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毒舌ニャンドラゴラをなんとかしろ(第3話)

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 毒舌ニャンドラゴラの「処分」が決まったーまあ、実際には早苗による「処刑」といった方が正しいのだろうか・・・。

 アトリエ復旧後、アトリエの中に置いてあった魔法の瓶を使って、毒舌ニャンドラゴラを「厳重に」保管(この作業は、主に早苗が行った)。その後、先ほど発見した穴に入り、かつて、スライ蟲・ボス(仮)がいた場所の地面を、それはそれはとてもとても「深く」堀り(これも早苗が率先して行った)、おそらく誰もが「永久に」発見しえないであろう場所に「確実に」封印したのだ。

 ちなみに、一連の作業の間、早苗は一度も笑顔を絶やしてはいないー。

「あ、あ、晶ぁ~」

 モリガンが、恐怖のあまり今にも失神しそうな表情で、晶に抱き着いていた。カタカタ・・・と震えているのがよくわかる・・・。

 よくモリガンが、和泉鏡香の背後に「般若の面がある」と喋ることがあるが、今、彼女は早苗の背後にいったい何を見ているのだろうか・・・「般若」よりも怖いものなのかもしれない。

「ああ~、大丈夫だモリガン。清野を怒らせない限りにおいては・・・な」

 モリガンの頭をなでなでして落ち着かせる。「秋の領域最大の魔女殿」も、これでは小さな子供と同じであった。

 ちなみに、ミケさんはこれ以上見るまいと、穴の外で待機している・・・。

 その選択は、確かに正しかったのかもしれない。早苗のこの姿は、決して「見てはいけないもの」である・・・。

「ふふふ・・・」

 口元を扇で覆いつつ、早苗がほほ笑んでいる・・・が、何か異様な不気味さが漂い、とにかく今は近寄るどころか、声をかけるのさえためらわれる雰囲気だった。

 ・・・こ、怖い・・・マジで。

 もはやモリガンはダウン寸前だ。このままだと、かなりやばいことになりそうなので、晶は意を決して早苗を制した。

「清野、もういいだろ。この穴は何が出てくるのかわかんないし、長居は無用だ」

「・・・うん、わかった」

 先ほどまでと、全く変わらない笑顔のまま、晶とモリガンに向き直る早苗。

「あれ、モリガンちゃん。どうしたの?それにミケさんは?」

 ・・・モリガンの様子がおかしく、さらにはミケさんがいない原因が、よもや自分にあるとは気が付いてもいないらしい。

 晶は、適当にごまかして、早苗をとにかく外へと連れ出すことにしたー。

ーー

「さあて、一仕事終えたし、みんな頑張ろう!」

「・・・」

 何事もなかったかのように、「いつも」の早苗の姿がそこにはあったー何事もなかったかのように!

 ちなみに、モリガンはすっかり真っ白になってしまっている。よほど怖かったのだろうか・・・。

 ミケさんもガタガタブルブル状態である。普段はあれだけ早苗にくっついているというのに、さすがに今回ばかりは恐怖が先に立っているらしい。

「みんな、元気ないな~」

 早苗がシュンとするが、その原因が自分だという自覚が全くないだけに、はてさてなんといえばいいのやら。

「まあ、色々と疲れたんだろうな、モリガンもミケさんも」

 とりあえず、晶は何とかごまかすことにしたーというか、それくらいしかできることはなかった。

「今は二人とも休ませて、改めて穴の確認をしようか」

「うん、そうだね!」

 ただ一人、元気いっぱいの早苗の声が辺りにこだまする。無自覚というものほど、恐ろしいものはないのかもしれないーある意味「最強の武器」でもある。

 モリガンとミケさんの様子を改めて確認した晶は、こりゃ穴の調査の再開は無理かもしれないな、と頭を抱えるのであったー。

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