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吾妻晶と清野早苗(第17話)

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ーー早苗視点ーー

「清野、奏多さんに連絡してみたら、ぜひ連れてきてくれないかってことになった」

 私は安堵するとともに、ミケさんと共に喜びを分かち合った。

「よかったね、ミケさん。これで「日向荘」に行けるよ」

「ありがたいですニャー」

 隣では、なぜか盛大にため息をつく晶君の姿があった。

「あのな、清野。まだ一緒に暮らすと決まったわけじゃないぜ。あくまで連れてきてくれって言うだけだ」

 晶君は、こほんと咳払いしながら、

「これからミケさんの面談だよ。オレの見立てではミケさんは害蟲ではない・・・単なる「人畜無害」というだけだ・・・これから、奏多さんと鏡香さんがミケさんと話してみて、それから決めることになる」

 それでも、ミケさんと一緒にいられる可能性が出てきたという点では、これは大きな進歩だ。

「早速、日向荘に帰ろう、晶君。みんなにミケさんを紹介したいし」

「おお、我輩もみニャさんにご挨拶するニャ!」

 ミケさんもやる気満々だ。その横で、なぜか頭を抱えている晶君の姿が・・・。

 うーん、ミケさんはこんなに可愛いのに、何がいけないのかな、晶君は。

「まったく、なんとも図々しい「ブサニャンコもどき」だな」

 晶君は愚痴をこぼしつつ頭を掻きながら、

「まあいい。それじゃあ日向荘まで帰るか。今日は久々に遠出したし、もうそろそろ帰らないと夕方までに着かなくなる」

「うんうん、そうだね。早く帰ろう」

「ふふふ、久しぶりに寝床ニェどこにありつけるニャ!」

「・・・」

 こうして、私たちは新しいお友達であるミケさんを連れて、日向荘へと帰ることにした。

ーー

「晶君、「春の領域」は楽しかったね」

「まあ、いろんな意味でな」

 帰り道、再び枝内部の神社に差し掛かったので、やはり神社にいた春奈さんや蟲さん達に軽く挨拶を済ませた。

「私、またここに来たいなぁ」

 春奈さんも蟲さん達も、みんな親切で優しいし、時間が許せば、また晶君と一緒にここに来て「公演」をしたいと思った。

 晶君も同意見だったらしく、顔をほころばせながら、

「ああ、また来ようぜ」

 それにしても、最初にここで踊った時に、まさかミケさんもここにいたなんて気が付かなったな・・・。他の蟲さん達に隠れて見えなかったのかもしれない。

「若人達ニョ芸は大したもニョだったニャ。吾輩もぜひ、また見てみたいですニャー」

「ミケさん、大丈夫だよ。これからは好きな時に私たちの芸が見られるようになるからね」

 腕の中のミケさんを優しくナデナデしながら、私は言った。

 暇がある時は、チームメンバーにいつも私たちの芸を披露しているのだ。当然、ミケさんがこれからも一緒にいられるようになれば、いつでも見せてあげられるようになる。

「まあ、面談が無事に終わってからだけどな」

 晶君がぶっきらぼうに言い放つ。

「もう、晶君。面談は無事に終わるよぉ。ミケさんこんなにいい子だし」

「・・・」

 とにかく、日向荘に早く帰って、和泉さん達に事情を説明しよう。お二人とも優しい人たちだから、多分大丈夫だろう。

 私は、ミケさんをどのようにみんなに紹介しようかと、日向荘にたどり着くまで考えておくことにしたー。
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