上 下
149 / 464

チーム《ユグドラシル》と教会騎士たち(第13話)

しおりを挟む
 チーム《ユグドラシル》の面々が蟲憑きと対峙していた頃ー。

 ゼクスとイリアは、魔物相手に防戦一方の戦いを強いられていた。

「くそ、迂闊に攻撃できねえから、やりづれえこと事の上ねえな!」

 魔物の爪を寸前でよけながら、イリアが苛立ちも隠さず喚き散らす。

「イリア、こういう時こそ冷静になるべきだ。情に流されてはいけないよ」

 そんなイリアを、ゼクスが窘める。直情型のイリアを収めるのは、いつも彼の役目だった。この二人、なんだかんだ言っても、相性は抜群のコンビなのである。

「わーってるよ。ったく」

 イリアが毒づくが、確かにゼクスのいう通り、今はこらえる時だ。少なくとも、《ユグドラシル》の面々が蟲憑きの力を封じるまでは・・・。

「こっちから攻撃すれば数も増えるしな・・・しかも相手にはダメージもない・・・か」

 相手の攻撃そのものは大したことはなかった。元々弱い魔物だ。おそらく、蟲憑き自身もこいつ単体にはさほど期待していないだろう。

 ただし、それはあくまでも単体ルビには、ということだが。

「まあ、数が増えて兵隊になられても困るしね・・・いくら弱くても、数で来られたらこっちが不利になるし、街にも被害が出るだろう」

 支配下に置いた魔物の数を増やし、そのまま街を攻撃させる・・・多分、魔物の数が増える条件は「こちらから攻撃すること」だ。実際、攻撃するとそれを受けた生物が分裂するといったタイプの魔法というものが存在する。そういった魔法を施されている可能性があるため、こちらから攻撃するのは結局は利敵行為となってしまう・・・。

「晶たちは何やってんだよ!早く始末しろよ、蟲憑きの野郎を」

 2匹の魔物の攻撃を軽々と避けつつ、しかし苛立ちは相変わらず隠せないまま、イリアはその時を待った。

「これは・・・推測だけど、これだけ高度な魔法を操っている蟲憑きなら、もしかしたら知性があるやつなのかもしれない・・・だから、苦戦している可能性もあるな、晶たち」

「・・・って、それじゃああいつらが万が一にでも負けでもしたら、こっちは手出しできねえじゃねえか」

 かといって、この場を離れて晶たちに加勢しても、多分自分が操る「聖十字魔法」では蟲憑きには対抗できないだろう。なぜなら、魔物と蟲憑きでは、その起源が異なるからだ。

「結局、彼らに任せるしかないね・・・せめて、こいつらがこの林から出ないように、結界の中に閉じ込めておければいいんだけど」

 ゼクスは、いざとなったら、この魔物の動きを封じるため、結界を張る準備もしていた。ただ、こちら側もその中からは出られないので・・・、

「・・・我慢比べだな、こりゃ」

 イリアが頭を掻きながらぼやく。

「とにかく、もう少し粘るよ、イリア」

「わかったよ」

 こうして、二人と魔物たちの「我慢比べ」は、しばらく続くことになったー。
しおりを挟む

処理中です...