195 / 464
カルミナとブラーナ(第30話)
しおりを挟む
惑星Σ-11の方に逃れた害蟲を追うチーム《ラピュタ》の面々ー。
「さすがに空の上だと手を出せないからな・・・浮遊大陸のどこかに着陸しておびき寄せることにするか」
あくまで飛空船「白波号」は戦闘艇ではないので、空を飛び回る害蟲を追いかけることはできても攻撃はできない。したがって、一旦浮遊大陸に着陸して、改めて決着をつけるという流れになった。
「こういう時には、確かに攻撃できる船の方がいいよな~オレもガンガン蟲を撃ち落としてぇし」
翔が、まるで銃を持っていて狙いを定めるかのような仕草をしながら、窓の外の害蟲の姿を追っていた。
敵は手負いだ。ゆえに、先ほどの傷の影響もあるのか、飛行速度もさほど早いわけではない。だが、手負いの獣程厄介な相手はいない。油断せず、次こそは確実に仕留めなければならないー。
「また、私が害蟲をおびき出します」
黒羽が周囲に黒い羽根を浮かせた。複数の黒い羽根が、黒羽からの魔力の影響を受けて黒く輝き始める。
「あの害蟲が向かう場所をこちらで決めます。うまく誘導することに成功したら、私が場所を教えますので、そちらまでお願いします」
黒羽が、操舵輪を握る武人に頼む。
「任せな、黒羽の嬢ちゃん」
黒羽の周囲を舞っていた黒い羽根が、突如消える。
「あら、羽根が消えちゃったわ」
突然目の前で羽根が消えたので、カルミナが少し驚いて周囲を見回した。
やはり、さっきまで浮かんでいた黒い羽根は、船内には見当たらなかった。
「ご心配なく、カルミナ」
黒羽が多少表情を柔らかくしながら、カルミナに説明する。
「私の羽根たちは、もうすでに害蟲の背中に突き刺さっていますよ」
「え、羽根だけ瞬間移動させたの?」
目を丸くするカルミナ。
「しかも、背中に突き刺さってるって・・・」
「相手の行動を制限する魔素を含んだ羽根です。と言っても、完全に制御できるわけではありませんが、足止めや少しの間の能力封じくらいなら可能なものです」
そして、右手の人差し指をピンと上に立てて、
「さっきみたいな不意打ちがないよう、可能な限り相手の動きを封じられるようにしておきました。しかも、害蟲自身はそのことには気が付いていません・・・今度こそ、確実に仕留めましょう」
ウィンクのつもりなのか、左目を軽く閉じる黒羽ー例の如く、翔と卓がその可愛さに間抜け面になる。
「へえ、黒羽の嬢ちゃん、アンタ、そんな表情もできるんだな・・・」
操舵輪を動かしていた武人だったが、黒羽の意外な一面を見て相好を崩す。
「はい、私も一応女の子ですので」
黒羽も、武人につられて笑みを見せた。
ーー
「なあ、卓」
そんな中、翔と卓が女子に聞こえないようにひそひそ話を始めた。
「・・・なんだ、翔?」
「黒羽って、マジで可愛いよな」
「・・・だな」
「これで、普段もうちょっと愛想よくしてくれりゃあいいのに」
「同感だ・・・」
はあ、とため息をつく二人。黒羽の意外な一面にだらしなくもメロメロ状態の二人であったー。
「さすがに空の上だと手を出せないからな・・・浮遊大陸のどこかに着陸しておびき寄せることにするか」
あくまで飛空船「白波号」は戦闘艇ではないので、空を飛び回る害蟲を追いかけることはできても攻撃はできない。したがって、一旦浮遊大陸に着陸して、改めて決着をつけるという流れになった。
「こういう時には、確かに攻撃できる船の方がいいよな~オレもガンガン蟲を撃ち落としてぇし」
翔が、まるで銃を持っていて狙いを定めるかのような仕草をしながら、窓の外の害蟲の姿を追っていた。
敵は手負いだ。ゆえに、先ほどの傷の影響もあるのか、飛行速度もさほど早いわけではない。だが、手負いの獣程厄介な相手はいない。油断せず、次こそは確実に仕留めなければならないー。
「また、私が害蟲をおびき出します」
黒羽が周囲に黒い羽根を浮かせた。複数の黒い羽根が、黒羽からの魔力の影響を受けて黒く輝き始める。
「あの害蟲が向かう場所をこちらで決めます。うまく誘導することに成功したら、私が場所を教えますので、そちらまでお願いします」
黒羽が、操舵輪を握る武人に頼む。
「任せな、黒羽の嬢ちゃん」
黒羽の周囲を舞っていた黒い羽根が、突如消える。
「あら、羽根が消えちゃったわ」
突然目の前で羽根が消えたので、カルミナが少し驚いて周囲を見回した。
やはり、さっきまで浮かんでいた黒い羽根は、船内には見当たらなかった。
「ご心配なく、カルミナ」
黒羽が多少表情を柔らかくしながら、カルミナに説明する。
「私の羽根たちは、もうすでに害蟲の背中に突き刺さっていますよ」
「え、羽根だけ瞬間移動させたの?」
目を丸くするカルミナ。
「しかも、背中に突き刺さってるって・・・」
「相手の行動を制限する魔素を含んだ羽根です。と言っても、完全に制御できるわけではありませんが、足止めや少しの間の能力封じくらいなら可能なものです」
そして、右手の人差し指をピンと上に立てて、
「さっきみたいな不意打ちがないよう、可能な限り相手の動きを封じられるようにしておきました。しかも、害蟲自身はそのことには気が付いていません・・・今度こそ、確実に仕留めましょう」
ウィンクのつもりなのか、左目を軽く閉じる黒羽ー例の如く、翔と卓がその可愛さに間抜け面になる。
「へえ、黒羽の嬢ちゃん、アンタ、そんな表情もできるんだな・・・」
操舵輪を動かしていた武人だったが、黒羽の意外な一面を見て相好を崩す。
「はい、私も一応女の子ですので」
黒羽も、武人につられて笑みを見せた。
ーー
「なあ、卓」
そんな中、翔と卓が女子に聞こえないようにひそひそ話を始めた。
「・・・なんだ、翔?」
「黒羽って、マジで可愛いよな」
「・・・だな」
「これで、普段もうちょっと愛想よくしてくれりゃあいいのに」
「同感だ・・・」
はあ、とため息をつく二人。黒羽の意外な一面にだらしなくもメロメロ状態の二人であったー。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
【短編】婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ふふん♪ これでやっとイチゴのタルトと、新作の二種類の葡萄のトライフル、濃厚プリンが食べられるわ♪)
「もうお前の顔を見るのもウンザリだ、今日限りで貴様とは婚約破棄する!」
(え?)
とあるパーティー会場での起こった婚約破棄。政略結婚だったのでアニータはサクッと婚約破棄を受け入れようとするが──。
「不吉な黒い髪に、眼鏡と田舎くさい貴様は、視界に入るだけで不快だったのだ。貴様が『王国に繁栄を齎すから』と父上からの命令がなければ、婚約者になどするものか。俺は学院でサンドラ・ロヴェット嬢と出会って本物の恋が何か知った! 」
(この艶やかかつサラサラな黒髪、そしてこの眼鏡のフレームや形、軽さなど改良に改良を重ねた私の大事な眼鏡になんて不遜な態度! 私自身はどこにでもいるような平凡な顔だけれど、この髪と眼鏡を馬鹿にする奴は許さん!)
婚約破棄後に爆弾投下。
「我が辺境伯──いえトリス商会から提供しているのは、ランドルフ様の大好物である、卵かけご飯の材料となっているコカトリスの鶏生卵と米、醤油ですわ」
「は?」
これは鶏のいない異世界転生した少女が、あの手この手を使って再現した「卵かけご飯」のお話?
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる