上 下
105 / 464

モリガンの適正(第6話)

しおりを挟む
 ミケさんの方が落ち着いたところで(まあ、落ち着いたという表現が正しいのかどうかは定かではないが)、モリガンとリリィがアトリエから出てきた。どうやら、本日の調合レッスンが一段落ついたようだ。

「モリガンちゃんは、素質は十分あるんですから、あとは慎重さと正確ささえ身につければ、立派な魔女さんになれますよ」

「うむむ、どうもわしの苦手としているものが要求されておるようじゃのう。わしとしては、どうしても派手にやりたいところなのじゃが・・・」

 リリィの見立ては、晶のものとほぼ変わらないようだ。要するに、細かな作業を行う際に必要な繊細さや慎重さといったものがこいつには欠けている。だが、まだまだ成長途中のモリガンであれば、これから先訓練次第でいくらでも身に着けられるはずだ。

 そしてそれは、おのずと蟲とのバトルにも応用されていくことになるだろう。

「リリィさん、組合の仕事もお忙しいでしょうが、モリガンのこと時々見てやってはもらえませんか。何分、魔女のことはオレたちでは教えられないことも多いので」

 改めて、リリィにモリガンのことをお願いする。

「ええ、喜んで。私も、モリガンちゃんのことは普段から気にかけておりますので」

 さすがに組合員だけあって、モリガンのことは何かと気にかけてくれているようだ。これなら安心だろう。

「・・・ところで、晶よ。ミケさんはなぜうなだれておるんじゃ?」

 まるで漫画のようにわかりやすく落ち込んでいるミケさんの姿を見て、モリガンが尋ねてくる。

「ああ、ミケさんがベンジャミンとの勝負にことごとく負けているんでな・・・もう少し人生真面目に生きろと促しただけだよ」

「・・・?」

 事情がよくわからないモリガンが怪訝そうな表情を浮かべる。

「ところで、晶君。土竜さん達の街の話、私行ってみたいなあ~」

 そこへ早苗が横から話に割り込んできた。

 そういえば、ベンジャミンの暮らしている集落の話もしていたのだった。ミケさんに気を取られて、すっかり忘れていた。

「そういや、ベンジャミンの集落の話もしていたな。この領域に、ベンジャミンの仲間が暮らしている街があるらしいから、一度そこへ行ってみようかって、流れになったんだ」

「ベンジャミンの街じゃと?土竜だから、当然ながら地下の世界か?」

「そう。どうやら、この近くの地下にその街があるらしいぜ」

「だから、おいらがそこまで案内しようって話になったんだ」

 今度はベンジャミンも話に加わってきた。

「なるほどのう。わしも、おぬしらの街とやらに興味が出て来たわ」

 もともと、好奇心旺盛な魔女殿のことだ。多分そう答えるだろうとは予想していた。

「晶よ、ここ数日は余裕があるし、さっそくその土竜たちの集落に行ってみようかの」

「もちろん、そのつもりだよ」

「リリィはどうするのじゃ?」

 リリィは、少し考えてから、

「私は、組合のお仕事もあるので、残念ですが、今回は遠慮しておきますね」

「そうか・・・それは仕方がないのう。では、わしらだけで行くとするか」

「すいません、リリィさん。お忙しいのに」

「いえいえ、いいんですよ。モリガンちゃんと一緒に楽しんできてくださいね」

 こうして、リリィは魔女組合の事務所に帰ることになったー。

しおりを挟む

処理中です...