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アサギと黒羽(第19話)
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「待てよ、黒羽」
この場は収まったーかに思われたが、卓が納得できないといった声を上げた。
「お前、こいつとやり合ったんだろ、命がけで。事情はどうであれ、お前の命を狙ったこの女を放ってはおけないぜ」
翔が、鋭くアサギをにらみつけた。黒羽は、今や《ラピュタ》の一員だ。その自分の仲間の命が狙われて、このまま今回はもう終わりなどと勝手に幕引きをされて、確かに心情穏やかではないのはよくわかる。それは、カルミナや卓も似たようなものだった。ただ、ブラーナだけは微妙な表情をしていたのだが。
そして、アサギにツメを向けながら、
「おい、アンタ・・・」
翔に武器を向けられ、思わず身構えてしまうアサギ。だが、もう抵抗する力は残されていないのは事実だった。
「あんたも、一方的に黒羽にけしかけておいて、このまま、はいさよなら、なんて、ムシのいいことを考えているわけではないだろうな・・・オレたちの仲間を傷つけたんだ。当然、事情はきっちり説明してもらうからな」
「翔、もういいのですよ。私もアサギも、こうして健在なのですから」
黒羽が翔を諫めるが、翔は退くつもりはないらしい。翔ほどはっきりとした態度を示してはいないが、カルミナや卓も同じスタンスのようだ。
「ふ・・・」
そんな《ラピュタ》の面々を見て、アサギは軽く笑うと、
「まあ、確かにそこのお主の言うとおりだな。たとえ相手が邪術師とはいえ、こちらから一方的に戦いを挑んだのは確かだ。その点は認めるよ。確かに、こちらから仕掛けた以上は、説明する必要もあるか」
そして、その場に座り込む。まるで、観念しておとなしく介錯を待つ武士のような格好だった。
「私たちの東方では、邪術師は滅ぼすべき邪な存在だ。その娘ー黒羽が使う術は、まさに邪術の類のもの。私が、おぬしらを近くの衛星で見つけた時、同時に黒羽が邪術を使っているのを見たのでな」
「・・・」
黒羽が、その能力を活用するときにまき散らす黒い羽根は、それ自体が陰の属性を含んだ魔道具だ。当然ながら、誰もがそれを扱えるわけでもない。東方では、邪術師と呼称される者達だけがそれを使用できる。
「我が故郷は、特に邪術師によって苦しめられた歴史がある。やつらは、最近ではカルト化してきてな・・・私の属する燎原が、その対処に当たってきた。ゆえに、我々は、邪術を扱う者を見つけたら、すぐさま殺すべしと言われている。放置しておけば、必ず災禍をもたらす連中だからな」
「・・・黒羽が、お前らが目の敵にしている邪術師だってのか」
慎重に、アサギへと近づきながら、翔は静かに、だが怒気を含んだ声でアサギを問いただした。
「そうだ」
アサギが即答する。その瞳が、剣呑な輝きを帯びていた。
「もっとも、お前たちの中にも、その正体に気が付いていた者がいるようではあるがな・・・そうだろう、そこの黒髪の女よ」
アサギの言葉に、カルミナ、翔、卓の3名が一斉にブラーナの方を振り返った。唯一、黒羽だけがアサギの方を見据えたままだった。
アサギに水を向けられたブラーナは、押し黙っている。
「お主も、東方の出身なら事情はよく知っているのではないか」
ーまさか、ブラーナが東方の出身だったとはー。
カルミナ達3人が、思わず息を呑んだ瞬間だったー。
この場は収まったーかに思われたが、卓が納得できないといった声を上げた。
「お前、こいつとやり合ったんだろ、命がけで。事情はどうであれ、お前の命を狙ったこの女を放ってはおけないぜ」
翔が、鋭くアサギをにらみつけた。黒羽は、今や《ラピュタ》の一員だ。その自分の仲間の命が狙われて、このまま今回はもう終わりなどと勝手に幕引きをされて、確かに心情穏やかではないのはよくわかる。それは、カルミナや卓も似たようなものだった。ただ、ブラーナだけは微妙な表情をしていたのだが。
そして、アサギにツメを向けながら、
「おい、アンタ・・・」
翔に武器を向けられ、思わず身構えてしまうアサギ。だが、もう抵抗する力は残されていないのは事実だった。
「あんたも、一方的に黒羽にけしかけておいて、このまま、はいさよなら、なんて、ムシのいいことを考えているわけではないだろうな・・・オレたちの仲間を傷つけたんだ。当然、事情はきっちり説明してもらうからな」
「翔、もういいのですよ。私もアサギも、こうして健在なのですから」
黒羽が翔を諫めるが、翔は退くつもりはないらしい。翔ほどはっきりとした態度を示してはいないが、カルミナや卓も同じスタンスのようだ。
「ふ・・・」
そんな《ラピュタ》の面々を見て、アサギは軽く笑うと、
「まあ、確かにそこのお主の言うとおりだな。たとえ相手が邪術師とはいえ、こちらから一方的に戦いを挑んだのは確かだ。その点は認めるよ。確かに、こちらから仕掛けた以上は、説明する必要もあるか」
そして、その場に座り込む。まるで、観念しておとなしく介錯を待つ武士のような格好だった。
「私たちの東方では、邪術師は滅ぼすべき邪な存在だ。その娘ー黒羽が使う術は、まさに邪術の類のもの。私が、おぬしらを近くの衛星で見つけた時、同時に黒羽が邪術を使っているのを見たのでな」
「・・・」
黒羽が、その能力を活用するときにまき散らす黒い羽根は、それ自体が陰の属性を含んだ魔道具だ。当然ながら、誰もがそれを扱えるわけでもない。東方では、邪術師と呼称される者達だけがそれを使用できる。
「我が故郷は、特に邪術師によって苦しめられた歴史がある。やつらは、最近ではカルト化してきてな・・・私の属する燎原が、その対処に当たってきた。ゆえに、我々は、邪術を扱う者を見つけたら、すぐさま殺すべしと言われている。放置しておけば、必ず災禍をもたらす連中だからな」
「・・・黒羽が、お前らが目の敵にしている邪術師だってのか」
慎重に、アサギへと近づきながら、翔は静かに、だが怒気を含んだ声でアサギを問いただした。
「そうだ」
アサギが即答する。その瞳が、剣呑な輝きを帯びていた。
「もっとも、お前たちの中にも、その正体に気が付いていた者がいるようではあるがな・・・そうだろう、そこの黒髪の女よ」
アサギの言葉に、カルミナ、翔、卓の3名が一斉にブラーナの方を振り返った。唯一、黒羽だけがアサギの方を見据えたままだった。
アサギに水を向けられたブラーナは、押し黙っている。
「お主も、東方の出身なら事情はよく知っているのではないか」
ーまさか、ブラーナが東方の出身だったとはー。
カルミナ達3人が、思わず息を呑んだ瞬間だったー。
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