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【お題】「この瓶の中に君の唾液を入れてもらえませんか?」
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「この瓶の中に君の唾液を入れてもらえませんか?」
差し出された小瓶を見て、相手の顔を見た。皺が刻まれた面にかかる白さが混じる髪。幼い頃から見続けてきたはずなのに、いつの間にかこれほどまでに年を重ねたのか、気付きもしなかった。だというのに、その顔を見る度に胸が締め付けられる。
「なんで?」
入社のための書類を書いている手を止め訊ねた。ばつの悪い表情を見せてくるようになったのは二年前からだ。
「……ダメですか?」
「いや、だから理由を言ってくれよ。それ使って何するつもり?」
「…………DNA鑑定……」
なんて愚かなんだ。
一笑に付し、立ち上がった。年相応に皺を刻んだ手を握り、リビングの隣にある和室へと引きずり込む。そこには仏壇が飾られ、今日も線香が焚かれ独特の匂いが家具にまで染み込んでいる。
その前に引きずり遺影に顔を向けるよう後ろから抱き、顎を掴んだ。
「あんたがどんなに否定しようだって、俺はあんたの子じゃねーよ。あの女が浮気してあんたに押しつけた、カッコウだよ」
「っ!自分の母親のことを悪く言うんじゃない……」
「で?DNA鑑定してあんたの遺伝子が一個も入ってないのを確かめてどうするつもりなんだ。こうされるのを拒めるとでも思ってるのかよ」
シャツの上から、この二年自分が育てた胸の尖りを抓む。憎い女が死んで五年も経つというのに、死に際に不倫相手の子を育てた愚か者だと罵られ嗤われたというのに、未だに想いを寄せているのが許せない。
……自分の方がずっとこの人を大事に想っているというのに。
父親が、本当の父ではないと知った瞬間、絶望よりも喜びが溢れ出た。禁忌がないのが嬉しくて、隙を覗った。二十歳の夜、酒を酌み交わし自分の前で泥酔するこの人を抱いたとき、やっと手に入れた高揚感に何度その中に蜜を吐き出しただろうか。
それから関係を続けているのに未だに拒もうとする臆病な養父が可愛くて……愛おしい。
だから分からせてやるのだ。どう足掻こうと、もう離さないのだと。
尖りを抓み乱暴に嬲っていく。堪えた声が次第に愉悦に変わり、トラウザーズの中の分身が形を変える。
「俺の顔、死んだあんたの親友とそっくりだろ。だから拒めないんだ」
もう両親がこの世にいないのを幸運と思うほど、自分の心はこの不器用な人だけにある。
ベルトを外し、前をはだければ胸の刺激だけで形を変えたものが飛び出した。優しく撫で蜜を零すまで育てる。
「こうされるの、本当は嬉しいんだろ。あいつのことが好きだったから……でももういないんだから俺でいいじゃねーか」
言葉とは裏腹に手つきはどこまでも甘く優しく刺激していく。そうされるのに弱いと知ってわざと焦らすと、涙を零しながら腰を揺らめかせてきた。拒んでいるのは、そぶりだけだ。すべてを理解して煽っていく。彼の背徳感と罪悪感を。そしてこの手を拒めなくさせる。
「俺は絶対あんたの戸籍から出て行かねーから……この家からも、あんたの中からも」
膝立ちにさせ解した蕾にいきり勃った欲望をねじ込んだ。
「ああっ!」
「あんたが死ぬまで、逃がさねーから」
容赦なく、愛しているフリをしている妻の遺影の前で抱きしめた。もうこの男は自分のだと見せしめるために。
差し出された小瓶を見て、相手の顔を見た。皺が刻まれた面にかかる白さが混じる髪。幼い頃から見続けてきたはずなのに、いつの間にかこれほどまでに年を重ねたのか、気付きもしなかった。だというのに、その顔を見る度に胸が締め付けられる。
「なんで?」
入社のための書類を書いている手を止め訊ねた。ばつの悪い表情を見せてくるようになったのは二年前からだ。
「……ダメですか?」
「いや、だから理由を言ってくれよ。それ使って何するつもり?」
「…………DNA鑑定……」
なんて愚かなんだ。
一笑に付し、立ち上がった。年相応に皺を刻んだ手を握り、リビングの隣にある和室へと引きずり込む。そこには仏壇が飾られ、今日も線香が焚かれ独特の匂いが家具にまで染み込んでいる。
その前に引きずり遺影に顔を向けるよう後ろから抱き、顎を掴んだ。
「あんたがどんなに否定しようだって、俺はあんたの子じゃねーよ。あの女が浮気してあんたに押しつけた、カッコウだよ」
「っ!自分の母親のことを悪く言うんじゃない……」
「で?DNA鑑定してあんたの遺伝子が一個も入ってないのを確かめてどうするつもりなんだ。こうされるのを拒めるとでも思ってるのかよ」
シャツの上から、この二年自分が育てた胸の尖りを抓む。憎い女が死んで五年も経つというのに、死に際に不倫相手の子を育てた愚か者だと罵られ嗤われたというのに、未だに想いを寄せているのが許せない。
……自分の方がずっとこの人を大事に想っているというのに。
父親が、本当の父ではないと知った瞬間、絶望よりも喜びが溢れ出た。禁忌がないのが嬉しくて、隙を覗った。二十歳の夜、酒を酌み交わし自分の前で泥酔するこの人を抱いたとき、やっと手に入れた高揚感に何度その中に蜜を吐き出しただろうか。
それから関係を続けているのに未だに拒もうとする臆病な養父が可愛くて……愛おしい。
だから分からせてやるのだ。どう足掻こうと、もう離さないのだと。
尖りを抓み乱暴に嬲っていく。堪えた声が次第に愉悦に変わり、トラウザーズの中の分身が形を変える。
「俺の顔、死んだあんたの親友とそっくりだろ。だから拒めないんだ」
もう両親がこの世にいないのを幸運と思うほど、自分の心はこの不器用な人だけにある。
ベルトを外し、前をはだければ胸の刺激だけで形を変えたものが飛び出した。優しく撫で蜜を零すまで育てる。
「こうされるの、本当は嬉しいんだろ。あいつのことが好きだったから……でももういないんだから俺でいいじゃねーか」
言葉とは裏腹に手つきはどこまでも甘く優しく刺激していく。そうされるのに弱いと知ってわざと焦らすと、涙を零しながら腰を揺らめかせてきた。拒んでいるのは、そぶりだけだ。すべてを理解して煽っていく。彼の背徳感と罪悪感を。そしてこの手を拒めなくさせる。
「俺は絶対あんたの戸籍から出て行かねーから……この家からも、あんたの中からも」
膝立ちにさせ解した蕾にいきり勃った欲望をねじ込んだ。
「ああっ!」
「あんたが死ぬまで、逃がさねーから」
容赦なく、愛しているフリをしている妻の遺影の前で抱きしめた。もうこの男は自分のだと見せしめるために。
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