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吾妻晶と清野早苗(第7話)
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晶と早苗は枝内部から幹へと移動した。幹内部にも、外光を取り入れるための窓は存在している。かなり大きめな縦長の窓がいたるところに存在し、そこから地上の様子を確認することもできた。
下界は、相も変わらず砂漠が支配している。枝にいた時よりもその様子を確認しやすくなったが、その分自分たちの住んでいる世界が殺風景であり、大樹の周辺には砂しかないということを実感できた。
たまに、大型昆虫に姿がよく似た移動都市がゆっくりと移動しているのを確認できる程度だ。自分の趣味以外にはあまり興味を示さない晶だったが、なぜか移動都市には興味があった。一度でいいから、移動する都市の中を見てみたいーもちろん、現地の動画などから中の様子はわかるのだが、やはり実際に観光してみないことにはわからないことも多くあるだろう。
おそらく、早苗に勧めれば、彼女も行ってみたいと言い出すだろうし、頃合いを見計らってマスターである和泉姉弟に相談してみようかと思っている。
また、移動都市だけではなく、浮島ことラピュタも魅力的だ。チームメンバーの薬師寺咲那に言わせると、ラピュタは「地に足がつかない連中の住む場所」らしいが、晶は何もない大空で生活するというのも悪くはないのではないかと考えている。
晶自身が葉の居住エリアに住んでいるためか、高いところは結構好きだった。大体、大樹《ユグドラシル》の葉が生えている部分の真ん中あたりの高さのところに、ほとんどの浮島が浮かんでいる。実は、晶たちが暮らしている「日向荘」も似たような高さの場所にあるのだ。
大樹の葉のエリアは、光合成が行われているがゆえに、その高さであるにもかかわらず、空気は薄くはない。したがって、普通に暮らす分には肉体的な制約は少ない。
浮島は、やはり空気は薄めだが、それでも前文明時代においても標高の高い地域で暮らしてきた民族はいくらでもいるし、実際に生活してみるとそんなに違いがないという話も聞いたことがある。
移動都市も捨てがたいが、浮島も悪くはないー将来的な移住候補地として考えておいてもいいだろう。
幹の移動は、高速エレベータが主となる。この巨大な大樹を登ることなど現実的な話ではない。まあ、登山感覚である気で上を目指す者もいないわけではないが、はっきり言ってそういうもの好きは圧倒的少数派である。一応階段もあるが、それは非常用のものとして内部に設置されているくらいだ。そして、そういったものを使って自らの足で上を目指すというわけだ。
まあ、そういう「冒険者」たちのため・・・というわけでもないが、幹内部の宿泊施設はかなり充実している。機会があれば止まってみるのもいいかもしれない。
「春の領域まではあと少しだな」
エレベータ近くに設置された電光掲示板を確認し、晶と早苗は目的のエレベータに並ぶ。もう少しで幹から外に出ることができる。別に息苦しいというわけではないが、晶は早く外の空気が吸いたいと思った。
「久しぶりだねぇ、春の領域。年中お花見できるし、いいところだよね」
「まあ、年中桜が見られるというのも、却って花見のありがたみがなくなるような気もするけどな」
それでも、たまに行くのなら確かにいいかもしれない。
順番が回ってきたので、2人は高速エレベータに乗った。「春の領域」まではこのエレベータを降りればすぐだー。
下界は、相も変わらず砂漠が支配している。枝にいた時よりもその様子を確認しやすくなったが、その分自分たちの住んでいる世界が殺風景であり、大樹の周辺には砂しかないということを実感できた。
たまに、大型昆虫に姿がよく似た移動都市がゆっくりと移動しているのを確認できる程度だ。自分の趣味以外にはあまり興味を示さない晶だったが、なぜか移動都市には興味があった。一度でいいから、移動する都市の中を見てみたいーもちろん、現地の動画などから中の様子はわかるのだが、やはり実際に観光してみないことにはわからないことも多くあるだろう。
おそらく、早苗に勧めれば、彼女も行ってみたいと言い出すだろうし、頃合いを見計らってマスターである和泉姉弟に相談してみようかと思っている。
また、移動都市だけではなく、浮島ことラピュタも魅力的だ。チームメンバーの薬師寺咲那に言わせると、ラピュタは「地に足がつかない連中の住む場所」らしいが、晶は何もない大空で生活するというのも悪くはないのではないかと考えている。
晶自身が葉の居住エリアに住んでいるためか、高いところは結構好きだった。大体、大樹《ユグドラシル》の葉が生えている部分の真ん中あたりの高さのところに、ほとんどの浮島が浮かんでいる。実は、晶たちが暮らしている「日向荘」も似たような高さの場所にあるのだ。
大樹の葉のエリアは、光合成が行われているがゆえに、その高さであるにもかかわらず、空気は薄くはない。したがって、普通に暮らす分には肉体的な制約は少ない。
浮島は、やはり空気は薄めだが、それでも前文明時代においても標高の高い地域で暮らしてきた民族はいくらでもいるし、実際に生活してみるとそんなに違いがないという話も聞いたことがある。
移動都市も捨てがたいが、浮島も悪くはないー将来的な移住候補地として考えておいてもいいだろう。
幹の移動は、高速エレベータが主となる。この巨大な大樹を登ることなど現実的な話ではない。まあ、登山感覚である気で上を目指す者もいないわけではないが、はっきり言ってそういうもの好きは圧倒的少数派である。一応階段もあるが、それは非常用のものとして内部に設置されているくらいだ。そして、そういったものを使って自らの足で上を目指すというわけだ。
まあ、そういう「冒険者」たちのため・・・というわけでもないが、幹内部の宿泊施設はかなり充実している。機会があれば止まってみるのもいいかもしれない。
「春の領域まではあと少しだな」
エレベータ近くに設置された電光掲示板を確認し、晶と早苗は目的のエレベータに並ぶ。もう少しで幹から外に出ることができる。別に息苦しいというわけではないが、晶は早く外の空気が吸いたいと思った。
「久しぶりだねぇ、春の領域。年中お花見できるし、いいところだよね」
「まあ、年中桜が見られるというのも、却って花見のありがたみがなくなるような気もするけどな」
それでも、たまに行くのなら確かにいいかもしれない。
順番が回ってきたので、2人は高速エレベータに乗った。「春の領域」まではこのエレベータを降りればすぐだー。
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