115 / 464
その頃の江紀
しおりを挟む
薬師寺とはいったん分かれ、別行動となったー。
チームの他のみんなは休息やらモリガンのアトリエでの作業の手伝いやらで、奏多たち以外はみんな出かけてしまったので、オレも日向荘から離れ、近くの山で少し鍛錬を行うことにした。
鍛錬といっても、そんなに本格的なものではない。ただ、いつ何が起きてもいいように、感覚を維持するためにやる程度のものだ。確かに、体を休められる時には休んだ方がいいので、あまり無理のかかるような鍛錬は行わないことにする。
薬師寺は、短期間の一人旅らしい。特に行く当てもなく、気に入った場所で宿泊するつもりのようだ。あいつらしいといえばそうかもしれない。
あいつはもともと、根なし草のようなやつだった。天元一刀流の道場を破門され、行く当てもないところをかつて別チームに用心棒として拾われた。だが、そこも事情により半年くらいで離れて、鏡香さんの勧めもあってうちのチームに入ったようだ。
前の古巣のことに関しては、薬師寺は詳しいことは話したがらない。もっとも、それは古巣のことばかりではなく、なぜ天元一刀流のこともあまり触れたがらない。どちらも、本人にとっては触れてほしくないことらしいので、敢えてそれ以上訊くつもりもなかった。
薬師寺は、以前に天元一刀流の道場のことを軽く話していたことはある。彼女曰く
「師匠とケンカして破門された」
だそうだ。
・・・まあ、言葉通りに受け取るわけではないが、どうやら師弟関係に問題があったということだけは確かだろう。本当は、もっと奥深い意味があるのかもしれないが。
薬師寺は、剣を扱うオレ自身の目から見ても、達人クラスだ。オレは直接天元一刀流を学んだわけではないが、あの腕前なら間違いなく、免許皆伝クラスだろう。少なくとも、実際に免許皆伝である彼女の姉弟子に同程度の実力者なのは違いない。
彼女の姉弟子の名は一条紗耶香。オレも面識がある。この大樹ユグドラシルの治安維持を任されたチーム《ゼクスティン》の副長を務める実力者だ。
薬師寺曰く、自分はまだ姉弟子から1本も取ったことがない、それが破門と免許皆伝の違いだーと。
しかし、今やり合えば、おそらくほぼ拮抗するのではないか。もちろん、彼女の相棒として、多少贔屓目に見ているところがあるにせよ、少なくとも俺の目には、今の彼女が紗耶香さんに後れを取るとはとても思えない。
まあ、この先、実際に彼女たちが刃を交える機会などないとは思うが、もし万が一、その機会が訪れた時には、ぜひとも勝負の行方を見守りたいとは思っている。
・・・普段一緒に行動する相棒がいないと、何か落ち着かないところがあるのだろう。つい鍛錬よりも薬師寺のことを考えてしまうが、オレもまだまだ未熟だということかー。
修行に集中するかーオレは双剣を構えた。
チームの他のみんなは休息やらモリガンのアトリエでの作業の手伝いやらで、奏多たち以外はみんな出かけてしまったので、オレも日向荘から離れ、近くの山で少し鍛錬を行うことにした。
鍛錬といっても、そんなに本格的なものではない。ただ、いつ何が起きてもいいように、感覚を維持するためにやる程度のものだ。確かに、体を休められる時には休んだ方がいいので、あまり無理のかかるような鍛錬は行わないことにする。
薬師寺は、短期間の一人旅らしい。特に行く当てもなく、気に入った場所で宿泊するつもりのようだ。あいつらしいといえばそうかもしれない。
あいつはもともと、根なし草のようなやつだった。天元一刀流の道場を破門され、行く当てもないところをかつて別チームに用心棒として拾われた。だが、そこも事情により半年くらいで離れて、鏡香さんの勧めもあってうちのチームに入ったようだ。
前の古巣のことに関しては、薬師寺は詳しいことは話したがらない。もっとも、それは古巣のことばかりではなく、なぜ天元一刀流のこともあまり触れたがらない。どちらも、本人にとっては触れてほしくないことらしいので、敢えてそれ以上訊くつもりもなかった。
薬師寺は、以前に天元一刀流の道場のことを軽く話していたことはある。彼女曰く
「師匠とケンカして破門された」
だそうだ。
・・・まあ、言葉通りに受け取るわけではないが、どうやら師弟関係に問題があったということだけは確かだろう。本当は、もっと奥深い意味があるのかもしれないが。
薬師寺は、剣を扱うオレ自身の目から見ても、達人クラスだ。オレは直接天元一刀流を学んだわけではないが、あの腕前なら間違いなく、免許皆伝クラスだろう。少なくとも、実際に免許皆伝である彼女の姉弟子に同程度の実力者なのは違いない。
彼女の姉弟子の名は一条紗耶香。オレも面識がある。この大樹ユグドラシルの治安維持を任されたチーム《ゼクスティン》の副長を務める実力者だ。
薬師寺曰く、自分はまだ姉弟子から1本も取ったことがない、それが破門と免許皆伝の違いだーと。
しかし、今やり合えば、おそらくほぼ拮抗するのではないか。もちろん、彼女の相棒として、多少贔屓目に見ているところがあるにせよ、少なくとも俺の目には、今の彼女が紗耶香さんに後れを取るとはとても思えない。
まあ、この先、実際に彼女たちが刃を交える機会などないとは思うが、もし万が一、その機会が訪れた時には、ぜひとも勝負の行方を見守りたいとは思っている。
・・・普段一緒に行動する相棒がいないと、何か落ち着かないところがあるのだろう。つい鍛錬よりも薬師寺のことを考えてしまうが、オレもまだまだ未熟だということかー。
修行に集中するかーオレは双剣を構えた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スーパー忍者・タカシの大冒険
Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる