テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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アサギと黒羽(第8話)

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「配達だと・・・?そのような戯言、信じられると思うか!」

 言うに事欠いて、配達などとは・・・。

「・・・さすがに今すぐ信じろとは言いません・・・あなた方にとって、私たちは排除すべき存在なのは知っていますから」

 アサギの頭の中に、鈴のような、そしてどこかあきらめを含んだような声が響いた。

「ですが、この場は退いていただけませんか。ここには村もあるし、何より私の仲間たちもいます。他の皆さんにご迷惑をかけるわけにはいきません」

「黙れ、邪術師」

 アサギが、邪術師の少女からの提案を一蹴する。アサギにとってはもはや、相手の話の内容を信じる、信じない以前の問題だった。

「第一、貴様、邪術師でありながら、なぜ一般人と行動を共にしている!?何が目的だ!?」

「・・・」

「答えられぬか、邪術師よ・・・もっとも、こちらからしてみれば、理由の如何など関係なく、ただ貴様の首を頂くまでだがな」

 相手が嘆息したのを感じる。少したってから、邪術師の少女は、

「では、何が何でもここで私と事を構えたい・・・と?」

 その口調には、何を言ってももはや分かり合えないのだ、という諦観の念が込められていた。

 当たり前だ、邪術師。お前のような輩など、東方では見つかり次第処刑の対象だ。わが手でその首を切り落としてくれる・・・。

「・・・わかりました。ただ、ここには他の方々もいますし、ゼルキンス村の方々にもご迷惑をおかけするわけにはいきません・・・少し時間を頂けますか?」

「ふん、人の命をなんとも思わぬ貴様ら邪術師が、周囲のやつらのことを気に掛けるというのか」

 冗談のような話だ。邪術師どもがかつて行ってきた非道な行為は、枚挙に暇がない。いくらでもあげつらうことが可能だ。そんな輩が、他人や周囲の心配だとは・・・な。

「私個人のことはどうでもいいですが」

 邪術師の少女の口調に、少しずつだが憤りが混じるのを感じた。

「とにかく、他の皆さんを巻き込むわけにもいきません・・・そうですね。これから、私がそちらに向かいます。そこで、改めて話の続きを」

「貴様と話すことなど他にない!」

 邪術師の言葉を強い口調で遮り、アサギは宣告する。

「貴様が私の前に現れたら、即その首をもらう。そのつもりでいろ!」

ーー

「・・・ふう」

 東方の少女との会話ーと呼べるようなやり取りではなかった。相手はこちら側を一方的に「倒すべき敵」としてしか認識していない。目の敵とはこのことを言うだろう。

「東方の方々に偏見があるのは知っていましたが・・・これほどとは」

 自分の能力の特性上、それを知る者達からは受容されがたいということは自覚している。うちのチームでいえば、ブラーナもそうだ。「邪術師」という呼称はさすがに知らなかったようだが、黒羽の能力の起源はどこにあり、過去に何をしてきたのかーということを部分的には知っているーゆえに、ブラーナは、黒羽のことを警戒していた。

 他では、武人も黒羽のことに感づいていたようだったが、ブラーナほど警戒はしていない。元々あまり深く考えない性分というのもあるだろう。

「・・・もっとも、私もおとなしく首を差し出すつもりはありませんが・・・」

 黒羽の目に陰鬱な光が宿る。場合によっては、「邪術師」としての本領を発揮すべきなのかもしれない。

「ですが、まずは皆さんとこの村から離れないといけませんね」

 さて、他の4人にどう説明しようかーと、黒羽は思案し始めたー。

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