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水無杏里の物語(第15話)
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待合室の椅子の背もたれに背中を預け、何やらぶつぶつ言いながら、顔に手を当て天井を向いているカイトを、かなり心配そうな様子で見つめる杏里。
本当に、大丈夫なのかしら・・・と、カイトにもう一度声をかけようとしたところー。
「おお、杏里。そちらの少年から事情は聞いたぞい」
医務室から、本日最後の診察も終わり、一段落した様子の初老の医師が姿を現した。
「あら、グエン先生。カイトのこと診てくれてありがとうございます」
彼がグエンー町の人々からはグエン爺さんと呼ばれて親しまれている町医者だ。元々は北の都市で医師の仕事に従事していた彼だったが、年を取ってからは小さな町の方で医療活動に従事したいということで、この町に診療所を開いた。
看護師でもない杏里だったが、彼女の治癒能力は思いのほか高いので、しばしばグエン爺さんの手伝いをすることもあった。
「ほっほっほ、そちらの少年なら、なあに心配は要らんじゃろう。まあ、精密検査の結果には数日かかるが、お前さんの治療が適切だったこともあるし、大丈夫じゃ」
人のよさそうな顔をした初老の医師が、自身の顎髭を撫でながら、杏里に対して簡単に所見を聞かせる。
「それならいいんだけど・・・」
杏里が、椅子の背もたれにぐったりともたれかかっているカイトの姿を見て、心配そうに尋ねる。
「何か、さっきからあの調子なのよ、カイト」
「ふむ・・・」
グエン爺さんも、カイトの様子がおかしいと気が付いたのか、椅子にもたれかかるカイトの傍に寄ってみる。
「どうしたのじゃ、少年」
「・・・違う・・・違うんだ、杏里・・・」
まだ、なにかぶつぶつと呟いていたカイトだったが、グエンに声をかけられて、驚いたように椅子から立ち上がった。
「う、うわああ、って、先生?」
先ほど診察してくれた医者の先生であることに気が付いたカイトの声は、少々裏返ったものとなった。
「ほっほっほ、何じゃ、杏里がどうかしたのか、少年よ」
杏里に聞こえないように配慮してか、小声で、グエンはカイトに尋ねてくる。その表情がニヤついているのはなぜなのだろうか・・・。
「え、ああ、ええと、違うんです!僕決しておかしなこととか考えてなくて・・・これは・・・」
しどろもどろになって応えるカイト。そんな彼を見て、ははあ、なるほど・・・と何か納得した様子のグエンがニヤケ面のまま、
「なるほどのう、お主もまた、青春真っ只中というわけじゃな?うらやましい限りじゃのう、若いというのは」
「ふぇっ!?」
カイトが素っ頓狂な声を上げ、それが待合室に響いた。当然ながら、杏里の耳にもそれは入り・・・、
「あのう、グエン先生、カイトは本当に大丈夫なんでしょうか?」
と、今まで以上に心配そうな様子で訊いてくる。
「ああ、大丈夫じゃよ。ただ・・・」
何かを納得したような表情のまま、グエンは「処方箋」を示した。
「杏里、これからもカイトにこういうことがあったら、少し一人にして休憩させてやるといいじゃろう。慣れないことに疲れておるんじゃよ、カイトは」
本当に、大丈夫なのかしら・・・と、カイトにもう一度声をかけようとしたところー。
「おお、杏里。そちらの少年から事情は聞いたぞい」
医務室から、本日最後の診察も終わり、一段落した様子の初老の医師が姿を現した。
「あら、グエン先生。カイトのこと診てくれてありがとうございます」
彼がグエンー町の人々からはグエン爺さんと呼ばれて親しまれている町医者だ。元々は北の都市で医師の仕事に従事していた彼だったが、年を取ってからは小さな町の方で医療活動に従事したいということで、この町に診療所を開いた。
看護師でもない杏里だったが、彼女の治癒能力は思いのほか高いので、しばしばグエン爺さんの手伝いをすることもあった。
「ほっほっほ、そちらの少年なら、なあに心配は要らんじゃろう。まあ、精密検査の結果には数日かかるが、お前さんの治療が適切だったこともあるし、大丈夫じゃ」
人のよさそうな顔をした初老の医師が、自身の顎髭を撫でながら、杏里に対して簡単に所見を聞かせる。
「それならいいんだけど・・・」
杏里が、椅子の背もたれにぐったりともたれかかっているカイトの姿を見て、心配そうに尋ねる。
「何か、さっきからあの調子なのよ、カイト」
「ふむ・・・」
グエン爺さんも、カイトの様子がおかしいと気が付いたのか、椅子にもたれかかるカイトの傍に寄ってみる。
「どうしたのじゃ、少年」
「・・・違う・・・違うんだ、杏里・・・」
まだ、なにかぶつぶつと呟いていたカイトだったが、グエンに声をかけられて、驚いたように椅子から立ち上がった。
「う、うわああ、って、先生?」
先ほど診察してくれた医者の先生であることに気が付いたカイトの声は、少々裏返ったものとなった。
「ほっほっほ、何じゃ、杏里がどうかしたのか、少年よ」
杏里に聞こえないように配慮してか、小声で、グエンはカイトに尋ねてくる。その表情がニヤついているのはなぜなのだろうか・・・。
「え、ああ、ええと、違うんです!僕決しておかしなこととか考えてなくて・・・これは・・・」
しどろもどろになって応えるカイト。そんな彼を見て、ははあ、なるほど・・・と何か納得した様子のグエンがニヤケ面のまま、
「なるほどのう、お主もまた、青春真っ只中というわけじゃな?うらやましい限りじゃのう、若いというのは」
「ふぇっ!?」
カイトが素っ頓狂な声を上げ、それが待合室に響いた。当然ながら、杏里の耳にもそれは入り・・・、
「あのう、グエン先生、カイトは本当に大丈夫なんでしょうか?」
と、今まで以上に心配そうな様子で訊いてくる。
「ああ、大丈夫じゃよ。ただ・・・」
何かを納得したような表情のまま、グエンは「処方箋」を示した。
「杏里、これからもカイトにこういうことがあったら、少し一人にして休憩させてやるといいじゃろう。慣れないことに疲れておるんじゃよ、カイトは」
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