追跡させている。使い魔からの映像で、今しがた紫の機体がゼルキンス村から少し離れた窪地に着陸したのを確認した。
「まあ、この辺りなら確かに周りに気づかれにくいじゃろうて・・・と言っても、この辺りで人が通る可能性はあまり高くはないじゃろうが・・・む」
紫の機体のハッチが開く。中から、搭乗者がその姿を現した。
「おお」
その姿に、思わず感嘆の声を上げるモリガン。東方の人間だろうということは推測できていたが・・・。
「まさか・・・女子じゃったとはのう」
しかも、かなり容姿端麗な人物だった。
艶やかな黒髪は、頭頂部で高く結い上げられており、腰くらいまで伸ばされていた。その黒髪は、ウェーブのきつい邪術師の少女とは異なりまっすぐに伸びており、この辺りもこの人物の性格が現れているような気がした。
顔立ちは端正ー東方人にありがちな、平坦で低い鼻ーということはなく、彫りの深さと通った鼻筋、そして意志の強さを感じさせる切れ長の瞳は、見るものを惹きつけると同時に、安易には己の傍に近寄らせまいという強い威圧感さえ感じられるものであった。
まあ、確かに並の男なら太刀打ちできないだろう。高嶺の花どころの話ではない。
だが、モリガンの抱いた感想は・・・。
「こりゃまた、なんとも気難しくて融通の利かなそうな輩じゃのう」
ひじ掛けに肘を乗せ、頬杖を突きながら、モリガンは紫の機体の搭乗者をしばらく観察する。
「少なくとも、咲那や鏡香とは全く異なるタイプなのは間違いなかろう」
大雑把で気さくな性格の咲那と、普段はお淑やかなお姉さん風だが、ひとたび切れると誰よりも怖い鏡香とは、異質な存在であることは容易に推測できる。
尤も、今重要なのはこの人物の性格ではなくー。
「こやつが、あの邪術師を相手にどう立ち回るのか、その実力の程じゃな」
モリガンは、有人である桐ケ谷楓のアトリエの近くに小さな村があることを思い出した。確か、一面の綿花畑があるだけで、他には特に見どころとなるようなものが一切ない場所だったはずだ。
「珍しいのう。あんな何もない場所に連れ立って行くとは・・・む」
5人のメンバーのうち、金髪ツインテールと黒髪メガネの女子たちが、何やら村長宅へと届け物をしているようだった。
「なんと、こやつら配達もやっとったのか・・・そういえば、空のチームは兼業で特急便とかやってるのが多いと聞いたことがあるのう」
なるほど、本業は《ユグドラシル》と同じく害蟲退治なのだろうが、それだけでは厳しいのでこうして副業として配達もやっているというわけか。
元が空賊上がりなだけに、生活力はそれなりにあるというわけだ。
「邪術師のことは少し気になるが・・・今度は紫の飛空鎧の方も見てみるかの」
分裂させた使い魔に、紫の飛空鎧を追跡させている。使い魔からの映像で、今しがた紫の機体がゼルキンス村から少し離れた窪地に着陸したのを確認した。
「まあ、この辺りなら確かに周りに気づかれにくいじゃろうて・・・と言っても、この辺りで人が通る可能性はあまり高くはないじゃろうが・・・む」
紫の機体のハッチが開く。中から、搭乗者がその姿を現した。
「おお」
その姿に、思わず感嘆の声を上げるモリガン。東方の人間だろうということは推測できていたが・・・。
「まさか・・・女子じゃったとはのう」
しかも、かなり容姿端麗な人物だった。
艶やかな黒髪は、頭頂部で高く結い上げられており、腰くらいまで伸ばされていた。その黒髪は、ウェーブのきつい邪術師の少女とは異なりまっすぐに伸びており、この辺りもこの人物の性格が現れているような気がした。
顔立ちは端正ー東方人にありがちな、平坦で低い鼻ーということはなく、彫りの深さと通った鼻筋、そして意志の強さを感じさせる切れ長の瞳は、見るものを惹きつけると同時に、安易には己の傍に近寄らせまいという強い威圧感さえ感じられるものであった。
まあ、確かに並の男なら太刀打ちできないだろう。高嶺の花どころの話ではない。
だが、モリガンの抱いた感想は・・・。
「こりゃまた、なんとも気難しくて融通の利かなそうな輩じゃのう」
ひじ掛けに肘を乗せ、頬杖を突きながら、モリガンは紫の機体の搭乗者をしばらく観察する。
「少なくとも、咲那や鏡香とは全く異なるタイプなのは間違いなかろう」
大雑把で気さくな性格の咲那と、普段はお淑やかなお姉さん風だが、ひとたび切れると誰よりも怖い鏡香とは、異質な存在であることは容易に推測できる。
尤も、今重要なのはこの人物の性格ではなくー。
「こやつが、あの邪術師を相手にどう立ち回るのか、その実力の程じゃな」
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