テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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アサギと黒羽(第18話)

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「皆さん、先ほども言った通り、その必要はもうありませんよ」

 静かな口調でーしかし、反論は受け付けないといった強い意志を感じさせながら、黒羽が言った。満身創痍ながらも、その瞳には強い意志を宿している。

「もうこのの決着はついています。何も、お互いの命を奪い合う必要などないはずです」

 黒羽の強い口調に、気圧される《ラピュタ》の面々ー普段の彼女の姿からは想像できないがゆえに、逆に反論することすら憚られるような空気が生まれる。

「勝負だと・・・?」

 アサギがにっと口の端を歪め、嗤った。だが、その嘲笑の対象は、何も黒羽だけではなく、自分自身にも向けられているかのようだった。

「これが勝負だと!?黒羽よ・・・私は「処刑」と言い、貴様は「狩り」と言ったではないか」

「それは、最初だけです!」

 黒羽が、叫んだーその姿に、いよいよ《ラピュタ》の面々も、完全に言葉を失ってしまう。普段から黒羽を警戒しているブラーナでさえ、声を出すことができなかった。

「その後、あの一撃の前に二人同時で叫んだはず・・・「勝負」と」

 黒羽の強い口調に、アサギもまた黙り込んでしまう。

 確かに、そう叫んでいたーあの戦いが、あまりにも「愉しかった」がゆえにー。

「ならば、これは力比べでしかありません・・・確かに、予想外の結果にはなってしまいましたが、少なくともここでお互いの命のやり取りをするようなことではないはずです」

「・・・」

 アサギは、少ししてからため息をつくと、今度は盛大に笑い始めたー今度の笑みには嘲りの色合いは含まれてはいなかったー。

「・・・ふっくく・・・」

「ふふ・・・」

 そんな彼女につられてか、黒羽もまた笑い始めるー黒衣の邪術師が声を上げて笑う姿は、《ラピュタ》の面々をも驚愕させた。

「黒羽・・・」

 笑いを止め、アサギが黒羽に、穏やかに語り掛けてきた。今までとは異なり、彼女なりの優しさを感じさせるような、そんな声色だった。

「いいだろう、これは勝負だ。ただ、ちょっと派手にやりすぎたがな・・・」

 顔にかかった前髪を掻き上げながら、丘にできたクレーターに目を向ける。

 ・・・確かに、あまりにも派手にやりすぎた。これでは、下手をすればゼルキンス村まで巻き込んでしまったかもしれない。

「今回は勝負で、双方引き分けーまあ、痛み分けといったところだろうがな、だが」

 アサギは、鞘から太刀を抜き放ち、その切っ先を黒羽に向けるーもちろん、距離はかなり離れているため、ただ相手に向けただけだーそして、殺意も全く感じられない。

「次こそは勝負ではなく、あくまでも東方の者として、貴様の命をもらい受ける」

「簡単には渡しませんよ、私の命は。次は、私も容赦はしませんが」

 黒羽も、アサギに負けじと宣言したー。

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