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水無杏里の物語(第16話)
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「ふむ・・・」
ところ変わって、ここは惑星Σ-11付近にある浮遊島で、光沢のある結晶状の樹木に、美しい少女がうずめられている場所ー。
かなりの大木で、その幹の中心くらいの位置に、腰までが埋められている少女-水無杏里はの瞼は固く閉じられたままだ。かすかな呼吸音のみが、彼女が生きているという事実を如実に示していた。
そして、杏里の目の前ーつまりは、地面から浮かび上がり、彼女と同じ位置で愛おし気にその頬を撫でる着物姿の女性ー。
彼女の名は世羅といった。額にある切り傷以外は、完全にも近い美貌を持つ女性ーその彼女が、まるで眠れる我が子を慈しむかのような表情で杏里の頬からその唇へと手を伸ばす。
かすかだが、杏里に反応があった・・・が、それは眠れる少女の覚醒を示すものではなかったようだ。
「なるほど・・・これがカイトという少年ね・・・」
世羅姫は、対象の心の世界に直接干渉し、場合によってはその記憶すら読み取ることができる。精神世界に直接干渉し、肉体的には眠ったままの対象に対して、直に語り掛けることも可能だ。
今、世羅姫は、杏里の心に触れることで、彼女の覚醒を促そうとしているのだ。この少女は、これからの戦いに派必要不可欠だ。もっとも、心根の優しいこの娘が争い等好まぬだろうが・・・。
「・・・」
来るべき悠久王国との決戦において、この水無杏里の力は欠かすことはできないだろう。そして、彼女を戦いに参加させることは、実はそれ自体が彼女自身を守ることにもなる。
それならば・・・と、世羅姫はさらに杏里の傍に体を寄せ、その頭を抱き寄せた。ゆるくウェーブのかかった杏里の髪を優しく撫でてやる・・・。
「お前は、私を恨むかもしれない。だけどね、やつらから身を守るには、お前自身が戦わなくてはならないのよ」
まるで、愛しい我が子を諭すかのように、静かに告げる世羅姫。
いつまでも、杏里をこのままここで眠らせるわけにはいかない。杏里が眠りに就いてから、はや1年・・・そろそろ目覚めが必要なはずだ。
そのためには、どうやらこのカイトという少年がカギを握っているようだということがわかってきた。
「このカイトには、杏里覚醒のための道具になってもらう必要があるわね・・・」
このカイトという少年も、おそらく杏里の覚醒を願っているはずだ。好都合と言えばそうだろう。
「さて、そろそろ私自身も動かないといけないわね・・・憎まれ役として」
軽くため息をつき、そして薄く笑みを浮かべると、世羅姫は、まずは目の前の少女の内面へと意識を集中させ始めたー。
ところ変わって、ここは惑星Σ-11付近にある浮遊島で、光沢のある結晶状の樹木に、美しい少女がうずめられている場所ー。
かなりの大木で、その幹の中心くらいの位置に、腰までが埋められている少女-水無杏里はの瞼は固く閉じられたままだ。かすかな呼吸音のみが、彼女が生きているという事実を如実に示していた。
そして、杏里の目の前ーつまりは、地面から浮かび上がり、彼女と同じ位置で愛おし気にその頬を撫でる着物姿の女性ー。
彼女の名は世羅といった。額にある切り傷以外は、完全にも近い美貌を持つ女性ーその彼女が、まるで眠れる我が子を慈しむかのような表情で杏里の頬からその唇へと手を伸ばす。
かすかだが、杏里に反応があった・・・が、それは眠れる少女の覚醒を示すものではなかったようだ。
「なるほど・・・これがカイトという少年ね・・・」
世羅姫は、対象の心の世界に直接干渉し、場合によってはその記憶すら読み取ることができる。精神世界に直接干渉し、肉体的には眠ったままの対象に対して、直に語り掛けることも可能だ。
今、世羅姫は、杏里の心に触れることで、彼女の覚醒を促そうとしているのだ。この少女は、これからの戦いに派必要不可欠だ。もっとも、心根の優しいこの娘が争い等好まぬだろうが・・・。
「・・・」
来るべき悠久王国との決戦において、この水無杏里の力は欠かすことはできないだろう。そして、彼女を戦いに参加させることは、実はそれ自体が彼女自身を守ることにもなる。
それならば・・・と、世羅姫はさらに杏里の傍に体を寄せ、その頭を抱き寄せた。ゆるくウェーブのかかった杏里の髪を優しく撫でてやる・・・。
「お前は、私を恨むかもしれない。だけどね、やつらから身を守るには、お前自身が戦わなくてはならないのよ」
まるで、愛しい我が子を諭すかのように、静かに告げる世羅姫。
いつまでも、杏里をこのままここで眠らせるわけにはいかない。杏里が眠りに就いてから、はや1年・・・そろそろ目覚めが必要なはずだ。
そのためには、どうやらこのカイトという少年がカギを握っているようだということがわかってきた。
「このカイトには、杏里覚醒のための道具になってもらう必要があるわね・・・」
このカイトという少年も、おそらく杏里の覚醒を願っているはずだ。好都合と言えばそうだろう。
「さて、そろそろ私自身も動かないといけないわね・・・憎まれ役として」
軽くため息をつき、そして薄く笑みを浮かべると、世羅姫は、まずは目の前の少女の内面へと意識を集中させ始めたー。
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