テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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アサギと黒羽(第13話)

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 名乗った後も、二人の激しい交錯は続いたー。

 アサギは、自らの太刀を鞘に納めると、今度は両手に闘気を送り込んだ。そして、まるで弓を射るような仕草をするーいや、ではなく、弓を射るためだ。

 光の弓と矢が、現れる。己の闘気を物質化した形だ。魔法とは異なり、物質化レベルの闘気ともなれば、その使い手はかなり限られてくる。

 アサギは、闘気で作られた弓に、これまた闘気で生み出された矢をつがえた。さらに力を送り込み、黒羽に狙いを定める。

 対する黒羽も、ただ手をこまねいて見ているわけではない。彼女の周囲には、あたかも黒翼鳥が飛び立った直後であるかのごとく、無数の黒い羽根がまき散らされ、それらが黒羽の漆黒の魔力を増幅させている。

「闘気を物質化させるとは・・・さすがですね、アサギ」

 黒羽は、目を細めると、自分に狙いを定めたアサギに微笑みかけた。

「それほどの使い手と戦えるとは・・・光栄です」

 黒羽は、言いようもない高揚感を覚えた。今までに感じたことがないような・・・高ぶる緊張感。とてもではないが、害蟲程度が相手ではこの感覚を味わうことはできないだろう。

 ゆえに、愉しい。アサギと、このままどこまでもやり合っていたいという気持ちが生まれてくる。

 それがかなわぬということは十分にわかってはいるのだが。

ーいけませんね、夢中になりすぎてしまいましたー。

 知らず知らずのうちに生まれた感情に、驚きながらも、何とかそれを抑え込むべく、努めて冷静に振舞おうとする。

 これは、狩りなのであって、勝負ではないー。

 自分に言い聞かせる。

 尤も、心の変性状態は、何も黒羽だけに生じたものではなかったー。

「貴様も、今まで見たこともないような、面白い魔術を使うな・・・黒羽」

 黒羽に狙いを定めるアサギの表情にも、隠し切れずに笑みが浮かんでいた。

 純粋に、強いものと戦うことができるという喜悦ー。

 こんなものは、今まで「処刑」してきた邪術師ども相手では、絶対に生じることがなかった。目の前に立つ相手こそが、本来自分が戦うべき相手なのではないか、ということに今更ながら気が付いた感じだった。

 いつまでも、黒羽と戦い続けたいー。

 ふと、そんな衝動に駆られてしまう。

ーええい、何を考えているのだ、私はー。

 目の前にいる敵は、斃すべき者だーこれは勝負ではない、邪なる者に対する制裁であり、処刑なのだー。

 そのことを忘れるな、と自分に言い聞かせ、再び弓矢に意識を集中させる。

 ・・・が。

 両者とも、やはり自分の中に芽生えた感情には勝てず・・・。

 思わず二人とも、その言葉を叫んでしまったーしかも、同時に。

「勝負!」

ーと。
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