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清野江紀と薬師寺咲那(第8話)
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ーー江紀視点ーー
大型の個体を片付けて、屋上から中庭の様子を窺う。どうやら、これから戦いが始まるようだ。お互いが魔力を集中させ、いつでも攻撃できる態勢に入っている。そして・・・。
薬師寺と亜人種型が今、激突した。最初に打って出たのは亜人種型だ。薬師寺が相手の初撃を魔法剣で弾き返す。さすがに亜人種型の放つそれは、他の蟲どものものよりも威力は高い・・・が、性質さえわかっていれば対処する方法は同じでも構わない。
初撃は亜人種型にとっても様子見といったところだろう。ただ、人間を侮っていたのか、初撃を魔法剣で返されたのには驚かされたようだった。
もっとも、薬師寺にとってはこのくらいはなんてことはないだろう。亜人種型そのものと戦うのは初めてとは言え、今まで何度も大型の個体とやり合ってきた彼女だ。
「今のところは大丈夫そうだな」
出だしはまず順調・・・か。
薬師寺も、場数はかなり踏んでいる。それなりに応用力は育っているはずだ。オレはまだ早いかと思っていたが、確かにそろそろ亜人種型との戦いを経験させるべきかもしれない。
もちろん、まだ戦いは始まったばかりだ。薬師寺が危なくなればオレも出るつもりだった。あいつは怒るだろうが、薬師寺の身に何かあってからでは困る。
今度は薬師寺が打って出た。魔法剣ーエクセリオンで亜人種型に斬りかかったーが、弾かれてしまった。
「あれは・・・鏡幕か」
一部の蟲が使う防御幕ーしかも魔法反射することもできる。
「なるほど、魔法主体の戦いでは分が悪い相手だな」
ただ、鏡幕にも弱点があり、魔法剣のような何らかの媒体に魔力を宿らせた武器までは「反射」できない。あくまでも「弾く」だけだ。魔力を宿らせた武器は強度を増す。それは付与された属性がどんなものであったとしてもだ。もっとも、弾かれると反動はあるので、こちら側の体勢は崩されやすくなるが・・・。
鏡幕を使う相手に対しては、主に剣術や槍術、あるいは現代であれば銃等の物理的な攻撃により攻めるのがセオリーだ。魔法反射は防ぎようがないー唯一、その反射強度をしのぐだけの魔力をぶつけることが可能な場合を除いてだが、今回のように、さすがに同格以上の相手にそれは不可能な話だろう。
だが、魔法剣ならば「反射」できず、「弾く」だけなので、鏡幕の強度を少々上回った程度でも傷つけることは可能だ。
薬師寺は、今のところ魔法剣のまま戦いを進めるつもりのようだ。多分剣の打ち合いで鏡幕の破損を狙っているのだろう。
「あいつは、あまり刀を使いたがらないな・・・」
薬師寺は天元一刀流という流派の使い手だ。もっとも、破門の身らしいが、オレが以前見た感じでは、その実力は十分免許皆伝の域に達しているのではないかと思う。
刀術や流派の話をあまりしたがらないので、薬師寺の過去に何があったのかは知らない。本人が話したがらないものをあれこれ詮索するのも無粋だろう。
薬師寺が亜人種型に斬りかかる。亜人種型は、今のところそれを余裕で受け止めているといった感じだったーが、
パリィン!
何度かの打ち合いの最中、金属が砕けるような高い音が響き渡る。薬師寺の魔法剣が、わずかだが亜人種型の鏡幕を破損させたようだ。やはり、強度だけなら薬師寺の魔法剣の方が上回る。あとは手数を増やして相手の鏡幕の破損部分を増やしていけば、相手の防御力を大幅に低下させられるーが。
ーそう簡単に行く相手でもあるまい。
「!」
亜人種型が、全身から魔力を解放し始める。亜人種型が、防御主体の鏡幕を解除して、多角攻撃主体のスタイルに切り替えたようだ。この切り替えの早さもまた、頭の回転が速い亜人種型ならではの特徴の一つだ。
亜人種型の周囲に魔法球が無数に展開される。その数を見ても、魔力の絶対量がけた違いなのが分かる。しかも、やつは他の場所にも魔力を発動させていたー地中だ。
「足元からも仕掛ける気か!」
亜人種型は、正面、地面とあらゆる場所から薬師寺を攻撃するつもりのようだ。これでは、薬師寺に逃げ場はないだろう。
だが、対する薬師寺の方も簡単に参るようなやつではない。多角攻撃であれば、今まで大型の個体とやり合ってきた中である程度対処の仕方は学習しているはずだ。あとはその応用がどこまでできるのかということになる。
薬師寺も、地中にも魔力が放たれているのは気が付いているようだ。地中に放たれた魔力を「地雷」に例えるのであれば、その場所がわかっているようなものである。もっとも、この「地雷」は、どうやら地中を自由に移動できるタイプのようなので、空中と地面双方に気を配る必要があるが、薬師寺は今のところ、それらを器用にかわしている。そして、かわしながら反撃のチャンスを窺っている。
こうしてみると、なかなかの戦闘センスである。
「まだ加勢するのは早そうだな・・・」
オレは、もうしばらく戦いを見守ることにしたー。
大型の個体を片付けて、屋上から中庭の様子を窺う。どうやら、これから戦いが始まるようだ。お互いが魔力を集中させ、いつでも攻撃できる態勢に入っている。そして・・・。
薬師寺と亜人種型が今、激突した。最初に打って出たのは亜人種型だ。薬師寺が相手の初撃を魔法剣で弾き返す。さすがに亜人種型の放つそれは、他の蟲どものものよりも威力は高い・・・が、性質さえわかっていれば対処する方法は同じでも構わない。
初撃は亜人種型にとっても様子見といったところだろう。ただ、人間を侮っていたのか、初撃を魔法剣で返されたのには驚かされたようだった。
もっとも、薬師寺にとってはこのくらいはなんてことはないだろう。亜人種型そのものと戦うのは初めてとは言え、今まで何度も大型の個体とやり合ってきた彼女だ。
「今のところは大丈夫そうだな」
出だしはまず順調・・・か。
薬師寺も、場数はかなり踏んでいる。それなりに応用力は育っているはずだ。オレはまだ早いかと思っていたが、確かにそろそろ亜人種型との戦いを経験させるべきかもしれない。
もちろん、まだ戦いは始まったばかりだ。薬師寺が危なくなればオレも出るつもりだった。あいつは怒るだろうが、薬師寺の身に何かあってからでは困る。
今度は薬師寺が打って出た。魔法剣ーエクセリオンで亜人種型に斬りかかったーが、弾かれてしまった。
「あれは・・・鏡幕か」
一部の蟲が使う防御幕ーしかも魔法反射することもできる。
「なるほど、魔法主体の戦いでは分が悪い相手だな」
ただ、鏡幕にも弱点があり、魔法剣のような何らかの媒体に魔力を宿らせた武器までは「反射」できない。あくまでも「弾く」だけだ。魔力を宿らせた武器は強度を増す。それは付与された属性がどんなものであったとしてもだ。もっとも、弾かれると反動はあるので、こちら側の体勢は崩されやすくなるが・・・。
鏡幕を使う相手に対しては、主に剣術や槍術、あるいは現代であれば銃等の物理的な攻撃により攻めるのがセオリーだ。魔法反射は防ぎようがないー唯一、その反射強度をしのぐだけの魔力をぶつけることが可能な場合を除いてだが、今回のように、さすがに同格以上の相手にそれは不可能な話だろう。
だが、魔法剣ならば「反射」できず、「弾く」だけなので、鏡幕の強度を少々上回った程度でも傷つけることは可能だ。
薬師寺は、今のところ魔法剣のまま戦いを進めるつもりのようだ。多分剣の打ち合いで鏡幕の破損を狙っているのだろう。
「あいつは、あまり刀を使いたがらないな・・・」
薬師寺は天元一刀流という流派の使い手だ。もっとも、破門の身らしいが、オレが以前見た感じでは、その実力は十分免許皆伝の域に達しているのではないかと思う。
刀術や流派の話をあまりしたがらないので、薬師寺の過去に何があったのかは知らない。本人が話したがらないものをあれこれ詮索するのも無粋だろう。
薬師寺が亜人種型に斬りかかる。亜人種型は、今のところそれを余裕で受け止めているといった感じだったーが、
パリィン!
何度かの打ち合いの最中、金属が砕けるような高い音が響き渡る。薬師寺の魔法剣が、わずかだが亜人種型の鏡幕を破損させたようだ。やはり、強度だけなら薬師寺の魔法剣の方が上回る。あとは手数を増やして相手の鏡幕の破損部分を増やしていけば、相手の防御力を大幅に低下させられるーが。
ーそう簡単に行く相手でもあるまい。
「!」
亜人種型が、全身から魔力を解放し始める。亜人種型が、防御主体の鏡幕を解除して、多角攻撃主体のスタイルに切り替えたようだ。この切り替えの早さもまた、頭の回転が速い亜人種型ならではの特徴の一つだ。
亜人種型の周囲に魔法球が無数に展開される。その数を見ても、魔力の絶対量がけた違いなのが分かる。しかも、やつは他の場所にも魔力を発動させていたー地中だ。
「足元からも仕掛ける気か!」
亜人種型は、正面、地面とあらゆる場所から薬師寺を攻撃するつもりのようだ。これでは、薬師寺に逃げ場はないだろう。
だが、対する薬師寺の方も簡単に参るようなやつではない。多角攻撃であれば、今まで大型の個体とやり合ってきた中である程度対処の仕方は学習しているはずだ。あとはその応用がどこまでできるのかということになる。
薬師寺も、地中にも魔力が放たれているのは気が付いているようだ。地中に放たれた魔力を「地雷」に例えるのであれば、その場所がわかっているようなものである。もっとも、この「地雷」は、どうやら地中を自由に移動できるタイプのようなので、空中と地面双方に気を配る必要があるが、薬師寺は今のところ、それらを器用にかわしている。そして、かわしながら反撃のチャンスを窺っている。
こうしてみると、なかなかの戦闘センスである。
「まだ加勢するのは早そうだな・・・」
オレは、もうしばらく戦いを見守ることにしたー。
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