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ユグドラシルの双子の主・和泉奏多(第9話)
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ーー吾妻晶視点ーー
急がなくては、奏多さんが危なくなる!
先ほど、奏多さんから魔導書を持ってくるようにと頼まれて、オレは一路書斎を目指した。こうしている間にも、奏多さんはあの蟲とやり合っているはずだ。しかも、こちらはただ相手の攻撃をかわし続けることしかできないという、圧倒的に不利な状況である。一刻も早く魔導書をもっていかなければ、奏多さんが危ない。
書斎に入り、とにかく目につく魔導書の類をもっていくことにする。念のために、ちらちらと中を見てみると、なるほど、確かにどの魔導書も文字は食われてはいない。奏多さんの指摘通り、何かの理由で手を付けていないということがわかる。
何冊かの魔導書を携えて、急いで蔵を目指す。奏多さんのことだから、おそらく無事だろうとは思うが、それでもやはり落ち着かないものだ。早く彼の元にたどり着かなければー。
林に入り、蔵が見えてきた。そこには当然、奏多さんや蟲の姿もあった。
さすが、奏多さんは蟲相手に戦い慣れているのか、相手の攻撃を余裕でかわしている。だが、やはり無尽蔵の魔力を持つ相手だけに、このまま戦い続けていれば消耗するのはこちら側だ。そうなればじり貧となってしまう。
「奏多さん、魔導書を持ってきました!」
奏多さんに声をかける。
「よし、どの魔導書でもいいから、本を開いてみてくれ」
「わかりました」
いわれるがままに、オレは適当な魔導書を開き、それを蟲と奏多さんに向けた。すると・・・。
「!蟲の動きが・・・?」
文字「達」の動きが一瞬止まった。そして、文字「達」が、まるで苦手なものを突き付けられたかのように、後退したかのように見えた。いや、後退というよりも、弾かれたのか・・・?
これは、やはり魔導書の文字に反応しているのだろうか・・・?とすると、何かこの蟲と魔導書の文字との間に相容れないものがあるというのか。
「これは・・・やはり反応しているのか」
「晶君、他の魔導書も開いてみてくれ、他のは地面に置いておくだけでいい」
「はい」
奏多さんも、相手の異変に気が付いたようだ。理由はよくわからないが、やはりこいつは魔導書に書かれている文字に対して何らかの苦手意識があるようだ。
「一種の斥力みたいなものでも働いているのかな」
蟲の様子を確認しながら奏多さんがつぶやく。
「同じ文字でも、魔力を帯びたものとは競合できない。取り込めないどころか、避けているのがわかる・・・。なんだか、磁石の同極同士を無理やり近づけて反発しているみたいな感じなのかも」
要するに、磁石のN極同士やS極同士では絶対にくっつかないのと同じようなものか・・・。反発力みたいなものが働き、この蟲は結局魔導書の文字には手出しができないといったところか。
魔力を帯びていない単なる文字であれば、食らい、それに魔力を供給することで支配することができても、既に何らかの魔力を帯びている文字相手では、魔力の競合ができないということか。だから、弾かれてしまうのだろう。
「これは・・・魔力同士の反発力を利用すれば、相手の動きを制限することができるのでは?」
「それだ!」
奏多さんが叫んだ。
「相手は魔導書の文字による反発力でこちらに攻撃できなくなるが、こちら側は動きに制限はない。相手の動ける範囲を狭めてしまえば、あとはこちらからの攻撃を続けていくことで、やがては「核」を攻撃することができるはずだ」
おそらく、魔導書の文字の影響で、今までのように複写して失われた文字を増幅させるということもできなくなるだろう。そうなれば、やがて「核」は丸裸となるはずだ。
いくら巨大で、弱点がわからないとはいえ、活動範囲を抑えてさらに複写能力を制限してしまえば、奏多さんなら倒すのは難しくはないはず。
少しずつ、希望が見えてきた。あとは、とにかく相手の活動範囲を狭めるため、ありったけの魔導書を持ってくるだけだ。
「奏多さん、オレ、残りの魔導書も探してきます!」
「ああ、任せたよ」
オレは、今持ってきた何冊かの魔導書を広げたまま地面に置いて、そのまま再び屋敷へと戻ることにしたー。
急がなくては、奏多さんが危なくなる!
先ほど、奏多さんから魔導書を持ってくるようにと頼まれて、オレは一路書斎を目指した。こうしている間にも、奏多さんはあの蟲とやり合っているはずだ。しかも、こちらはただ相手の攻撃をかわし続けることしかできないという、圧倒的に不利な状況である。一刻も早く魔導書をもっていかなければ、奏多さんが危ない。
書斎に入り、とにかく目につく魔導書の類をもっていくことにする。念のために、ちらちらと中を見てみると、なるほど、確かにどの魔導書も文字は食われてはいない。奏多さんの指摘通り、何かの理由で手を付けていないということがわかる。
何冊かの魔導書を携えて、急いで蔵を目指す。奏多さんのことだから、おそらく無事だろうとは思うが、それでもやはり落ち着かないものだ。早く彼の元にたどり着かなければー。
林に入り、蔵が見えてきた。そこには当然、奏多さんや蟲の姿もあった。
さすが、奏多さんは蟲相手に戦い慣れているのか、相手の攻撃を余裕でかわしている。だが、やはり無尽蔵の魔力を持つ相手だけに、このまま戦い続けていれば消耗するのはこちら側だ。そうなればじり貧となってしまう。
「奏多さん、魔導書を持ってきました!」
奏多さんに声をかける。
「よし、どの魔導書でもいいから、本を開いてみてくれ」
「わかりました」
いわれるがままに、オレは適当な魔導書を開き、それを蟲と奏多さんに向けた。すると・・・。
「!蟲の動きが・・・?」
文字「達」の動きが一瞬止まった。そして、文字「達」が、まるで苦手なものを突き付けられたかのように、後退したかのように見えた。いや、後退というよりも、弾かれたのか・・・?
これは、やはり魔導書の文字に反応しているのだろうか・・・?とすると、何かこの蟲と魔導書の文字との間に相容れないものがあるというのか。
「これは・・・やはり反応しているのか」
「晶君、他の魔導書も開いてみてくれ、他のは地面に置いておくだけでいい」
「はい」
奏多さんも、相手の異変に気が付いたようだ。理由はよくわからないが、やはりこいつは魔導書に書かれている文字に対して何らかの苦手意識があるようだ。
「一種の斥力みたいなものでも働いているのかな」
蟲の様子を確認しながら奏多さんがつぶやく。
「同じ文字でも、魔力を帯びたものとは競合できない。取り込めないどころか、避けているのがわかる・・・。なんだか、磁石の同極同士を無理やり近づけて反発しているみたいな感じなのかも」
要するに、磁石のN極同士やS極同士では絶対にくっつかないのと同じようなものか・・・。反発力みたいなものが働き、この蟲は結局魔導書の文字には手出しができないといったところか。
魔力を帯びていない単なる文字であれば、食らい、それに魔力を供給することで支配することができても、既に何らかの魔力を帯びている文字相手では、魔力の競合ができないということか。だから、弾かれてしまうのだろう。
「これは・・・魔力同士の反発力を利用すれば、相手の動きを制限することができるのでは?」
「それだ!」
奏多さんが叫んだ。
「相手は魔導書の文字による反発力でこちらに攻撃できなくなるが、こちら側は動きに制限はない。相手の動ける範囲を狭めてしまえば、あとはこちらからの攻撃を続けていくことで、やがては「核」を攻撃することができるはずだ」
おそらく、魔導書の文字の影響で、今までのように複写して失われた文字を増幅させるということもできなくなるだろう。そうなれば、やがて「核」は丸裸となるはずだ。
いくら巨大で、弱点がわからないとはいえ、活動範囲を抑えてさらに複写能力を制限してしまえば、奏多さんなら倒すのは難しくはないはず。
少しずつ、希望が見えてきた。あとは、とにかく相手の活動範囲を狭めるため、ありったけの魔導書を持ってくるだけだ。
「奏多さん、オレ、残りの魔導書も探してきます!」
「ああ、任せたよ」
オレは、今持ってきた何冊かの魔導書を広げたまま地面に置いて、そのまま再び屋敷へと戻ることにしたー。
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