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ユグドラシルの双子の主・和泉奏多(第6話)
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ーー奏多視点ーー
戦いながら、相手の弱点を探るきっかけとなるものがつかめればいいのだが・・・。
晶君にそう提案したものの、特にいい考えがあるわけでもなかった。さすがに無限増殖するような相手とやり合う準備はしていなかった。
とはいえ、泣き言ばかり言っていても始まらない。何とかこいつを倒す足掛かりとなるものを見つけないと。
分裂した文字「達」は、僕たちに狙いを定めて一斉に襲い掛かった。それは、まるで無数の小さな虫が群れを成しているかのようだが、今度は一つ一つが独立しているため、まとまった動きとは言えない。
そして、それゆえにこちらの方が厄介だともいえるのだ。やはり、文字を魔法で消去したところで、おそらくはすぐに複写されてより増殖した形でこちらに襲い来るだろう。結局は、いくら文字一つ一つを相手にしたところで問題は解決しないばかりかより状況の悪化を招くだけとなる。
・・・そもそもの話、なぜ「魔眼」が反応しないんだ?いや、反応はしているが、何が「核」の特定を阻んでいるんだ?
自分の力を過信するわけではないが、僕の「魔眼」を阻むだけの力をこいつが持っているということになるが、それだとマスターランク並の力を持つ個体(むろん、そんな奴はほとんど現れることはないが)ということになる。
あるいは、何かの「規則顕現」を可能とする蟲か。例えば、自分の位置を特定されることを異常なまでに恐れるあまり、それらを全て防ぐ「強制力を伴った領域」を展開することができる個体なのか。
ここでいう「規則顕現」とは、例え能力が自分より上位の者であったとしても、それを侵すことができない絶対ルールをある一定の範囲に展開することを意味する。要は、どれだけ僕の力がこいつ単体より上であったとしても、その「規則」を展開されてしまえば他人は決して干渉できなくなるということだ。
おそらくそれが原因で、「魔眼」が阻まれているのだろう。生来の臆病さゆえに身に着けた「規則顕現」という可能性が出てきた。
つまりは・・・「魔眼」では決してこいつの「核」を捉えられないということになる。
「これは厄介だな」
僕は頭を掻きながらつぶやいた。
「多分これは、「魔眼」だけでなく、あらゆる手段を用いても本体の位置を特定できない「規則」が課されているんだ」
「まずいですね。弱点が特定できないなら、結局は全部消し去る以外に方法がないということに」
晶君の言うとおりだ。ただ、さすがにそれをやるとこの屋敷は無事では済まない。いくら何でもそれでは晶君たち一家が気の毒だ。
「まあ、もう少し様子を見て、別の方法を探ってみよう。何か手はあるはずだ」
とりあえず、もう少し相手の動きに注意してみることにしよう。
まず、文字一つ一つの動きだ。
身も蓋もないことを言えば、一つ一つは単なる文字だ。前文明より継承された様々な文字や記号が、宙に浮かんでおり、隙あらば僕たちを倒さんとばかりに飛来してくる。
ただ、地面をえぐったあの威力からもわかる通り、文字にはそれなりに魔力が込められており、物理的破壊まで可能としているようだ。
改めて文字を確認してみる。使われた文字そのものにさほど法則性が感じられないが、よく目を凝らしてみれば、確かに魔力の流れが各文字同士で確認できる。完全に独立して動いているわけでもないらしい。考えてみれば、蟲本体から魔力の供給を受けているのだから、それも当たり前といえるだろう。
この魔力の流れごと断ち切ろうと、先ほど魔法球を放ったわけだが、すぐに他の文字からの複写を受けて増殖されてしまった。もしかしたら、この文字一つ一つに、魔力の供給を増幅させるブースターのような効果があるのかもしれない。
もともとは、単なる書物に印刷された文字にすぎないため、文字そのものにはおそらく魔力はないだろう。先ほど、本の種類も確認したが、魔導書といったものはなかったようだ。そもそも、前文明時代において、魔法は「ファンタジー」のものと位置づけられており、架空の存在として扱われていたのだ。
そこで気が付いたー魔導書ーつまりは、現文明になってから書かれた本の文字はどうだったか。全部確認したわけではないが、確か一部の魔導書の文字は残ったままだった。魔導書というのは、例え紙で書かれていたとしても、その本自体が魔力を帯びるものだ。例えば、自分では魔法を使えない者が魔法を使う時、よく形態しているのを目にしたことがある。あれは、本人の魔力ではなく、本の魔力を使うのだ。
つまりは・・・こいつは、魔導書の文字は食うことができないが、魔力が込められていない他の本の文字ならば食うことができるということになる。
あと、絵や写真も残したままだったので、やはり「魔力が込められていない書物の文字だけ」を食い、操ることができるということなのだろう。
このことが、何を意味して、現状の突破口になるのかはいまいちわからないが、気に留めておいた方がいいかもしれない。何せ、相手は得体のしれない蟲だ。どんな常識外れなことが起こったとしてもおかしくはないだろう。
僕は改めて蟲を見やった。とにかく、どんな小さな手がかりも逃さないように注意しなければー。
戦いながら、相手の弱点を探るきっかけとなるものがつかめればいいのだが・・・。
晶君にそう提案したものの、特にいい考えがあるわけでもなかった。さすがに無限増殖するような相手とやり合う準備はしていなかった。
とはいえ、泣き言ばかり言っていても始まらない。何とかこいつを倒す足掛かりとなるものを見つけないと。
分裂した文字「達」は、僕たちに狙いを定めて一斉に襲い掛かった。それは、まるで無数の小さな虫が群れを成しているかのようだが、今度は一つ一つが独立しているため、まとまった動きとは言えない。
そして、それゆえにこちらの方が厄介だともいえるのだ。やはり、文字を魔法で消去したところで、おそらくはすぐに複写されてより増殖した形でこちらに襲い来るだろう。結局は、いくら文字一つ一つを相手にしたところで問題は解決しないばかりかより状況の悪化を招くだけとなる。
・・・そもそもの話、なぜ「魔眼」が反応しないんだ?いや、反応はしているが、何が「核」の特定を阻んでいるんだ?
自分の力を過信するわけではないが、僕の「魔眼」を阻むだけの力をこいつが持っているということになるが、それだとマスターランク並の力を持つ個体(むろん、そんな奴はほとんど現れることはないが)ということになる。
あるいは、何かの「規則顕現」を可能とする蟲か。例えば、自分の位置を特定されることを異常なまでに恐れるあまり、それらを全て防ぐ「強制力を伴った領域」を展開することができる個体なのか。
ここでいう「規則顕現」とは、例え能力が自分より上位の者であったとしても、それを侵すことができない絶対ルールをある一定の範囲に展開することを意味する。要は、どれだけ僕の力がこいつ単体より上であったとしても、その「規則」を展開されてしまえば他人は決して干渉できなくなるということだ。
おそらくそれが原因で、「魔眼」が阻まれているのだろう。生来の臆病さゆえに身に着けた「規則顕現」という可能性が出てきた。
つまりは・・・「魔眼」では決してこいつの「核」を捉えられないということになる。
「これは厄介だな」
僕は頭を掻きながらつぶやいた。
「多分これは、「魔眼」だけでなく、あらゆる手段を用いても本体の位置を特定できない「規則」が課されているんだ」
「まずいですね。弱点が特定できないなら、結局は全部消し去る以外に方法がないということに」
晶君の言うとおりだ。ただ、さすがにそれをやるとこの屋敷は無事では済まない。いくら何でもそれでは晶君たち一家が気の毒だ。
「まあ、もう少し様子を見て、別の方法を探ってみよう。何か手はあるはずだ」
とりあえず、もう少し相手の動きに注意してみることにしよう。
まず、文字一つ一つの動きだ。
身も蓋もないことを言えば、一つ一つは単なる文字だ。前文明より継承された様々な文字や記号が、宙に浮かんでおり、隙あらば僕たちを倒さんとばかりに飛来してくる。
ただ、地面をえぐったあの威力からもわかる通り、文字にはそれなりに魔力が込められており、物理的破壊まで可能としているようだ。
改めて文字を確認してみる。使われた文字そのものにさほど法則性が感じられないが、よく目を凝らしてみれば、確かに魔力の流れが各文字同士で確認できる。完全に独立して動いているわけでもないらしい。考えてみれば、蟲本体から魔力の供給を受けているのだから、それも当たり前といえるだろう。
この魔力の流れごと断ち切ろうと、先ほど魔法球を放ったわけだが、すぐに他の文字からの複写を受けて増殖されてしまった。もしかしたら、この文字一つ一つに、魔力の供給を増幅させるブースターのような効果があるのかもしれない。
もともとは、単なる書物に印刷された文字にすぎないため、文字そのものにはおそらく魔力はないだろう。先ほど、本の種類も確認したが、魔導書といったものはなかったようだ。そもそも、前文明時代において、魔法は「ファンタジー」のものと位置づけられており、架空の存在として扱われていたのだ。
そこで気が付いたー魔導書ーつまりは、現文明になってから書かれた本の文字はどうだったか。全部確認したわけではないが、確か一部の魔導書の文字は残ったままだった。魔導書というのは、例え紙で書かれていたとしても、その本自体が魔力を帯びるものだ。例えば、自分では魔法を使えない者が魔法を使う時、よく形態しているのを目にしたことがある。あれは、本人の魔力ではなく、本の魔力を使うのだ。
つまりは・・・こいつは、魔導書の文字は食うことができないが、魔力が込められていない他の本の文字ならば食うことができるということになる。
あと、絵や写真も残したままだったので、やはり「魔力が込められていない書物の文字だけ」を食い、操ることができるということなのだろう。
このことが、何を意味して、現状の突破口になるのかはいまいちわからないが、気に留めておいた方がいいかもしれない。何せ、相手は得体のしれない蟲だ。どんな常識外れなことが起こったとしてもおかしくはないだろう。
僕は改めて蟲を見やった。とにかく、どんな小さな手がかりも逃さないように注意しなければー。
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