テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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アサギと黒羽(第9話)

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「皆さん、少しお話があります」

 配達も終わり、各々村の中で羽根を伸ばしていた《ラピュタ》の面々に対し、黒羽は呼びかけた。

「私は、実はこの辺りを見るのは初めてですので、少し一人で見回ってきてもいいでしょうか?少し見学してみたいのです」

 黒羽の申し出に、カルミナや翔が怪訝そうな顔をする。

「見回るって・・・黒羽、ここ本当に何もないところだよ?」

「退屈なことこの上ねえ場所だな・・・何も見るところがないし、遊ぶところもない」

 敢えて見るところがあるとすれば、綿花畑くらいである。それはそれで風情があるのだが、生憎とカルミナも翔もそういうものにはあまり興味がなかった。

「まあ、黒羽も一人になりたい時もあるってことだろ?」

 さて、改めてどう説得しようか・・・と黒羽が思案し始めると、意外にも卓が助け舟を出してくれた。

「さっき、害蟲の群れも片付けたしな・・・一人で危ないということはないだろうし、別にいいんじゃないか」

「そうですね・・・卓の言う通り、私も少し一人になりたいので」

 実際、最近の黒羽は飛空船の中に缶詰の状態だったので、もっと外の空気を吸いたいという気持ちがあるのは本当のことだ。

「それに、この辺りの綿花畑も、なかなかお目にかかる機会もないので、ちょっと一人で散策してみたいですしね」

 黒羽は、周囲に黒い羽根を何枚かまき散らした。まるで、黒翼鳥が飛び立った直後のように、黒い羽根が周囲を舞う。

「わがままを言って申し訳ありません。あまり遅くならないようにしますので」

「まあ、この後急ぎの用事もないし、ゆっくりしてきていいよ。あんたは普段外に出る機会もないし、羽根を伸ばしておいで」

 カルミナの気づかいに、ぺこりと、律儀に頭を下げて、ゼルキンス村の入口へと向かう黒羽。

 そんな彼女の姿を少し冷めた目で見つめるブラーナだったが、すぐにカルミナの方へと向き直り、

「それじゃあ、私たちも少し村の中でも散策しましょうか」

「なぁんも見るところないけどね、ここ」

 ブラーナは、カルミナの頬を軽くつついて、

「あらあら、カルミナ・・・この風景はなかなかみられるもんじゃないわよ。この際だから、スケッチブックでももってきて写生してみる?」

 実は、ブラーナは絵を描くのが好きだったりする。せっかくだし、このゼルキンス村の風景画を描くというのも悪くはないだろう。

 それに対して、カルミナはというと・・・。

「ああ、あたし細かい絵を描くのは苦手だし、遠慮するよ!」

 絵心が全くないカルミナであった・・・。

「これからどうする、相棒」

 翔は、隣にいる卓に呼び掛ける。

「そうだな・・・村から出て少し腕試しでもするか、相棒」

 暴れ足りない二人は、どうやら村の外で腕試しとしゃれ込むつもりのようだ。

 こうして、《ラピュタ》の面々は黒羽と別行動することになったー。
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