上 下
243 / 464

アサギと黒羽(第12話)

しおりを挟む
「処刑を!」

「狩りを!」

 二人が同時に叫び、それぞれの武器を携え、間合いに飛び込む。太刀を切り抜くアサギは閃光を纏い、サイズを振り回す黒羽は、漆黒の闇を纏いー。

 それぞれの武器が、火花を出してぶつかり合う。

「ほう・・・」

 アサギが、口元を歪めた・・・愉し気に。

「この私の太刀を受け止められる邪術師がいようとはな・・・」

「私は、今まであなたが戦ってきた者達とは違いますよ」

 対する黒羽の目も、愉悦の色を交えながら細められている。

 一旦、二人は距離を取る。そして・・・互いに疾走し始めた。

「スピードも互角か・・・なるほど、確かに私が戦ってきた邪術師どもとは一味違うようだ」

 今まで戦ってきた連中とは、確かに格が違う。それは、先ほどの一撃を受けて感じたことだ。

 ・・・ネコを被っていたのか・・・こやつは。

 最初に感じた魔力の波動では、かつて倒してきた邪術師たちとそう大して変わらない相手だとばかり思っていたが、実力を隠していたのか。

 と、そこでアサギはふと思い出す。

 そう言えば、こやつらはこの惑星付近の衛星で、害蟲とやり合っていたな・・・あの害蟲は、結構な強敵だったはずだ。実際に害蟲を仕留めたのは他の者だったようだが、あれと互角にやり合っていたということを考えれば、なるほど今のが本来の力というわけか。

「だが、勝つのは私だ!」

 アサギが、疾走しながら、同じく並走している黒羽に向かって太刀を振り上げる。太刀から放たれたかまいたちが、黒羽に襲い掛かる。

「・・・っ!」

 突然放たれた真空の刃にも、黒羽は慌てることなく対処する。彼女の周囲に黒い羽根が舞い、それが真空の刃を防いだ。実際には、黒い羽根を中心に真空波が巻き起こり、それによってアサギの放ったかまいたちが相殺されたような形だった。

「・・・なかなか面白い芸当を使うな、邪術師」

「そちらのかまいたちも、なかなか興味深いですね。東方の御方」

 二人は並走しながら、再び攻撃に転じる隙を窺がっていた。

 スピードもパワーもほぼ互角。技については、お互いがすべての手の内を見せたわけではないので、まだ断定できないが、先ほどの一撃を見ても、そんなに差は開いていないはず。

「やあ!」

 アサギが黒羽に斬りかかった。黒羽は、先ほどと同様に、サイズで相手の攻撃を受け止める。

「・・・そういえば、貴様の名を聞いていなかったな・・・」

「・・・私も、あなたの名を伺っておりませんね」

 アサギも黒羽も、相手の名も知らぬまま死闘を繰り広げていたことを思い出す。特に、アサギに至っては、邪術師の名等聞く価値もないと、最初は思っていたが、今は思い直し、逆に彼女の名を知りたくなった。

 お互いの武器を交差させながら、それぞれの名を名乗る。

「まずは私から名乗ろう・・・私はアサギ。燎原リンイェンの守り手にして、邪術師の処刑人だ。光栄に思うがいい。邪術師ごときに名を名乗ったは、貴様が初めてだ」

 口元を愉悦で歪ませながら、アサギは言い出しっぺの自分から名乗った。

「では、私も・・・私は黒羽と申します。チーム《ラピュタ》の一員で、今は配達員として働いております」

 それに対して、黒羽も律儀に名乗る・・・現在の職業まで付け加えたりする。

「黒羽・・・だと?それは本名ではあるまい」

 相手の名前を胡乱だと思い、重ねて質問する。

「本当の名は?」

「申し訳ありませんが」

 黒羽が、多少を眉を下げて本当に申し訳なさそうに答える。

「真名についてはお答えできません・・・これは、別にあなただからではなく、同じチームの皆さんに対しても同じように知らせてはいません。それは、ことですので」

「・・・そうか」

 ふんっと軽く鼻を鳴らすアサギ。やはり、邪術師というのは面妖な輩ばかりだ。

 まあいい。今すぐに倒す相手だ。所詮は個人的に興味が出たというだけのことー無理して聞き出すこともないか。

「それでは、その名で呼ぶとしよう・・・」

「それでお願いします」

 こうして、二人の不思議な邂逅と、激しい自己紹介が終わったー。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~

m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。 書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。 【第七部開始】 召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。 一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。 だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった! 突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか! 魔物に襲われた主人公の運命やいかに! ※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。 ※カクヨムにて先行公開中

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

メイドから母になりました

夕月 星夜
ファンタジー
第一部完結、現在は第二部を連載中 第一部は書籍化しております 第二部あらすじ 晴れて魔法使いレオナールと恋人になった王家のメイドのリリー。可愛い娘や優しく頼もしい精霊たちと穏やかな日々を過ごせるかと思いきや、今度は隣国から王女がやってくるのに合わせて城で働くことになる。 おまけにその王女はレオナールに片思い中で、外交問題まで絡んでくる。 はたしてやっと結ばれた二人はこの試練をどう乗り越えるのか? (あらすじはおいおい変わる可能性があります、ご了承ください) 書籍は第5巻まで、コミカライズは第11巻まで発売中です。 合わせてお楽しみいただけると幸いです。

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

メデューサの旅 (激闘編)

きーぼー
ファンタジー
本作は「メデューサの旅」の続編となります。 未読の方はそちらから御一読お願いします。 「黄金の種子」を求めて長い旅を続けてきたシュナンとメデューサ、そしてその仲間たちですがついにメデューサの祖先の故郷である東の旧都「夢見る蛇の都」へとたどり着きます。 しかしそんな彼らの前に宿敵ペルセウス王率いる西の帝都の軍隊が立ちはだかります。 絶体絶命のシュナン一行の運命やいかに。 そしてメデューサにかけられた神の呪いは果たして解かれるのでしょうか? 刮目せよ、今ぞ変身の刻(とき)。 ギリシャ神話の時代をベースにした作者渾身のホープ・ファンタジー長編完結篇。 数奇な運命を生きる主人公たちの旅の行く末と物語の結末を是非ご照覧下さい。

処理中です...