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土竜の街は・・・?(第7話)

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 夕暮れの公園も散策し終わり、今日はもう遅いということで、ベンジャミンの家に泊めてもらうことになった。

「いいのか、ベンジャミン。押しかけてしまったようで悪いし」

「いや、いいよ、うちは賑やかなのが好きだしな」

 聞くところによると、ベンジャミンはすでに所帯を持っており、生まれたばかりの元気なお子さんと、あとは奥さんとで仲良く暮らしているらしい。

「うちの子は五つ子だからな・・・やんちゃなのが5人もいると大変だよ」

 そういいつつも、ベンジャミン自身は子供たちのことが可愛くて仕方がないようで、話している時には頬が緩んでいる・・・ように見えた。

「五つ子さんかぁ~、確かに賑やかで、楽しそうだねぇ~」

「お嬢さんも仲良くしてやってくれ。うちの子供たちなら、すぐに馴染むと思うよ」

「うん!」

 いつも以上にハイテンションな早苗である。早苗なら誰とでも仲良くなれるという特技?があるので、実際のところ、土竜の家族と打ち解けるのは早いだろう。

「我輩もニャかよくやりますニャー」

「・・・お前さんは土竜たちに遊ばれそうだけどな」

 まあ、ミケさんなら、初めてモリガンと出会った時と似たような結果になりそうな気がする・・・。

「あっはっはー!最初わしと出会った時、ミケさんを思い切り追い掛け回してやったのう」

「・・・もう勘弁ニャ・・・」

 あの時は、さんざんモリガンに引っ張りまわされたものである。もっとも、その翌朝にはすでにミケさんとモリガンは打ち解けていたようだが・・・。

 ベンジャミンの家は、旧市街地と呼ばれる区画にあった。旧というだけあって、確かに古めかしい建物が目立つようだが、決して老朽化しているというわけではない。あくまでも、風情があるといった感じだ。

「おや、ベンジャミン。今日はお連れさんがいるのかい?」

 ベンジャミンの顔見知りなのか、途中耳の長い金髪の女性が声をかけてきた。西洋風の端正な顔立ちと、尖った耳の作りが特徴的で、これはまさしく・・・、

「エルフじゃな。まさか、地下世界でお目にかかれるとは思わなんだ」

 モリガンが小声で晶に告げる。エルフは、ファンタジーや神話でよく語られる種族だ。もちろん、現在の社会においては、その出自は崩壊を逃れた前文明人の末裔なのだが、住んでいる地域の魔力の影響を受けて、人間から別な種族へと変化していったと考えられている。

 主に、森林などで暮らす種族で、滅多に地下世界を訪れたりはしないはずだが、変わり者というのは、どの種族にも少なからず存在するようだ。

「ああ、地上で出会った人間たちだよ。これからおいらの家にご案内するんだ」

「初めまして、地上から来ました。オレは吾妻晶と言います」

「私は清野早苗です」

「秋の領域最大の魔女であるモリガンじゃ」

「ミケさんですニャー」

 みんな揃ってエルフの女性に挨拶を行ったー。
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