ツイノベ置き場

椎名サクラ

文字の大きさ
上 下
54 / 79

【お題】「しば……いぬ?」

しおりを挟む
「しば……いぬ……?」

「そう、柴犬」

のしかかってくる男が嬉しそうに話す。

「君は似ているね。気まぐれでちっとも構ってくれないのに、こちらが見ていないときにじっと見つめてくるところ。なのに目を合わせた途端に怒り出すんだ」

クスクスと笑いながら服に手を伸ばされた。ボタンを一つ一つ丁寧に外されては、恥ずかしさが募り顔を背けてしまう。

「今の仕草もそっくりだ」

「違う……べつにそういうんじゃ……」

「そうかな?今から君の身体にいやらしいことをしようとしているのに、興味のないフリをして受け入れて、後で怒るんだ」

その通りで、唇を噛んで顔を背けた。

本当は、嬉しい。同時に、恥ずかしい。二つが綯い交ぜになって行き場を失って、怒りで隠す。貴方が好きだと叫びたい気持ちを。

カリッと唇を噛んで視線彷徨わせた。

彼の部屋の調度はもう嫌と言うほど見て覚えてしまうほど、こんな風に視線を逸らしてはこの身を任せる。貪るだけ愉悦を貪って、愛されているんだと何度もその熱を確かめて、だが突然やってくる羞恥心に襲われて思ってもいないことを口走ってしまうんだ。毎回、毎回。

そんな自分が恥ずかしくてまた、視線を彷徨わせた。

「ふっ、君のそういう所が可愛くて、どんどんのめり込んでしまうんだ」

「……物好き」

「そうだね。おかしいのはわかっているよ、でも君を手放せないんだ」

「あっ」

「猫みたいに冷たい態度を取るのに、尻尾だけは好きだ好きだと思い切り振ってくれるんだ。一度でも知ってしまったら溺れずにはいられない」

気持ちいいことを繰り返され、自然と腰が揺れてしまう。そう、淫らに、彼にだけ。肌に何度も唇が落とされ刻印が刻まれる。彼の物だと、彼だけの物だと。

この瞬間が好きだと言えば、もう飽きて捨てられてしまうだろうか。

それが怖くて本音を口に出すことができず、ただ身体だけで彼への愛情を訴えた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...