4 / 464
ユグドラシルの双子の主・和泉鏡香(第4話)
しおりを挟む
ーー和泉鏡香視点ーー
「これでしまいじゃ」
彼女ーモリガンが作りだした極大の魔法球が私めがけて繰り出された。確かにこのくらいの魔法球だと、地面に着弾した場合、この辺り一帯が吹き飛ぶ可能性がある。もちろん、生身で食らえば無事では済まないだろう。
だがーー
私は、自らの髪の毛を1本抜くと、それに魔力を込め始めた。抜いた髪の毛がまるで1本の針のようにピンと立つ。次に、私は迫りくる魔法球を観察する。どんな魔法球にも、濃度勾配というものがあり、それゆえに「ツボ」となる部分は存在する。その「ツボ」の部分を突くことさえできればこちらのものだ。無力化することができる。
「はあああ!」
見えたーー!
私は迫りくる魔法球に自ら突っ込んでいった。そしてーー魔力の濃度のムラがある部分をめがけて、髪の毛を突き立てる。この髪の毛には、相手の魔力を相殺できる無力化の魔法を込めている。
つまり、「ツボ」となる部分を刺激し、そこから無力化の魔法を流し込んでやれば、この魔法球自体を消滅させることができるというわけだ。
パアアアン!!
風船が弾けたような音が辺りに響く。
狙い通り、私の髪の毛により「ツボ」を突かれた魔法球は、あっけなく拡散した。魔力自体を相殺し、中和できるので、周囲への影響もほとんどない。
「なに!?」
モリガンが驚きの表情をこちらに向ける。自分の魔法球がよもや消滅させられるとは夢にも思っていなかったのだろう。
「これで終わりですよ」
私は魔法球を無力化した勢いもそのままに、上空にいるモリガンめがけて飛び掛った。そして、今度は髪の毛を鞭のようにしならせて、彼女に一撃を食らわせる。
「がっ!!」
私の髪の毛に腹部を打たれて、モリガンがバランスを崩し、そのまま地面に叩きつけられるー前に、彼女の体に魔力を放ち、地面への衝突寸前で抑えた。さすがにこの高さから地面に叩きつけられたのでは無事では済まない。
私は、周囲に風魔法を展開しつつ、ゆっくりと地上へと降り立つと、息も絶え絶えな彼女に向き合った。
「く、お主、いったい何をしたのだ・・・?」
自分の魔法が破られたショックはあるようだが、それにもまして、どのようにして破られたのか、その理由が知りたいというところだろうか。
「私の武器はこちらになります~」
種明かしをすることにする。今となっては魔力を失い、ただ抜け落ちただけの1本の髪の毛を彼女に示した。
「か、髪の毛・・・じゃと!?」
私の髪の毛に、モリガンは目を丸くする。
「ええ、この髪の毛に相手の魔力を相殺する魔法を込めて、あなたの魔法球の「ツボ」を突いたのですよ」
「なんじゃと・・・」
私の暴露に、かなりショックを受けた様子だ。
「髪の毛1本に、わしは負けたというのか」
「そういうことになりますね~」
途端に、モリガンは「真っ白く」なった。「燃え尽きた」という感じだ。
「負けた・・・完全に」
髪の毛1本にすら敗れたということがよほどショックだったのか、頭からは湯気さえ上がっている・・・ように見える。
「ええい、このモリガン、魔女としての誇りくらいはあるわ!さっさととどめを刺すがよい」
もはや、抵抗する気もないのか、地面に両手両足を広げて仰向けになるモリガンを見て、
「その必要はありませんよ」
と、優しく告げた。彼女のそばに近寄り、抱き起すことにする。
「あなたの言い分もきちんと聞きましたから、これからコミュニティの皆さんのところへ行って事情を説明すればそれで済むことです。それに、あなたは悪い子ではなさそうですしね」
頭をなでてやる。この子はそんなに悪い子ではないはず。コミュニティの損害は、いくらか事情を説明して、こちらでも保障できる分は行う。何せ、この秋の領域はチーム《ユグドラシル》の属領だ。「双子の王」である私なら、ある程度のことは融通を利かせることもできる。
「なんじゃと・・・情けをかける気か」
「いえいえ、コミュニティの皆さんにも、もちろんモリガンちゃんにも仲直りしてもらうためです。モリガンちゃんも、いきなりコミュニティを壊すのではなく、勝手に森に入らないようにと、きちんと説明すればよかったのですよ」
私が優しく諭したのが功を奏したのか、モリガンがおとなしくなった。どうやら警戒心は解いてくれたようだ。
「ですが・・・、やはりコミュニティの皆さん多大なご迷惑をおかけしたし、さらには今もこの広場を吹き飛ばそうとしたりとか少しおイタが過ぎますね・・・」
私は笑顔は崩さず、しかし少し声を落として、
「ここは、やはりお仕置きはしなくてはなりませんね」
と、これから始まる「お仕置き」について宣言することにした。
「これでしまいじゃ」
彼女ーモリガンが作りだした極大の魔法球が私めがけて繰り出された。確かにこのくらいの魔法球だと、地面に着弾した場合、この辺り一帯が吹き飛ぶ可能性がある。もちろん、生身で食らえば無事では済まないだろう。
だがーー
私は、自らの髪の毛を1本抜くと、それに魔力を込め始めた。抜いた髪の毛がまるで1本の針のようにピンと立つ。次に、私は迫りくる魔法球を観察する。どんな魔法球にも、濃度勾配というものがあり、それゆえに「ツボ」となる部分は存在する。その「ツボ」の部分を突くことさえできればこちらのものだ。無力化することができる。
「はあああ!」
見えたーー!
私は迫りくる魔法球に自ら突っ込んでいった。そしてーー魔力の濃度のムラがある部分をめがけて、髪の毛を突き立てる。この髪の毛には、相手の魔力を相殺できる無力化の魔法を込めている。
つまり、「ツボ」となる部分を刺激し、そこから無力化の魔法を流し込んでやれば、この魔法球自体を消滅させることができるというわけだ。
パアアアン!!
風船が弾けたような音が辺りに響く。
狙い通り、私の髪の毛により「ツボ」を突かれた魔法球は、あっけなく拡散した。魔力自体を相殺し、中和できるので、周囲への影響もほとんどない。
「なに!?」
モリガンが驚きの表情をこちらに向ける。自分の魔法球がよもや消滅させられるとは夢にも思っていなかったのだろう。
「これで終わりですよ」
私は魔法球を無力化した勢いもそのままに、上空にいるモリガンめがけて飛び掛った。そして、今度は髪の毛を鞭のようにしならせて、彼女に一撃を食らわせる。
「がっ!!」
私の髪の毛に腹部を打たれて、モリガンがバランスを崩し、そのまま地面に叩きつけられるー前に、彼女の体に魔力を放ち、地面への衝突寸前で抑えた。さすがにこの高さから地面に叩きつけられたのでは無事では済まない。
私は、周囲に風魔法を展開しつつ、ゆっくりと地上へと降り立つと、息も絶え絶えな彼女に向き合った。
「く、お主、いったい何をしたのだ・・・?」
自分の魔法が破られたショックはあるようだが、それにもまして、どのようにして破られたのか、その理由が知りたいというところだろうか。
「私の武器はこちらになります~」
種明かしをすることにする。今となっては魔力を失い、ただ抜け落ちただけの1本の髪の毛を彼女に示した。
「か、髪の毛・・・じゃと!?」
私の髪の毛に、モリガンは目を丸くする。
「ええ、この髪の毛に相手の魔力を相殺する魔法を込めて、あなたの魔法球の「ツボ」を突いたのですよ」
「なんじゃと・・・」
私の暴露に、かなりショックを受けた様子だ。
「髪の毛1本に、わしは負けたというのか」
「そういうことになりますね~」
途端に、モリガンは「真っ白く」なった。「燃え尽きた」という感じだ。
「負けた・・・完全に」
髪の毛1本にすら敗れたということがよほどショックだったのか、頭からは湯気さえ上がっている・・・ように見える。
「ええい、このモリガン、魔女としての誇りくらいはあるわ!さっさととどめを刺すがよい」
もはや、抵抗する気もないのか、地面に両手両足を広げて仰向けになるモリガンを見て、
「その必要はありませんよ」
と、優しく告げた。彼女のそばに近寄り、抱き起すことにする。
「あなたの言い分もきちんと聞きましたから、これからコミュニティの皆さんのところへ行って事情を説明すればそれで済むことです。それに、あなたは悪い子ではなさそうですしね」
頭をなでてやる。この子はそんなに悪い子ではないはず。コミュニティの損害は、いくらか事情を説明して、こちらでも保障できる分は行う。何せ、この秋の領域はチーム《ユグドラシル》の属領だ。「双子の王」である私なら、ある程度のことは融通を利かせることもできる。
「なんじゃと・・・情けをかける気か」
「いえいえ、コミュニティの皆さんにも、もちろんモリガンちゃんにも仲直りしてもらうためです。モリガンちゃんも、いきなりコミュニティを壊すのではなく、勝手に森に入らないようにと、きちんと説明すればよかったのですよ」
私が優しく諭したのが功を奏したのか、モリガンがおとなしくなった。どうやら警戒心は解いてくれたようだ。
「ですが・・・、やはりコミュニティの皆さん多大なご迷惑をおかけしたし、さらには今もこの広場を吹き飛ばそうとしたりとか少しおイタが過ぎますね・・・」
私は笑顔は崩さず、しかし少し声を落として、
「ここは、やはりお仕置きはしなくてはなりませんね」
と、これから始まる「お仕置き」について宣言することにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
9
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる