テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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土竜の街を目指せ(第1話)

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 リリィが魔女組合の事務所へと帰還した後、晶たちはさっそくベンジャミンの住んでいる集落へと向かうことにした。

「ここからはそんなに離れていないらしいが、それでも結構歩くんだろ?」

 今は昼過ぎだ。そんなに離れていないとは言っても、やはりそこそこの距離はあるだろう。一応、移動時間に気を配る必要はありそうだ。

「大体おいらの足で歩いて3時間くらいかな」

「3時間も歩くんか、きついのう」

 さっそく泣き言を言いだすモリガンである。もっとも、魔女である彼女にとって、歩きよりも魔法による飛行で移動する方がはるかに楽であり、速いので、普段はそのようにして日向荘とアトリエを行き来しているということもあり、歩くというのはあまり好きではないらしい。

 飛行に要する魔力も消耗するはずだが、「秋の領域最大の魔女」を自称するだけあって、その魔力は膨大である。それならば、確かに歩きよりも魔法の方が楽なはずである。

「・・・しかも、考えてみれば土竜たちの街は地下にあるはずじゃから、結局のところ、目的の場所までベンジャミンが掘った穴の通路を歩くわけじゃろ?何の代わり映えもしない通路をただひたすら歩くのかのう」

 言われてみれば、確かにそうだ。これが山中のハイキングとかなら、景色を楽しみながら目的地を目指すということもできるだろうが、今回は、ベンジャミンの掘った穴の中をただひたすら歩くということになる。しかも3時間もだ。

 これでは、モリガンでなくても確かにきついかもしれない・・・。

「そうはいっても、モリガン。せっかくベンジャミンが案内してくれるのだから、文句ばかり言ってたら悪いだろ」

 晶がモリガンをたしなめる。せっかくベンジャミンが自分たちの集落に案内してくれるというのだ。そこはわきまえるべきだろう。

「むう・・・」

 まだ不満がありそうなモリガンであったが、結局は引き下がったようだ。

「そういえば、ベンジャミンが掘った穴の中に蟲がいたよな・・・あいつ、もともとこの辺に埋まっていたやつなんだろうか」

「あのいがぐりみたいなやつだろ?」

 自分が掘った先に栗によく似たでかい蟲がいたので、ベンジャミンもかなり驚いたらしい。それで、さらに逃げ回る形で穴を掘りまくっていたわけだ。

「あれは驚いたな~。見つけた時に、びっくりしちゃってそのまま急いで逃げて来たんだ」

 ・・・このベンジャミン、図体に似合わずいいやつなのだが、一方でかなりの臆病者でもあるらしい。

「まあ、あいつに関してはオレたちが退治したから、もう心配は要らないよ。ただ、あんなのが他にもこの辺りに埋まっているとしたら、さすがに厄介だな・・・」

「土竜さん達の集落の近くにもいるかもしれないしねぇ。そうなったら、私たちの出番だよ、晶君」

「そうだな、それがオレたちの仕事だしな」

 早苗の言う通り、土竜たちの集落の付近にあの蟲と似たようなやつがいるかもしれない。そこのところは十分に用心しておいた方がよさそうだ。

 いざとなったら、戦いの準備もしておかなければ。

「では、そろそろ向かうか、おいらたちの街へ」

 全員、ベンジャミンの後に続き、彼の掘った穴へと入っていくことにしたー。

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