ツイノベ置き場

椎名サクラ

文字の大きさ
上 下
49 / 79

【お題】「こんなの初めて」

しおりを挟む
頭が重い。

僅かに吐き気にむかつきを覚えながら目を覚ました。

「んっんっ」

抑えた甘い声が薄暗い部屋の中で大きく聞こえてくる。大きな窓から入ってくる街の灯りに、揺れる痩身が映し出される。

なんだ……、これは。

腕を動かせばシャランと涼しげな金属音が鳴り、痩身は動きを止めた。

「お……きたの?」

答えないでいれば荒い呼吸音が引っ込み、次に鼻を啜る音がし始めた。

「ごめんなさい……ごめんなさいっ」

両手で顔を隠し、だというのに細い腰は我慢できずに揺らめいている。濡れた音が隙間なく繋がっている場所から立ち、ギュッと欲望が心地よい締め付けを味わい、今どうなっているのかを把握する。

「あっあ……ごめんなさ……止まらなっ!」

顔を隠したまま、腰だけが艶めかしく動いていく。唇は謝罪の合間に心地よい嬌声を上げるのを見ているしかなかった。

なぜ自分がこの部屋のベッドに横たわっているのか、なぜ見知らぬ彼に乗られているのか、何一つ理解できないが、本能は細腰を乱暴に掴み下から突き上げたかった。両手がベッドヘッドに拘束されていなければ。

平たい胸元、へこんだ腹。そして、自分のよりもずっと小ぶりの分身が揺れているのを目の当たりにしているのに、萎えるどころか熱情が身体を駆け巡っていく。

ああ、乱暴に突き上げたい。

こんな緩やかな動きでは達けやしない。

その身体を押さえつけて思うままに腰を振りたい。

目が覚めたばかりの働かない頭の中が情欲に満たされていく……同性相手に。

「はっ、こんなの初めて……だな」

「ごめんなさっ……ひぃっ!うごかさないで……あっあっ!」

堪らず腰を跳ね上げれば細い手が顔を隠せなくなり、逞しい腹筋に両手を突いた。少しでも腰を浮き上がらせて逃げようとしている。

「なぜだ?こうして欲しかったのだろう。手を外してくれたら君が想像する以上に悦ばせられるが、どうする?」

もう一度突き上げてやり、それから動かずにいると、痩身は涙を溜めた目で見つめてきた。悲壮な表情に自然と口角が上がる。

嬲りがいのありそうな青年だ。

一度味わった強烈な快楽を忘れられないのか、しばらく逡巡すると、身体を伸ばして手首を拘束しているバンドを外した。

すかさず細い腰を掴み、思いのままに突き上げた。しなやかな背が仰け反り、声を抑えられなくなり啼く人形と変わるまで時間はかからない。乱暴に愉悦を与え貪り、窓の向こうが白ける頃にようやく放した痩身の青年をまじまじと見た。

とりわけ美しくもない平凡な容姿だというのに、眦に溜まった涙に胸が締め付けられる。

一晩で恋に落ちたということか。

「こんなの初めて、だ」

指で涙を拭い、気を失い僅かに開いた唇に己のを押し当てた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

男子学園でエロい運動会!

ミクリ21 (新)
BL
エロい運動会の話。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

処理中です...