テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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水無杏里の物語(第11話)

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 カイトが予想した通り、梓から質問攻めにされることとなったー。

 空での生活はどうか、飛空鎧で空を飛び回るのはどんな感じか、同じチームにはどんな人たちがいるのか、ここ以外にも他の浮遊大陸を訪れたことがあるのかー杏里もそうだが、梓もまた空の上の世界にはかなりの興味があるらしかった。

 よく考えてみれば、この町には年頃の女子が楽しめるような娯楽には乏しい。一応学校や教会など、人の集まる施設はあるものの、町の規模が小さいこの町では学校と言ってもそんなに大勢が通っているわけではないし、前文明時代と異なり、必ず通学しなければならないという決まりがあるわけでもない。教会に至っては、そもそも友達と集まるような場所でもないだろう。

 杏里だけでなく、梓のような年頃の少女たちにとって、なるほど確かに外の世界ー空の上での生活は、憧れになるというのもわからなくはなかった。

「梓、ごめん。カイトをこれからグエンさんのところに連れて行くから、そのぐらいにしてあげて」

 さすがに、杏里もこれ以上話が長引くとカイトに悪いと思ったのか、これからカイトを病院に連れていくつもりだということを打ち明ける。

「ああ、ごめんなさいカイト君。いっぱい質問しちゃって・・・どうしても、外のことが知りたくなって、つい・・・」

 顔を赤くして、恥ずかし気にうつむく梓。しかし、上目使いにカイトを窺う彼女の表情には、まだ聞きたりなさそうな雰囲気が漂っていた。

 そんな彼女に気を使ってか、カイトは、

「川岸さん、今度またゆっくり話そうよ」

 そう言われて、梓の顔がぱあっと輝いた。

「ええ!」

ーー

「こっちよ、カイト」

 梓と別れて、カイトと杏里、壮太の3人は道の途中で自動走行車を拾ってグエン爺さんが開業しているという診療所を訪れていた。

 この町の規模に相応しく、小さな診療所だった。だが、それなりに人で混雑しており、後から来たカイトたちは、かなり待たされることになりそうであった。

「結構待つことになるかもしれないけど、カイトは大丈夫かしら」

「僕なら大丈夫だよ。待つのには慣れているし・・・」

 カイトが周囲を見回す。空の上での生活がメインとなっていたカイトにとって、こういった診療所を訪れる機会はめったにない。一応「蒼き風アウラ・カエルレウム」が所有する飛空船の中にも医務室はあるが、さすがに診療所とは比較にはならない。

「杏里、カイト君のことを頼めるか、私は先に、カイト君の飛空鎧のことを町工場に頼みに行ってくるよ」

 飛空鎧をこのままあの森の近くに放置しておくわけにはいかない。壮太の言う通り、ここは早めに工場に頼みに行った方がいいだろう。

「ええ、わかったわ。お父さんは飛空鎧のことをお願いね。私は終わるまでカイトについているから」

「すいません、何から何まで面倒見てもらって。飛空鎧のこと、よろしくお願いします」

 カイトが壮太に頭を下げる。そんな彼に、壮太は笑いながら、

「この町では助け合いは当り前さ。それじゃ、また後で」

 壮太は診療所を後にしたー。
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