テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

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調合開始じゃ!(第1話)

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 何とか、目的の毒キノコを採取し、晶たちはモリガンのアトリエへと向かった。

「あっはっはー!懐かしの我が家じゃのう」

 確かに、日向荘に居候しているモリガンにとって、このアトリエは懐かしの我が家といったところであろう。

「でも、しょっちゅうアトリエには戻ってるんだろ?週末とか」

「それはそうじゃが、やはり自分の住みかが一番落ち着くというじゃろ」

「まあ、それもそうか・・・」

 モリガンは、さっそくアトリエに備えつけてある「魔女の巨釜」に向かった。「魔女の巨釜」の中は、虹色に近い不思議な色彩の液体で満たされていた。

「ここに、先ほどとってきた素材を入れるというわけじゃ。久しぶりの調合じゃし、腕が鳴るのう」

 くふふ・・・と、聞いている側が不安になるような笑い声を出しながら、モリガンが「魔女の巨釜」をかき混ぜ棒でかき回し始める・・・。

「というわけで、晶、さっそく入れてくれ」

「モリガン、ただ入れるだけでいいのか?調合なんだし、入れるタイミングとか分量とかあるだろ」

 当たり前だが、魔女ではない晶にそれらのことがわかるはずもなかった。

「それに関してはこれから説明するぞ・・・まずは」

 晶は、モリガンに言われるままに素材を投入していく。もちろん、触るだけでやばい毒キノコばかりなので、取り扱いにはかなりの注意を要したが・・・。

「晶、一旦かき混ぜるので下がっておれ」

 とりあえず、半分くらい入れたところで、モリガンから制止が入る。モリガンは、何やら楽し気に鼻歌を歌いながら、かき混ぜ棒を勢い良くかき混ぜ始めた。

「お、おい・・・」

 ・・・調合のことがわかるわけではないが、あまりにも乱暴にかき混ぜているように見えたので、晶が慌ててモリガンに声をかける。その隣で、興味深げに巨釜を見つめている早苗の姿があった。

「何じゃ、どうした晶」

「いや、お前いくら何でもかき混ぜ方が雑じゃね?オレは調合のことはよくわからんけど」

「あっはっはー!晶も小心者じゃのう。まあ見ておれ」

 ずいぶん自身がありげな様子でモリガンが応える・・・が、その割には巨釜からかなり黒い煙が上がっているような気がするのだが・・・。

「晶、残りの素材も投入するぞ、協力してくれ」

「本当に大丈夫なんだろうな・・・ったく」

 言われて、仕方がなく残りの素材を投入すると、今度は黒い煙が段々灰色になっていく。やはり。調合のことはわからないが、このままこいつに任せてもいいのだろうか・・・晶に一抹の不安がよぎった。

「大丈夫じゃって!まあ、あとは少しかき混ぜて・・・そしてしばらく寝かせておくだけじゃな」

「まるで漬物とか味噌みたいだな・・・」

「そうだねぇ、おいしいものになるのかな?」

「いやいや、元の素材が毒キノコばかりだから食えねえものしかできんだろ。しかもポーションらしいし」

 少なくとも、これでモリガンに食用ですとか言われても、自分は絶対食う気にはなれない・・・最も、モリガンは「新種のポーション」と言っていたので、まあ食い物ではないのだけは確実だろうが・・・。

「まあ、しばらく寝かせておいている間に、また使い魔でも送ってみるかの」

「さっきの穴か・・・」

 先ほど倒したスライ蟲・ボス(仮)がいた穴だ。分岐した右側の道の中で、何が起きているのか、きちんと確認しておく必要はあるだろう。もし、また何らかの蟲が出てきたら、バトルになるのは避けられまい。

「わしの疲れはもう大丈夫じゃからな。たとえ何が出てこようが何とかなるわい」

「だといいんだがな・・・って、巨釜が震えているぞ、モリガン」

「む?」

 晶が焦りながら、巨釜の方を指し示す。なんだか、巨釜ががたがたと音を立てて震えだし、煙の量自体も増しているように見えるが・・・。

「これ、本当に大丈夫なんだろうな?」

 モリガンは、晶の問いかけに答えず、少しの間巨釜を見つめていたが・・・。

「あ!」

「あ?」

 これはもしや・・・。

 晶の一抹の不安は、どうやら的中したようであったー。
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