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アサギと黒羽(第17話)
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「私の負けだ・・・止めを刺せ」
チーム《ラピュタ》の面々が、満身創痍になりながら、かろうじて立っている東方の少女に目を向けた。
凛とした顔立ちと雰囲気を漂わせた、文字通り武士というべき姿の美しい少女だった。
この少女が、今まで黒羽が対峙していた相手だったのかー。
「その必要はありません」
カルミナに右腕を抱えられる形で、黒羽が告げる。
「勝ち負けだけなら、少なくとも私の方がダメージが大きいでしょう・・・私の方こそ負けを認めるべきでしょうね」
黒羽も満身創痍だ。アサギ同様、爆発寸前に後方へと飛び退ったとはいえ、完全にはその余波を凌げたわけではなかった。今は、こうしてカルミナに支えられてようやく立っているような状態だ。少なくとも、自分の力だけで立っているアサギの方が、まだ余裕があると言えるだろう。
「・・・黒羽・・・彼女はいったい?」
カルミナが、黒羽の腕を支えながら尋ねる。この東方の少女がただ者ではないことくらい見ればわかる。
ブラーナは、自分以外の人間を関わらせたくはなかったからだろうとは言ったが・・・。
問われた黒羽の代わりに、アサギ自身が答えた。
「私はアサギ。燎原の一員だ」
「・・・東方出身者が、こんなところで何をしてるんだ?なぜ、黒羽とやり合ってる?」
卓が立て続けに問いかけた。仲間である黒羽がここまでやられた以上、相棒よりは冷静な彼でもさすがに平常心を維持できないといった感じだった。
「・・・貴様らこそ、なぜ邪術師とつるんでいる?」
「質問に質問で返すなよ・・・オレたちは、チーム《ラピュタ》としてこの空域辺りで活動している。黒羽も仲間だ。ただ、それだけのことだよ」
「仲間か・・・」
アサギは、軽くふんと鼻を鳴らした。邪術師を仲間と呼ぶ人間は、自身もまた邪術師くらいなものだったー少なくとも、東方においては。こちらの空域では、必ずしもそうではないということか。
「さっきの質問だが・・・」
アサギは、この惑星付近の衛星上で、害蟲と戦っている《ラピュタ》の面々を確認した時に、黒羽が邪術師であることに気が付いたと説明した。
「・・・我らの故郷では、邪術師はその邪な術により邦に災厄をもたらすとされている。実際、私が今まで斬り捨ててきた輩も、醜悪な者どもばかりであった。邪術師は、その存在そのものが罪ーこれが東方での法であり掟だ」
「・・・だから、黒羽に襲い掛かったというのか」
卓が、今にも詰め寄りそうな勢いでアサギに食って掛かった。
「そうだ・・・もっとも、今となってはもう貴様らに倒される以外、道はなさそうだがな・・・」
今のアサギは、完全に孤立無援だ。さすがにこの状態で、1チームとやり合えば、命はないのもわかっている。
アサギは、ふっと軽く笑みを浮かべると、
「もういい、お前たち、早くとどめを刺せ。戦士として、覚悟はできている」
どのみち、もう戦うだけの余力も残されてはいない。助けも来ない。戦いの結果そのものは痛み分けと言えるのかもしれないが、このような状態に陥った以上は、腹を括るしかないだろう。
アサギはその場で討たれる覚悟を決め、《ラピュタ》の面々を見据えたー。
チーム《ラピュタ》の面々が、満身創痍になりながら、かろうじて立っている東方の少女に目を向けた。
凛とした顔立ちと雰囲気を漂わせた、文字通り武士というべき姿の美しい少女だった。
この少女が、今まで黒羽が対峙していた相手だったのかー。
「その必要はありません」
カルミナに右腕を抱えられる形で、黒羽が告げる。
「勝ち負けだけなら、少なくとも私の方がダメージが大きいでしょう・・・私の方こそ負けを認めるべきでしょうね」
黒羽も満身創痍だ。アサギ同様、爆発寸前に後方へと飛び退ったとはいえ、完全にはその余波を凌げたわけではなかった。今は、こうしてカルミナに支えられてようやく立っているような状態だ。少なくとも、自分の力だけで立っているアサギの方が、まだ余裕があると言えるだろう。
「・・・黒羽・・・彼女はいったい?」
カルミナが、黒羽の腕を支えながら尋ねる。この東方の少女がただ者ではないことくらい見ればわかる。
ブラーナは、自分以外の人間を関わらせたくはなかったからだろうとは言ったが・・・。
問われた黒羽の代わりに、アサギ自身が答えた。
「私はアサギ。燎原の一員だ」
「・・・東方出身者が、こんなところで何をしてるんだ?なぜ、黒羽とやり合ってる?」
卓が立て続けに問いかけた。仲間である黒羽がここまでやられた以上、相棒よりは冷静な彼でもさすがに平常心を維持できないといった感じだった。
「・・・貴様らこそ、なぜ邪術師とつるんでいる?」
「質問に質問で返すなよ・・・オレたちは、チーム《ラピュタ》としてこの空域辺りで活動している。黒羽も仲間だ。ただ、それだけのことだよ」
「仲間か・・・」
アサギは、軽くふんと鼻を鳴らした。邪術師を仲間と呼ぶ人間は、自身もまた邪術師くらいなものだったー少なくとも、東方においては。こちらの空域では、必ずしもそうではないということか。
「さっきの質問だが・・・」
アサギは、この惑星付近の衛星上で、害蟲と戦っている《ラピュタ》の面々を確認した時に、黒羽が邪術師であることに気が付いたと説明した。
「・・・我らの故郷では、邪術師はその邪な術により邦に災厄をもたらすとされている。実際、私が今まで斬り捨ててきた輩も、醜悪な者どもばかりであった。邪術師は、その存在そのものが罪ーこれが東方での法であり掟だ」
「・・・だから、黒羽に襲い掛かったというのか」
卓が、今にも詰め寄りそうな勢いでアサギに食って掛かった。
「そうだ・・・もっとも、今となってはもう貴様らに倒される以外、道はなさそうだがな・・・」
今のアサギは、完全に孤立無援だ。さすがにこの状態で、1チームとやり合えば、命はないのもわかっている。
アサギは、ふっと軽く笑みを浮かべると、
「もういい、お前たち、早くとどめを刺せ。戦士として、覚悟はできている」
どのみち、もう戦うだけの余力も残されてはいない。助けも来ない。戦いの結果そのものは痛み分けと言えるのかもしれないが、このような状態に陥った以上は、腹を括るしかないだろう。
アサギはその場で討たれる覚悟を決め、《ラピュタ》の面々を見据えたー。
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