テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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アサギと黒羽(第21話)

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 黒羽の意志に関係なく、他者を害する可能性があるー?

 アサギのその言葉に、黒羽とブラーナを除くチーム《ラピュタ》の面々が戦慄した。

「おい、お前・・・!」

 怒気を含んだ声で、翔が詰め寄った。

「適当なこと抜かしてんじゃねえぞ・・・そうまでして、黒羽のことを悪者呼ばわりしてえのか!!」

 翔の怒りも尤もだーただ、それは邪術師という者を知らないからでもあった。

 翔の怒鳴り声に、アサギはブラーナの方を見やる。

「ならば、そのブラーナとかいう女に直に訊いてみるがいい。少なくとも、お主らのである私よりも、仲間の言葉の方が説得力があるだろうからな・・・」

「てめえ・・・!!」

「待って、翔」

 今にもアサギにつかみかかろうとした翔を、ブラーナが止める。ブラーナは、何かを決意したかのように、顔を上げて静かに告げた。

「彼女・・・アサギの言うことに嘘はないわ・・・なぜなら邪術師というのは、そういう連中だからよ」

 ブラーナの言葉に、カルミナ、翔、卓が逡巡した。まさか、本当の話なのか・・・。

「邪術師は、その扱う術の特性ゆえに、知らず知らずのうちに邪気を内包してしまう。そして、それはいずれは術者自身をも蝕んでいく・・・一応、症状を抑えることはできるらしいけど、それでもやはり限界があるわ・・・私は、そういう連中を何人も見てきているから、黒羽に将来起こりうることもわかる」

 ブラーナの怜悧な瞳が、黒羽に向けられるー同じチームの、仲間であるはずの黒羽に対してー。

「どこまで耐えられるかは、あくまでも黒羽次第ーでも、術を使い続けていれば、いずれはその時が訪れるのよ・・・」

「そうですね」

 黒羽が、ブラーナの言い分を素直に認めた。その顔は伏せられていて、表情はわからない。

「だからこそ、私は」

 黒羽が顔を上げる。その顔には、どこか寂し気な笑顔が浮かんでいた。

「その時が来たときは、皆さんにご迷惑をかけないように、自らの手で生に幕を下ろすつもりです」

 黒羽の言葉が、仲間たちの胸を鋭利な刃物のように抉った。

「そんな・・・!」

 カルミナが叫ぶ。

「何とかならないの、ブラーナ!私、黒羽と別れるなんてやだよ!」

 それは、カルミナだけではなく、翔と卓も同じだった。いや、おそらくはこの場にいない武人でさえ同じだっただろう。

「・・・私も、邪術師について全て知っているわけではないけど」

 ブラーナがそう前置きしてから、わずかに残された黒羽救済の可能性について、その見解を述べた。

「西方では、邪術師を「悪魔憑き」と呼んでいるんだけど、一応各国の医療機関で、邪術師の症状を生涯に渡って抑制できないかという研究自体は行っているという話は聞いたことがあるわ・・・ただ、邪術師自体の絶対数が少なくて、どこまでそれが進んでいるかは、やはり専門家でないとちょっとわからないわね」

「医学的な研究は行われているってのか・・・なら、まだ可能性はあるんだな!?」

「あくまでも可能性の話よ・・・私が知っているのはそこまで。これ以上は、他の地域の医療関係者を当たるしかないわね」

 まだ、可能性がゼロになったわけではないーそれだけでも、カルミナ達を安堵させるのに十分だったー。
 
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