ツイノベ置き場

椎名サクラ

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【お題】「こんなの初めて」

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頭が重い。

僅かに吐き気にむかつきを覚えながら目を覚ました。

「んっんっ」

抑えた甘い声が薄暗い部屋の中で大きく聞こえてくる。大きな窓から入ってくる街の灯りに、揺れる痩身が映し出される。

なんだ……、これは。

腕を動かせばシャランと涼しげな金属音が鳴り、痩身は動きを止めた。

「お……きたの?」

答えないでいれば荒い呼吸音が引っ込み、次に鼻を啜る音がし始めた。

「ごめんなさい……ごめんなさいっ」

両手で顔を隠し、だというのに細い腰は我慢できずに揺らめいている。濡れた音が隙間なく繋がっている場所から立ち、ギュッと欲望が心地よい締め付けを味わい、今どうなっているのかを把握する。

「あっあ……ごめんなさ……止まらなっ!」

顔を隠したまま、腰だけが艶めかしく動いていく。唇は謝罪の合間に心地よい嬌声を上げるのを見ているしかなかった。

なぜ自分がこの部屋のベッドに横たわっているのか、なぜ見知らぬ彼に乗られているのか、何一つ理解できないが、本能は細腰を乱暴に掴み下から突き上げたかった。両手がベッドヘッドに拘束されていなければ。

平たい胸元、へこんだ腹。そして、自分のよりもずっと小ぶりの分身が揺れているのを目の当たりにしているのに、萎えるどころか熱情が身体を駆け巡っていく。

ああ、乱暴に突き上げたい。

こんな緩やかな動きでは達けやしない。

その身体を押さえつけて思うままに腰を振りたい。

目が覚めたばかりの働かない頭の中が情欲に満たされていく……同性相手に。

「はっ、こんなの初めて……だな」

「ごめんなさっ……ひぃっ!うごかさないで……あっあっ!」

堪らず腰を跳ね上げれば細い手が顔を隠せなくなり、逞しい腹筋に両手を突いた。少しでも腰を浮き上がらせて逃げようとしている。

「なぜだ?こうして欲しかったのだろう。手を外してくれたら君が想像する以上に悦ばせられるが、どうする?」

もう一度突き上げてやり、それから動かずにいると、痩身は涙を溜めた目で見つめてきた。悲壮な表情に自然と口角が上がる。

嬲りがいのありそうな青年だ。

一度味わった強烈な快楽を忘れられないのか、しばらく逡巡すると、身体を伸ばして手首を拘束しているバンドを外した。

すかさず細い腰を掴み、思いのままに突き上げた。しなやかな背が仰け反り、声を抑えられなくなり啼く人形と変わるまで時間はかからない。乱暴に愉悦を与え貪り、窓の向こうが白ける頃にようやく放した痩身の青年をまじまじと見た。

とりわけ美しくもない平凡な容姿だというのに、眦に溜まった涙に胸が締め付けられる。

一晩で恋に落ちたということか。

「こんなの初めて、だ」

指で涙を拭い、気を失い僅かに開いた唇に己のを押し当てた。
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