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スライ蟲退治(第3話)

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 スライ蟲退治が始まったー。

 わらわらと襲い掛かってくるアメーバ状の蟲ー通称「スライ蟲」を、メンバーたちはいともたやすくなぎ倒していく。

「所詮は雑魚蟲・・・わしらの敵ではないのう」

 モリガンの人差し指から放たれる魔法の光線で、また1匹スライ蟲がかき消された。

 この「スライ蟲」だが、害蟲の中では最弱クラスである。したがって、まだ戦いの経験が浅い異能力者の練習台としてはちょうどいい存在となっている。

 要は、経験値の肥やしというわけだ。

「うーん、でもちょっと数が多いねえ」

 自分に飛び掛ってきたスライ蟲を鉄扇で薙ぎ払いつつ、早苗は森の奥の方を指し示した。そこには、無数のスライ蟲がたむろしている。個体としては最弱クラスな奴らだが、群れるとかなり厄介だ。あまり数が多いと、最終的にはこちらがじり貧となってしまう。

「まとめてぶっ飛ばしてもいいが、さすがに森を破壊してまでやるのはまずいからのう」

 モリガンの魔力であれば、ここら辺一帯を吹き飛ばすことは可能であろうが、さすがにそれは勧められない。

 その時ー。

「ふふふ・・・」

 ミケさんが不敵に笑った。

「どうした、ミケさん」

 まあ、どうせ大したことは言わないだろうが、何か考えがあるようなので、一応聞いてみることにする。

「スライ蟲といえば、8匹揃えば合体して王様スライ蟲に・・・」

「わーわー!」

 早苗が、普段の姿からは想像もできないほど素早くミケさんの傍に駆け寄り、そして・・・、

「駄目だよ、ミケさん!そんな「竜退治」みたいなことを言っちゃあ」

 ミケさんもたじろぐ勢いであった。

 それにしても・・・「竜退治」って何の話だ・・・?

 晶には何のことだかさっぱり理解できなかったが、早苗の様子からするに、やはり何かの「禁忌タブー」に触れるものなのだろうことだけはよくわかった。多分、前文明絡みのネタなのだろうが、あまり深く突っ込んでもいいことはなさそうなので、敢えてこれ以上は気にかけないことにする・・・。

「まあ、数の多さには辟易するが、やってやれない数じゃない。一気に決めるぞ、みんな」

 晶は檄を飛ばした。

ーーすべてのスライ蟲を駆除するまでに、1時間半くらいはかかった。弱いが、やたらと数だけが多く、むしろなぜこんなに繁殖していたのかの方がはるかに問題であった。

「スライ蟲の異常繁殖か・・・これは後で奏多さん達に報告しといたほうがよさそうだな・・・」

「そうだねぇ」

 害蟲の異常繁殖は、放置しておけば後で必ず周囲に災害をもたらすことになる。今回のことはやはり和泉姉弟に報告しておいた方が賢明だろう。

「さて」

 あらかたスライ蟲を退治し終えたのを確認して、モリガンが

「忘れてはおらぬじゃろうな?わしの調合の材料集めを」

「毒キノコばかり集めてもな・・・」

「ここまで来たんじゃ、採取は済ませておきたい」

 ・・・果たして、毒キノコだらけの調合レシピをもとにして、「新種のポーション」が作れるのかどうか・・・。

 晶は、限りなく不安であったが、まあ、今回はモリガンの手伝いのためにここに来たので、結局は最後まで付き合うことにしたー。
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