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高校時代に好きだった人と社会人になって再会した話
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高校の修学旅行。
受けは密かに好きだった友人の攻めを含めたグループで行動。
みんな好き勝手行ってしまって受けと攻めが取り残された。
「二人で回ろうか」
苦笑する攻めは穏やかで余裕があって同じ年なのにカッコよかった。
攻めと二人きりでいられるのが嬉しくてあちこち回った。
集合前、立ち寄った店でお互いが気に入った物をお揃いで買った。
好きな人とお揃いなのが嬉しくて受けは密かに舞い上がった。
二人きりになれたのはそれが最後だったが、とてもいい思い出だった、時折夢に見るくらいに。
社会人になってもう同窓会でしか攻めに会うことがなくなったが
それを大事に持っていた。
ある時、専門的アドバイザーとして職場に攻めがやってきた。
会議でのやり取りに専門家として可否を告げるというものだった。
相変わらずクールで凛としていて、自分が好きになったまま大人になった攻めの姿に、思い出に収納したはずの恋心が復活した。
仕事での格好良さを知れば知るほど気持ちが昂っていた。
ひとり暮らしの引き出しの中にちょこんと置いてある修学旅行お土産、きっともうお揃いではないだろうそれを取り出して見る機会が増えた。
同時に攻めを想って後ろを慰める機会も。
後ろめたさに攻めの顔が日に日に見られなくなって、目も合わせなくなった。
「俺、何かしたか?」
「なにが?」
攻めに訊かれてドキリとした。
慌てて取り繕うが上手くできたか不安だった。
もっと自然にしないとと考えればそれだけギクシャクとしてしまう。
本当はもっとそばにいたいのに、気持ちを知られてしまうのが怖い。
距離感がわからなくなった受けはずっと見ていたいけどそばにいたくないと相反する気持ちを抱く。
仕事ばかり順調に進んでいき、とうとう企画は社長決済を通り、攻めが会社に来なくなった。
自分があーでもないこーでもないと思いあぐねていたせいだと落ち込んだ。
また会えなくなるだけなのに、動けなくなるまで肥大してしまった恋心は心の殆どを占拠してしまっている。
『お前のことずっと好きで、修学旅行で買ったお揃いのお土産、今でも大事に持ってるんだ』
たったこれだけの言葉、なのに言えないまま打ち上げの飲み会が終わってしまい、気がついたら攻めの姿は会場から消えていた。
無理矢理先輩から誘われた二次会をなんとか抜け出して家に着けば、玄関前に攻めがいた。
「大事な話があるんだ、入れてくれないか?」
真剣なその顔に頷いて招き入れたから「しまった!」と思った。
昨夜使った道具が洗ったあと、出しっぱなしになっている!!
慌てて回収しようとするより先に攻めに見つかってしまう。
「受けって彼女いるのか?」
「ちが、いやそれはっ!」
「もしかして……自分で使ってるの?」
「違うこれは肩こり解消に……」
どう考えてもディルドが肩こり解消に役立つわけがない。
「そんなに辛いのか、なら肩もんでやるよ」
ベッドに横になって肩を揉まれて気持ちよくて変な声とか出ちゃって全身マッサージになってから色んなところ触られて気がつけばディルドは昨夜と同じ場所に入って受けを悦ばせる。
「も……いったからぁむりつ!」
啼き声をあげる受けは興奮した攻めに抱かれてしまう。
中にたっぷりと出される頃には意識も朦朧としてしまう。
攻めが何か言ってわけがわからないまま頷いた。
それから攻めは週末ごとに受けの部屋に来ては当たり前のように抱いていく。
言葉少なに、本当に行為だけ。
セフレのようだ。
(そっか……俺、攻めとセフレになったんだ)
それでも良かった。
好きな人に抱かれる、それだけで悦んだ。
三ヶ月ほどそんな関係が続き、会えばほとんどの時間をベッドで過ごした。
「なあ、お前って俺のことどう思ってるんだ?」
やったあとのタバコをくゆらせて攻めが訊いてきた。
いつもよりもあっさりで、小休憩が終わったら狂うくらいされるんだと身構えていた受けは驚いた。
「どうしたんだよ突然……」
口の中が乾いた。
「そういえば聞いてないと思って」
灰皿代わりの空き缶にタバコを落として覆い被さってきた。
受けは答えられなかった。
セフレでも嬉しいと思うくらい好きだと言ったら絶対に引かれる。
軽くパニックになった受けは「別に何も……」と気持ちと正反対のことを口にする。
「へぇ……抱いてくれるなら誰でもいいってことか……」
「ちがっ、そんなこと言ってない!!」
「じゃあどういう気持ちなんだ?」
好きと言っていいのだろうか……答えあぐねてると嘆息して攻めが「もういい」と帰っていってしまった。
そして翌週から来なくなった。
受けは慌てた。
でもセフレの自分が来なかったからと連絡したら気を悪くするんじゃないかと電話もできなかった。
悶々としていると同僚が慌ててフロアにやってきた。
攻めが事故にあって入院していると聞いて、受けは慌てて病院に走っていった。
ベッドで寝ている攻めを見つけて泣いた。
もっと気持ちを伝えればよかった。
もう会えなくなるならちゃんと好きだって言えばよかった。
後悔は口に出てしまっていたが、パニックになっている受けは気づかない。
「……勝手に殺すな」
攻めが目を開けた。
だがあちらこちらに包帯が巻かれてて本当に重症なのに手を伸ばそうとしてすごく痛がってる。
「動くな、動くと死ぬぞ!」
「死なないって……せっかく好きなやつに告白されたのに死ねるか」
「あ……本命が来たんだ……そっか……」
「……お前いい加減にしろよ、この流れでどうしてそうなるんだ」
受けは聞こえてなかったが、告白されたらしい。
「付き合おう」と言われ頷いた、らしい。
「セフレだって思ってた……」
「そんな軽いやつに思われてたんだ……ショックで死にそうだ」
「だってお前高校のときからモテて……」
「否定しないが、お前を好きになってからは誰とも付き合ってない。あー、やっぱり修学旅行のときに告白しておけばよかった……せっかく二人きりになれるように画策したのに」
偶然だと思っていた思い出は偶然じゃなかったのかと驚く。
「お揃いの土産で舞い上がってたんだよな」
「……覚えてたんだ」
「当たり前だろ。今だって肌見放さず持っている」
信じられなくて顔を真っ赤にして「俺も大事にしてた」ていえば攻めはニヤリと笑い「知ってる。お前の部屋で見つけたから」
引き出しの中に入れてるそれを見られたのかとさらに赤くなった。
「素直にいわなかった罰として、しばらく面倒見てくれ……怪我が治るまででいいから」
それから甲斐甲斐しく病院に通って、退院してからも攻めの部屋に行っては不自由がないようにあれこれして……なぜか攻めの家に自室ができ、半分住んでる形になり、完治したら強引に同居に持ち込まれてしまうがそれも悪くないと、同じお土産が並んで置かれた玄関を見ては思うのだった。
その後、まさか会社を辞めさせられて囲われて、穏やかな顔に見合わない少しハードな指令に付き合わされるなんて、そのときの受けは知らないのであった。
おしまい
受けは密かに好きだった友人の攻めを含めたグループで行動。
みんな好き勝手行ってしまって受けと攻めが取り残された。
「二人で回ろうか」
苦笑する攻めは穏やかで余裕があって同じ年なのにカッコよかった。
攻めと二人きりでいられるのが嬉しくてあちこち回った。
集合前、立ち寄った店でお互いが気に入った物をお揃いで買った。
好きな人とお揃いなのが嬉しくて受けは密かに舞い上がった。
二人きりになれたのはそれが最後だったが、とてもいい思い出だった、時折夢に見るくらいに。
社会人になってもう同窓会でしか攻めに会うことがなくなったが
それを大事に持っていた。
ある時、専門的アドバイザーとして職場に攻めがやってきた。
会議でのやり取りに専門家として可否を告げるというものだった。
相変わらずクールで凛としていて、自分が好きになったまま大人になった攻めの姿に、思い出に収納したはずの恋心が復活した。
仕事での格好良さを知れば知るほど気持ちが昂っていた。
ひとり暮らしの引き出しの中にちょこんと置いてある修学旅行お土産、きっともうお揃いではないだろうそれを取り出して見る機会が増えた。
同時に攻めを想って後ろを慰める機会も。
後ろめたさに攻めの顔が日に日に見られなくなって、目も合わせなくなった。
「俺、何かしたか?」
「なにが?」
攻めに訊かれてドキリとした。
慌てて取り繕うが上手くできたか不安だった。
もっと自然にしないとと考えればそれだけギクシャクとしてしまう。
本当はもっとそばにいたいのに、気持ちを知られてしまうのが怖い。
距離感がわからなくなった受けはずっと見ていたいけどそばにいたくないと相反する気持ちを抱く。
仕事ばかり順調に進んでいき、とうとう企画は社長決済を通り、攻めが会社に来なくなった。
自分があーでもないこーでもないと思いあぐねていたせいだと落ち込んだ。
また会えなくなるだけなのに、動けなくなるまで肥大してしまった恋心は心の殆どを占拠してしまっている。
『お前のことずっと好きで、修学旅行で買ったお揃いのお土産、今でも大事に持ってるんだ』
たったこれだけの言葉、なのに言えないまま打ち上げの飲み会が終わってしまい、気がついたら攻めの姿は会場から消えていた。
無理矢理先輩から誘われた二次会をなんとか抜け出して家に着けば、玄関前に攻めがいた。
「大事な話があるんだ、入れてくれないか?」
真剣なその顔に頷いて招き入れたから「しまった!」と思った。
昨夜使った道具が洗ったあと、出しっぱなしになっている!!
慌てて回収しようとするより先に攻めに見つかってしまう。
「受けって彼女いるのか?」
「ちが、いやそれはっ!」
「もしかして……自分で使ってるの?」
「違うこれは肩こり解消に……」
どう考えてもディルドが肩こり解消に役立つわけがない。
「そんなに辛いのか、なら肩もんでやるよ」
ベッドに横になって肩を揉まれて気持ちよくて変な声とか出ちゃって全身マッサージになってから色んなところ触られて気がつけばディルドは昨夜と同じ場所に入って受けを悦ばせる。
「も……いったからぁむりつ!」
啼き声をあげる受けは興奮した攻めに抱かれてしまう。
中にたっぷりと出される頃には意識も朦朧としてしまう。
攻めが何か言ってわけがわからないまま頷いた。
それから攻めは週末ごとに受けの部屋に来ては当たり前のように抱いていく。
言葉少なに、本当に行為だけ。
セフレのようだ。
(そっか……俺、攻めとセフレになったんだ)
それでも良かった。
好きな人に抱かれる、それだけで悦んだ。
三ヶ月ほどそんな関係が続き、会えばほとんどの時間をベッドで過ごした。
「なあ、お前って俺のことどう思ってるんだ?」
やったあとのタバコをくゆらせて攻めが訊いてきた。
いつもよりもあっさりで、小休憩が終わったら狂うくらいされるんだと身構えていた受けは驚いた。
「どうしたんだよ突然……」
口の中が乾いた。
「そういえば聞いてないと思って」
灰皿代わりの空き缶にタバコを落として覆い被さってきた。
受けは答えられなかった。
セフレでも嬉しいと思うくらい好きだと言ったら絶対に引かれる。
軽くパニックになった受けは「別に何も……」と気持ちと正反対のことを口にする。
「へぇ……抱いてくれるなら誰でもいいってことか……」
「ちがっ、そんなこと言ってない!!」
「じゃあどういう気持ちなんだ?」
好きと言っていいのだろうか……答えあぐねてると嘆息して攻めが「もういい」と帰っていってしまった。
そして翌週から来なくなった。
受けは慌てた。
でもセフレの自分が来なかったからと連絡したら気を悪くするんじゃないかと電話もできなかった。
悶々としていると同僚が慌ててフロアにやってきた。
攻めが事故にあって入院していると聞いて、受けは慌てて病院に走っていった。
ベッドで寝ている攻めを見つけて泣いた。
もっと気持ちを伝えればよかった。
もう会えなくなるならちゃんと好きだって言えばよかった。
後悔は口に出てしまっていたが、パニックになっている受けは気づかない。
「……勝手に殺すな」
攻めが目を開けた。
だがあちらこちらに包帯が巻かれてて本当に重症なのに手を伸ばそうとしてすごく痛がってる。
「動くな、動くと死ぬぞ!」
「死なないって……せっかく好きなやつに告白されたのに死ねるか」
「あ……本命が来たんだ……そっか……」
「……お前いい加減にしろよ、この流れでどうしてそうなるんだ」
受けは聞こえてなかったが、告白されたらしい。
「付き合おう」と言われ頷いた、らしい。
「セフレだって思ってた……」
「そんな軽いやつに思われてたんだ……ショックで死にそうだ」
「だってお前高校のときからモテて……」
「否定しないが、お前を好きになってからは誰とも付き合ってない。あー、やっぱり修学旅行のときに告白しておけばよかった……せっかく二人きりになれるように画策したのに」
偶然だと思っていた思い出は偶然じゃなかったのかと驚く。
「お揃いの土産で舞い上がってたんだよな」
「……覚えてたんだ」
「当たり前だろ。今だって肌見放さず持っている」
信じられなくて顔を真っ赤にして「俺も大事にしてた」ていえば攻めはニヤリと笑い「知ってる。お前の部屋で見つけたから」
引き出しの中に入れてるそれを見られたのかとさらに赤くなった。
「素直にいわなかった罰として、しばらく面倒見てくれ……怪我が治るまででいいから」
それから甲斐甲斐しく病院に通って、退院してからも攻めの部屋に行っては不自由がないようにあれこれして……なぜか攻めの家に自室ができ、半分住んでる形になり、完治したら強引に同居に持ち込まれてしまうがそれも悪くないと、同じお土産が並んで置かれた玄関を見ては思うのだった。
その後、まさか会社を辞めさせられて囲われて、穏やかな顔に見合わない少しハードな指令に付き合わされるなんて、そのときの受けは知らないのであった。
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