テキトーすぎな《ユグドラシル》の皆さん

ミケとポン太

文字の大きさ
上 下
44 / 464

吾妻晶と清野早苗(第7話)

しおりを挟む
 晶と早苗は枝内部から幹へと移動した。幹内部にも、外光を取り入れるための窓は存在している。かなり大きめな縦長の窓がいたるところに存在し、そこから地上の様子を確認することもできた。

 下界は、相も変わらず砂漠が支配している。枝にいた時よりもその様子を確認しやすくなったが、その分自分たちの住んでいる世界が殺風景であり、大樹の周辺には砂しかないということを実感できた。

 たまに、大型昆虫に姿がよく似た移動都市がゆっくりと移動しているのを確認できる程度だ。自分の趣味以外にはあまり興味を示さない晶だったが、なぜか移動都市には興味があった。一度でいいから、移動する都市の中を見てみたいーもちろん、現地の動画などから中の様子はわかるのだが、やはり実際に観光してみないことにはわからないことも多くあるだろう。

 おそらく、早苗に勧めれば、彼女も行ってみたいと言い出すだろうし、頃合いを見計らってマスターである和泉姉弟に相談してみようかと思っている。

 また、移動都市だけではなく、浮島ことラピュタも魅力的だ。チームメンバーの薬師寺咲那に言わせると、ラピュタは「地に足がつかない連中の住む場所」らしいが、晶は何もない大空で生活するというのも悪くはないのではないかと考えている。

 晶自身が葉の居住エリアに住んでいるためか、高いところは結構好きだった。大体、大樹《ユグドラシル》の葉が生えている部分の真ん中あたりの高さのところに、ほとんどの浮島が浮かんでいる。実は、晶たちが暮らしている「日向荘」も似たような高さの場所にあるのだ。

 大樹の葉のエリアは、光合成が行われているがゆえに、その高さであるにもかかわらず、空気は薄くはない。したがって、普通に暮らす分には肉体的な制約は少ない。

 浮島は、やはり空気は薄めだが、それでも前文明時代においても標高の高い地域で暮らしてきた民族はいくらでもいるし、実際に生活してみるとそんなに違いがないという話も聞いたことがある。

 移動都市も捨てがたいが、浮島も悪くはないー将来的な移住候補地として考えておいてもいいだろう。

 幹の移動は、高速エレベータが主となる。この巨大な大樹を登ることなど現実的な話ではない。まあ、登山感覚である気で上を目指す者もいないわけではないが、はっきり言ってそういうもの好きは圧倒的少数派である。一応階段もあるが、それは非常用のものとして内部に設置されているくらいだ。そして、そういったものを使って自らの足で上を目指すというわけだ。

 まあ、そういう「冒険者」たちのため・・・というわけでもないが、幹内部の宿泊施設はかなり充実している。機会があれば止まってみるのもいいかもしれない。

「春の領域まではあと少しだな」

 エレベータ近くに設置された電光掲示板を確認し、晶と早苗は目的のエレベータに並ぶ。もう少しで幹から外に出ることができる。別に息苦しいというわけではないが、晶は早く外の空気が吸いたいと思った。

「久しぶりだねぇ、春の領域。年中お花見できるし、いいところだよね」

「まあ、年中桜が見られるというのも、却って花見のありがたみがなくなるような気もするけどな」

 それでも、たまに行くのなら確かにいいかもしれない。

 順番が回ってきたので、2人は高速エレベータに乗った。「春の領域」まではこのエレベータを降りればすぐだー。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパー忍者・タカシの大冒険

Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...