テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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アサギと黒羽(第7話)

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 アサギは、周辺を素早く見回したー。

「あの邪術師が何かしたのか・・・?」

 わずかだが、周囲に魔力の波動の乱れを感じた。本当に微々たるものではあるが、このまま見過ごすわけにもいくまい。

「気のせいではない・・・明らかにあやつがこちらに向けて放ったものだ」

 ゼルキンス村の門ー木造で作られた(やはり、ど田舎だ)それに目を向ける。先ほど感じた乱れは、主にそのあたりから感じられたものだった。

「む?」

 ふと、門の上部を見やる。まるで黒翼鳥から抜け落ちたかのような、黒い羽根が門に突き刺さっていた。

「あれか・・・?」

 黒い羽根がこんな角度で刺さっているのは不自然だ。多分、奴だろう。

「黒い羽根とは・・・つまらぬ芸当だな」

 その時、アサギの頭の中に声が聞こえてきた。

「気が付きましたか・・・」

「!」

 突如、自分の頭の中に誰かの声が聞こえ、逡巡したアサギだったが、相手が邪術師であり、この程度の芸当など朝飯前だと思い直し、頭の中の声に問いかける。

「お主は・・・邪術師だな!」

 実際に相手が近くにいるわけではないが、思わずその場で叫んでしまうアサギ。もっとも、誰も見ているわけでもないので、怪しまれることはないが・・・。

「邪術師・・・そう呼ばれるのは久しぶりですね・・・東方の御方」

 頭の中に直接響いてくる声は、鈴が鳴り響くかの如くー。

 アサギは、ふと紫の牙ズーツァオリャのホロスクリーン上で見た、あの憎らしくも美しい少女の容貌を思い出した。直接の対面ではなく、頭の中だけとは言え、鈴のように鳴り響く彼女の声は、確かにその美貌に見合っていると言える。

「ほう、我らのことを知っておるか・・・邪術師の小娘」

 どうやら相手は、東方のことを少しは知っているらしい。

 この空域では、東方のことを知る者はあまり多くはない。せいぜいが異文化に興味がある者が自主的に調べるとか、そんなレベルだ。

「ええ、東方では、私たちのような存在は、それ自体が邪悪だとことも知っています」

 見られている・・・だと?

 自分は、その邪な力を操りながら、邪悪ではないとでも言いたいのか。

 思わずそう叫びたくなるアサギであったが、せっかく相手が接触してきたのだ。ここで激情に駆られて相手を刺激するのではなく、少しでも情報を引き出した方がいいだろう。

 仕留めるのは、それからだ。

「お主・・・いや、貴様はここで何をしている?邪術師よ。この浮遊大陸で、いったい何をしでかすつもりだ?」

 まずは、相手の目的を尋ねる。

「・・・えっと、誤解があるようなので、先に申しておきますが・・・」

 やけに丁寧な口調で語る相手ー慇懃無礼とはこのことを言うのではないかと、アサギは思った。

「私たちは、この村に配達に伺っただけですよ。その前に、害蟲も駆除しましたが、本当にそれだけです」

「・・・配達だと?」

 相手からの返事に、思わずふざけるな!と叫びたくなるアサギ。害蟲を倒したのは、先ほど空から確認していたが、それにしても言うに事欠いて「配達」だとはー。

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