テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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カルミナとブラーナ(第2話)

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 元は空賊だった頃にデザインされたというエアジャケットに着替え、カルミナとブラーナは飛空船「白波号」の操舵室へと向かった。

 途中、操舵室への通路の窓から見える光景を見て、

「うーん、朝だなぁ」

と、ブラーナが背伸びしながら独り言ちた。

「そうだね、朝だね」

 そんな彼女に適当に相槌を打つカルミナ。欠伸交じりの顔を、相方に見られまいと背けつつ、窓の外に目をやる。

 陽の光を浴び、美しく輝く雲海がどこまでも続いている。その真ん中に、雲海を突き破った形の大樹の上部が確認できた。そして、その大樹の周りを、これまたいくつもの浮遊島と、惑星が周回している。

 惑星というのは、浮遊島を取り囲む球状の巨大飛行体だ。つまり、球状の大地の中に、浮遊島が内包されているのだ。球状の大地といっても、内部は空洞なのである。その空洞の中に島が存在しているーといった形だ。

 そして、この球場の大地だが、ところどころ内部に侵入できる箇所が存在する。その出入り口の形状は、各惑星で異なる場合が多いが、今「白波号」から確認できる惑星は、どうやら何か所か縦長に穴が開いており、そこから内部の島に入ることができるようになっているようだ。その縦長の長大な開口部の隙間から、内部の島の様子を見て取れる。

 このほかにも、様々な惑星が存在するが、それらについては後々説明することになるだろう。

「まあ、今日も配達業務で終わりそうだけどね・・・」

「それでも仕事は仕事よ、ブラーナ。きちんとやらないと」

 カルミナは、隣で愚痴をこぼす相棒を窘め、操舵室の扉を開ける。そして、中にいた他の乗組員に軽く挨拶をする。

「おはよ~黒羽くろばね

「・・・おはようございます・・・」

 およそ・・・蚊の鳴くような小さな声で、挨拶が返ってきた。

 カルミナが今挨拶した相手は、黒羽という名の小柄で陰気な少女だ。年齢的にはカルミナより少し下くらい・・・いつも黒ずくめの外套姿で、髪はウェーブのきつい長い黒髪、目には常に眠そうな雰囲気が漂っている。さすがに、室内ではフードは被っていないが、外に出る時にはこれでもかというくらいに深くフードを被り、他人から顔を見られることはほとんどない。

 ・・・が、カルミナだけでなくブラーナも同じ意見なのだが、黒羽は可愛らしい顔立ちをしている。なので、年相応の恰好をさせれば、かなり「イケてる」はずなのだが、なぜかこの少女はどこから見ても黒ずくめの恰好をやめようとしない。

 実にもったいないと思うのは、カルミナとブラーナばかりではないだろう。

 ちなみに、黒羽という名前も、おそらくは本名ではない。おそらく・・・ということからもわかるように、カルミナ達も、実はこの黒羽という少女に関しては詳しいことは知らないのだ。ただ、《ラピュタ》のマスターから紹介され(半ば押しつけられ)、こうして「白波号」の一員として迎えたにすぎない。

 怪しいと言えば怪しいが、何せマスターのお勧めの子だ。無碍にもできないだろう。

「武人さんもおはよう」

 操舵輪を操る男性にも挨拶をする。年のころは大体20代半ば・・・少なくとも、カルミナ達より10近くは離れているだろうか。元はチンピラで、特に数年前は結構荒れていたらしく、細身の外見ながら腕っぷしならおそらく《ラピュタ》でも指折りだろう。

「おう、お嬢らか」

 お嬢と呼ばれて、カルミナはいささかむっとする。その呼び方は遠慮しますと何度も言っているのだが、修正してもらえる気配がないので、半ば諦めている。

「そう言えば、他の2人は?」

 ブラーナが、まだいるはずの乗組員について尋ねた。

「ああ、あいつらなら・・・」

 武人と呼ばれた男性が、顎に手を当てながら、

「・・・まだ寝てんじゃね?」

と、事もなげに答えたー。
 
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