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その頃の咲那
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さて、久しぶりの休暇だー。
とりあえず、最近まで出現していた大型の蟲どもはほとんど片付けて、あとはしばしの休息期間といった感じだ。
この間、晶たちはこぞってモリガンのアトリエへと繰り出し、何やら彼女の調合のお手伝いをするのだとかいう。あのお騒がせ魔女のことである。どうせあいつらは、今頃馬鹿騒ぎの真っ最中だろう。ただでさえ賑やかな連中が、今頃どんだけ騒いでいるのか、考えるだけで笑えてくる。
あたしと江紀は、それぞれ別行動だ。あたしは、日向荘を離れて簡単な一人旅といった感じである。泊まる場所は行く先で適当な宿でも見つけてーといったところで、全く計画性はない。まあ、たまには行き当たりばったりの旅というのも悪くはないだろう。
一応、宿泊するために必要なポイント(前文明時代においてはお金)は十分にあるので、当面の間、困ることもない。あとは、気ままに一人旅を楽しむだけだ。
とはいえ、いつも隣にいるはずの相棒ー江紀がいないというのは、確かに物足りない気もするが、あいつはあいつでやることがあるらしい。生真面目な奴なので、せっかくの休暇もそれに費やしてしまうのだろう。まったくもって不器用な奴である。
急に話が変わるが、あたしは、前に江紀と飲み比べしたことがある。結果は、言うまでもなくあたしの圧勝だが、そもそも勝負にもならなかった。
あいつといい、奏多と言い、うちのチームの男どもは酒が弱い。特に、謎なのが奏多で、双子の姉の鏡香があたし以上の酒豪なのに、弟の方はからっきしダメなのだ。双子といっても、色々と違いはあるのだな・・・と思い知らされた感じがした。
晶はまだ酒の飲めるような年齢ではないし、少なくとも、うちの男ども相手に飲み友達になれというのは無理がありそうだ。
この分だと、古巣の連中の方が、まだしも酒付き合いがよさそうである。
あたしは、この《ユグドラシル》に来る前に、別のチームにいた。といっても、在籍していたのは高々半年くらいだし、正式メンバーというよりも、用心棒といった感じだった。
天元一刀流の道場を破門され、その後行く当てもなくたどり着いた場所がそこだった。まあ、チンピラみたいな連中のたまり場であったが、みんな気のいいやつらだった。
ただ、そこもある事情により離れることになる。道場破門と言い、どうもあたしは一か所に長く留まれない性質みたいだった。
この《ユグドラシル》も、いずれ離れる日が来るのだろうかーあたし個人としては、そのつもりは全くないが、しかし今までのパターンから見ると、やがてその時が来るのではないかーそんな予感がする。
せめてその予感が杞憂に終わってくれることを祈るばかりだ。あたしは、せっかく手に入れた仲間たちを失いたくはない。古巣で、あいつを守ることもできずに死なせてしまったから。同じ間違いは犯したくはなかった。
そして、あたしはそこを逃げ出した。今でもあいつらは、あたしのことを恨んでいるに違いないだろう。力を持ちながら、彼をみすみす死なせてしまったあたしを。
何より、自分が許せないー自分の未熟さを。そして、そこから目を背けるために、あたしは、結局逃げたんだ。
そんな、行き場のないあたしを受け入れてくれたのが、鏡香だった。だから、あたしは彼女の懐刀として、今度は彼女を、そして《ユグドラシル》の他のメンバー達を守る太刀となるのだ。
今度こそ、守るーあたしの周りの者達をーそれが、あたしなりのけじめであり、誓いでもあったー。
とりあえず、最近まで出現していた大型の蟲どもはほとんど片付けて、あとはしばしの休息期間といった感じだ。
この間、晶たちはこぞってモリガンのアトリエへと繰り出し、何やら彼女の調合のお手伝いをするのだとかいう。あのお騒がせ魔女のことである。どうせあいつらは、今頃馬鹿騒ぎの真っ最中だろう。ただでさえ賑やかな連中が、今頃どんだけ騒いでいるのか、考えるだけで笑えてくる。
あたしと江紀は、それぞれ別行動だ。あたしは、日向荘を離れて簡単な一人旅といった感じである。泊まる場所は行く先で適当な宿でも見つけてーといったところで、全く計画性はない。まあ、たまには行き当たりばったりの旅というのも悪くはないだろう。
一応、宿泊するために必要なポイント(前文明時代においてはお金)は十分にあるので、当面の間、困ることもない。あとは、気ままに一人旅を楽しむだけだ。
とはいえ、いつも隣にいるはずの相棒ー江紀がいないというのは、確かに物足りない気もするが、あいつはあいつでやることがあるらしい。生真面目な奴なので、せっかくの休暇もそれに費やしてしまうのだろう。まったくもって不器用な奴である。
急に話が変わるが、あたしは、前に江紀と飲み比べしたことがある。結果は、言うまでもなくあたしの圧勝だが、そもそも勝負にもならなかった。
あいつといい、奏多と言い、うちのチームの男どもは酒が弱い。特に、謎なのが奏多で、双子の姉の鏡香があたし以上の酒豪なのに、弟の方はからっきしダメなのだ。双子といっても、色々と違いはあるのだな・・・と思い知らされた感じがした。
晶はまだ酒の飲めるような年齢ではないし、少なくとも、うちの男ども相手に飲み友達になれというのは無理がありそうだ。
この分だと、古巣の連中の方が、まだしも酒付き合いがよさそうである。
あたしは、この《ユグドラシル》に来る前に、別のチームにいた。といっても、在籍していたのは高々半年くらいだし、正式メンバーというよりも、用心棒といった感じだった。
天元一刀流の道場を破門され、その後行く当てもなくたどり着いた場所がそこだった。まあ、チンピラみたいな連中のたまり場であったが、みんな気のいいやつらだった。
ただ、そこもある事情により離れることになる。道場破門と言い、どうもあたしは一か所に長く留まれない性質みたいだった。
この《ユグドラシル》も、いずれ離れる日が来るのだろうかーあたし個人としては、そのつもりは全くないが、しかし今までのパターンから見ると、やがてその時が来るのではないかーそんな予感がする。
せめてその予感が杞憂に終わってくれることを祈るばかりだ。あたしは、せっかく手に入れた仲間たちを失いたくはない。古巣で、あいつを守ることもできずに死なせてしまったから。同じ間違いは犯したくはなかった。
そして、あたしはそこを逃げ出した。今でもあいつらは、あたしのことを恨んでいるに違いないだろう。力を持ちながら、彼をみすみす死なせてしまったあたしを。
何より、自分が許せないー自分の未熟さを。そして、そこから目を背けるために、あたしは、結局逃げたんだ。
そんな、行き場のないあたしを受け入れてくれたのが、鏡香だった。だから、あたしは彼女の懐刀として、今度は彼女を、そして《ユグドラシル》の他のメンバー達を守る太刀となるのだ。
今度こそ、守るーあたしの周りの者達をーそれが、あたしなりのけじめであり、誓いでもあったー。
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