テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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カルミナとブラーナ(第27話)

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 敵の毒素もほぼ無害化し、狙うはあと、左腕3本のみとなったー。

「毒さえ来なければ、あとは楽勝だな」

 勢いづいた翔が、ツメを構えながら害蟲を見据える。

「ですが、敵の膂力は侮れません・・・腕の攻撃をまともに食らわないように十分注意しながら戦いましょう」

 黒羽の言う通り、例えこちらが追いつめているのだとしても、敵の膂力そのものがなくなったわけではない。あの地面に叩きつけた時の一撃を見るに、まともに食らえば一発でお陀仏ということには変わりない。

「いよいよ大詰めね!みんな、相手の腕に気を付けて、一気に畳みかけるわよ!!」

 カルミナが、自身のチャクラムに魔力を「付与エンチャント」させた。ブラーナもそれに続いて自身の太刀に魔力を集中させ始める。

「5対1・・・多勢に無勢というのはいささか気がひけるが・・・害蟲相手に「正々堂々」やる必要もないだろう」

 卓が棍を害蟲に向ける。これが人間相手のバトルなら、確かに「多勢に無勢」というのはためらわれる。だが、相手は知性も理性もないただの害蟲だ。もはや、遠慮する必要もないだろう。

「では、行きましょう、皆さん!」

 黒羽の周囲に、さらに多くの黒い羽根が舞い散る。それが彼女と仲間たちの姿を覆い隠さんばかりに舞い始めると、それはやがて他の4人に黒い光となってまとわりついた。

「・・・っ!黒羽、これは・・・」

 普段感じたことのない、独特な魔力の波動に、少なからず戸惑いを見せるカルミナ達。

「心配しないでください、万が一のことも考えて、皆さんの防衛力を可能な限り高めるための魔法です。尤も、一時的なものですので、あまり効果は持続しませんが・・・」

 そこで、一旦言葉を区切り、黒羽は害蟲を見据えた。その顔には笑みが浮かんでいる。だが、その笑みは、年頃の少女が浮かべるようなものというよりも、もっと酷薄さを含んだものだった。

 ー例えるなら、手負いの者をいたぶるような、残酷さを含んだようなー。

「これで終わらせましょう、皆さん」

 ブラーナは、一瞬眉を顰める。

「やったるぜ!」

「おお!」

「一気に叩くわよ!!」

 ブラーナを除く3人が、害蟲へと駆け出していく。

「ねえ」

 ブラーナの表情が険しくなる。対して、黒羽の表情は、いつもの通りのポーカーフェイスだ。

「あなた、この魔法、少なくとも「正規」の手段で習得したものではないのでしょう?」

 黒羽の表情は変わらない・・・が、ブラーナにとっては、逆にそれが恐ろしくも感じられた。

「・・・確かに、ある種の「チート」をして習得したものですが・・・」

 か細い声で、黒羽が応える。

「・・・まあ、今は目の前の敵に集中すべきか・・・でも」

 ブラーナは、押し黙っている鋭い視線を向けた。

「カルミナに何かあったら、ただじゃおかないわよ」

 それだけを告げて、ブラーナも害蟲へと突撃したー。


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