テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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その頃の江紀

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 薬師寺とはいったん分かれ、別行動となったー。

 チームの他のみんなは休息やらモリガンのアトリエでの作業の手伝いやらで、奏多たち以外はみんな出かけてしまったので、オレも日向荘から離れ、近くの山で少し鍛錬を行うことにした。

 鍛錬といっても、そんなに本格的なものではない。ただ、いつ何が起きてもいいように、感覚を維持するためにやる程度のものだ。確かに、体を休められる時には休んだ方がいいので、あまり無理のかかるような鍛錬は行わないことにする。

 薬師寺は、短期間の一人旅らしい。特に行く当てもなく、気に入った場所で宿泊するつもりのようだ。あいつらしいといえばそうかもしれない。

 あいつはもともと、根なし草のようなやつだった。天元一刀流の道場を破門され、行く当てもないところをかつて別チームに用心棒として拾われた。だが、そこも事情により半年くらいで離れて、鏡香さんの勧めもあってうちのチームに入ったようだ。

 前の古巣のことに関しては、薬師寺は詳しいことは話したがらない。もっとも、それは古巣のことばかりではなく、なぜ天元一刀流のこともあまり触れたがらない。どちらも、本人にとっては触れてほしくないことらしいので、敢えてそれ以上訊くつもりもなかった。

 薬師寺は、以前に天元一刀流の道場のことを軽く話していたことはある。彼女曰く

師匠ジジィとケンカして破門された」

 だそうだ。

 ・・・まあ、言葉通りに受け取るわけではないが、どうやら師弟関係に問題があったということだけは確かだろう。本当は、もっと奥深い意味があるのかもしれないが。

 薬師寺は、剣を扱うオレ自身の目から見ても、達人クラスだ。オレは直接天元一刀流を学んだわけではないが、あの腕前なら間違いなく、免許皆伝クラスだろう。少なくとも、実際に免許皆伝である彼女の姉弟子に同程度の実力者なのは違いない。

 彼女の姉弟子の名は一条紗耶香。オレも面識がある。この大樹ユグドラシルの治安維持を任されたチーム《ゼクスティン》の副長を務める実力者だ。

 薬師寺曰く、自分はまだ姉弟子から1本も取ったことがない、それが破門と免許皆伝の違いだーと。

 しかし、今やり合えば、おそらくほぼ拮抗するのではないか。もちろん、彼女の相棒として、多少贔屓目に見ているところがあるにせよ、少なくとも俺の目には、今の彼女が紗耶香さんに後れを取るとはとても思えない。

 まあ、この先、実際に彼女たちが刃を交える機会などないとは思うが、もし万が一、その機会が訪れた時には、ぜひとも勝負の行方を見守りたいとは思っている。

 ・・・普段一緒に行動する相棒がいないと、何か落ち着かないところがあるのだろう。つい鍛錬よりも薬師寺のことを考えてしまうが、オレもまだまだ未熟だということかー。

 修行に集中するかーオレは双剣を構えた。
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