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村を追い出された兎が猫を拾って番の誓いを交わす話
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しんしんと降りしきる雪の中、セラヴィはフラフラと村の外を彷徨った。
行く当てなんてない。
兎族特有の長い耳が寒さにかじかみ先が痛くなってくる。
白い雪に溶け込む保護色は、一層寒さを強くさせるように思える。
「痛いなぁ」
兄弟たちから虐げられるのには慣れていたが、今日は食料を探し出すことができなかったセラヴィに、とうとう手と足が出た。
しかも村の仲間が見ている中で。
『でていけーっ!』
その声が耳から離れなくて、身体の痛みと一緒に心までが痛くて今にも倒れてしまいそうだ。
村から出てどこに行こうか……行く当てなんてありはしない。
それでも寒い地域特有の豊かな被毛は寒さから身を守ってはくれるが、それだって限界はある。
どこか、せめて風をしのげる場所はあるだろうか。
だが雪深く一年の半分が雪に覆われているここでは、風をしのげる場所は少ない。
「どうしよう……」
涙すらも凍り付くほどの寒さの中途方に暮れた。
セラヴィはギュッとあまり脂肪のない身体を抱きしめて、なるべく泣かないようグッと感情を堪えた。
フラフラと行くあてもなく彷徨い、針葉樹が立ち並ぶ森の中をあてもなくさまよい歩く。
その時だった、白ばかりの世界の中で茶色と黒の色合いが目に付いた。
「……ごはん、かな?」
木の皮が残っているかと近づけば、随分と背が低くて驚いた。
「……あれ?」
じっと見れば木ではなかった。
「大丈夫?」
近づいて訊ねたのは、こんな山奥に入ってくるのはセラヴィの一族以外はない。
もっと麓の雪の穏やかな所には多くの種族が住んでいるが、ここへやってくることはない。
「迷子?」
声をかけたら豊かな被毛がこちらを向いた。
「ぁ……」
顔の半分が雪に覆われているその姿に驚いた。
慌てて雪を払い、木の陰へと連れ込む。
「ここの方が雪を避けられるよ……どうしたの、帰れないの?」
山に入ってくる他種族はほとんどが遊びで入ってきては帰り道を見失ってしまうのだ。
これほどまで雪が降りしきると足跡が消えてしまい、皆途方に暮れてそのまま雪に埋もれて死んでしまうのだ。
それを見つけるのもセラヴィが所属する兎族の役目だ。
けれど今、迷い人がいるとはいえ村に帰ることができない。
そして、こんなにも雪が降りしきる中ではいくらセラヴィでも山を下りて入り口まで導くことはできなかった。
半分も雪にまみれた姿ではこのまま凍えて死んでしまう。
けれど村には帰れない。
(そうだ!あそこがいい!)
セラヴィは相手の手を引いて以前ちらりと見た木まで引っ張って行った。
「今日中に家に帰りたいかもしれないけど、ごめんね。この雪じゃ山を下りたら危ないんだ。今日はここで夜を過ごそう」
針葉樹の大きな古木には穴が空いており、雪風を凌ぐのにぴったりだ。
「……入っていいのか、お前の家じゃないのか?」
「俺の家じゃないよ……入ろう、寒いだろう」
セラヴィよりも大きな身体の彼を先に入れないと二人で入ることはできない。
早く早くと急かして大きな身体を穴の中に押し込めると、セラヴィもチョコンと彼の腹に包まれるように穴の中へと入っていった。
「良かったら食べて。冬にだけ生えてる木の実」
隠し持っていた木の実を出せば彼は手を伸ばし……すぐにセラヴィの手の中にそれを戻した。
「どうしたの、食べないの?これはね、俺だけが知ってる場所にあるんだ。珍しいんだぞ、冬にしか生えない実なんだ」
「そうか。ならお前が食べればいい。私はいらない」
「そう?もったいないな」
セラヴィは木の実をもぐもぐと食べたが、あまり腹はいっぱいにならなかった。
もう一個食べるには雪がいつ止むかもわからないから今は我慢だ、
「お前は家に帰らないのか」
「うん……帰れないんだ」
笑って言おうと思ったのに、どうしても涙が滲んでしまう。
未だに殴り蹴られた身体が痛みを訴えている。
みそっかす、出来損ない、お前と家族だってのが恥ずかしい、なんで死なないんだよ。
そんなことを言われて心までも傷んだ。
誰も助けてくれなかったのが余計に辛くて、行く当てもないのに村から出るしかなかった。
雪が溶けて少し冷たくなった被毛がセラヴィの頬を擽る。
まるで泣くなと言っているようでそっと身体を預ける。
自分よりもずっと大きな個体の彼はそれに文句を言わなかった。
ギュッとセラヴィを抱きしめるように身体に手を回してくれた。
雪国で遭難すればこうして身を寄せ合い互いに温め合うのは当たり前なのに、どうして兄弟は自分と寝てくれないのだろうと、今更寂しくなった。
「どうして帰れないんだ?」
「……みそっかすらから、餌をちゃんととってこないからって……追い出されたんだ」
「そうか」
彼はそれ以上追求してこなかった。
たださっきよりも少しだけ強い力でセラヴィを抱きしめてくれた。
ふわふわの被毛が心地よい。
細く細かい毛のせいで温かさが残り二人の間で心地よい熱源となっている。
心地よくなってもっと彼に身体を預けようとして、「いたっ」と悲鳴を上げた。
「どうしたんだ」
「うん、大丈夫……いつものことだから」
「痛いのがいつものことなのか?」
「うん……兄弟に殴られたり蹴られたり……でもしょうがないんだ。だってみそっかすだから、ちゃんと役に立たないから……」
しょうがないと笑おうとして失敗した。
彼はそんなセラヴィを包み込むように抱きしめてくれた。頬を寄せ被毛を擦り合わせた。
「どうした、泣いているのか?」
「なっ、泣くわけないだろ!」
兎族が泣き虫だなんて思われたらまた兄弟に殴られる。
それに初めて会った人の前でみっともないと慌てて浮かんだ涙を瞬きで散らした。
「そうか……お前はどこに住んでいるんだ?」
「ここに近い村だよ。でも今日まで、かな?」
あははと笑って散らしたばかりの涙がまた集まってくる。
自分が情けなくて笑って誤魔化そうとするのを察したのか、彼は話題を変えた。
自分が住んでいる場所の話をするが、山を下りたことのないセラヴィには物珍しかった。
「もっと話してくれよ。いいなぁお前の住んでるところ」
キラキラと絵本の中の世界はセラヴィを魅了した。
雪しかなく食料も見つけるのが困難なこんな山奥よりもずっと温かそうだ。
家も人々も。
彼は色んな話をしてくれた。
セラヴィは温かい被毛に包まれたままそれを聞いて、勝手に夢想した。
暖炉のある温かい家、美味しいご飯が並んだテーブル、たくさんの兄弟たちに見たこともないプレゼントの数々。
同じ空間にいるだけで幸せがそこかしこからやってきそうで、ほんの少しでもいいから自分もその中にいたいと思った。
同時に目を開くと寒々とした現実が目の前に吹き荒れていた。
白一色の世界は陽光を失えば、ただ恐ろしいだけの景色でしかなかった。
暗闇の中で僅かにチラリチラリと雪の陰が確認できるだけ。
それにゴーッと恐ろしい風の音が覆い被さる。
厳しいばかりの山の中。
彼が語るものは何一つ存在しなかった。
当たり前のようにある、母の愛すら。
「いいな、俺もその中に混じりたい……」
「どうしてだ?お前だって凄いじゃないか。こんな穴を知っているし、冬しか実らない木の実のありかも知っている」
「でも……誰も俺のこと愛してくれない」
ポロポロ、現実に目をやった途端、セラヴィは涙を零した。
涙は顔を塗らし被毛まで塗らしていく。
呼吸でなく気配を察した彼はセラヴィの顔を豊かな被毛に埋めさせた。
「そんなに泣くな。お前を愛してくれる誰かが現れる」
「いないよ、そんなの……誰も」
押し殺した泣き声に彼は背中をそっと撫で始めた。
優しい手つきに心が弱くなって余計涙が溢れ出る。
「なんで誰も愛してくれないの?おればっかりどうして……」
「泣くな、泣くな……。私はそんなお前を愛しているぞ」
「うそっ……だって会ったばかりだろう。そんな嘘いらないっ!」
「嘘じゃない。なら誓おう。お前を私の番にしよう」
「……つがい?」
「そうだ、番の誓いをするぞ」
彼はセラヴィの身体を反転させると、鼻水で濡れた鼻に自分のをくっつけてきた。
それから頭を少し傾けて唇同士をぶつけた。
「これでお前は私の番だ。これからはずっと二人一緒だ」
「……そう、なの?」
「ああ。番だからな。毎晩こうやって抱き合おう」
彼は豊かな被毛の中にセラヴィを閉じ込めた。
今までにないほど温かくて、セラヴィも彼に腕を回して「うん、うん。離れないで」とせがんだ。
「当たり前だろう」
彼はそう言ってセラヴィを抱きしめてくれた。
腕の中は温かくて心地よくて、セラヴィはそのままうとうとした。
「ずっと一緒にいてくれ」
そう言って、スッと眠りの中に入っていった。
「ああ、ずっと一緒だ」
その声がとても心地よくて、肺いっぱいにその匂いを吸い込んだ。
けれど、目を覚ましたときセラヴィは一人だった。
木の穴には他に誰もいなくて、自分はとても優しい夢を見たんだと忘れることにした。
心地よい優しい記憶は、いつだって今を助けてはくれないから。
おしまい
*************************
本作は、現在Kindleで発行しております「ねこうさアンソロジー」に寄稿した話の過去編となっております。
気になる方は、「椎名サクラ」または「兎騎かなで」のX(Twitter)をご確認ください。
行く当てなんてない。
兎族特有の長い耳が寒さにかじかみ先が痛くなってくる。
白い雪に溶け込む保護色は、一層寒さを強くさせるように思える。
「痛いなぁ」
兄弟たちから虐げられるのには慣れていたが、今日は食料を探し出すことができなかったセラヴィに、とうとう手と足が出た。
しかも村の仲間が見ている中で。
『でていけーっ!』
その声が耳から離れなくて、身体の痛みと一緒に心までが痛くて今にも倒れてしまいそうだ。
村から出てどこに行こうか……行く当てなんてありはしない。
それでも寒い地域特有の豊かな被毛は寒さから身を守ってはくれるが、それだって限界はある。
どこか、せめて風をしのげる場所はあるだろうか。
だが雪深く一年の半分が雪に覆われているここでは、風をしのげる場所は少ない。
「どうしよう……」
涙すらも凍り付くほどの寒さの中途方に暮れた。
セラヴィはギュッとあまり脂肪のない身体を抱きしめて、なるべく泣かないようグッと感情を堪えた。
フラフラと行くあてもなく彷徨い、針葉樹が立ち並ぶ森の中をあてもなくさまよい歩く。
その時だった、白ばかりの世界の中で茶色と黒の色合いが目に付いた。
「……ごはん、かな?」
木の皮が残っているかと近づけば、随分と背が低くて驚いた。
「……あれ?」
じっと見れば木ではなかった。
「大丈夫?」
近づいて訊ねたのは、こんな山奥に入ってくるのはセラヴィの一族以外はない。
もっと麓の雪の穏やかな所には多くの種族が住んでいるが、ここへやってくることはない。
「迷子?」
声をかけたら豊かな被毛がこちらを向いた。
「ぁ……」
顔の半分が雪に覆われているその姿に驚いた。
慌てて雪を払い、木の陰へと連れ込む。
「ここの方が雪を避けられるよ……どうしたの、帰れないの?」
山に入ってくる他種族はほとんどが遊びで入ってきては帰り道を見失ってしまうのだ。
これほどまで雪が降りしきると足跡が消えてしまい、皆途方に暮れてそのまま雪に埋もれて死んでしまうのだ。
それを見つけるのもセラヴィが所属する兎族の役目だ。
けれど今、迷い人がいるとはいえ村に帰ることができない。
そして、こんなにも雪が降りしきる中ではいくらセラヴィでも山を下りて入り口まで導くことはできなかった。
半分も雪にまみれた姿ではこのまま凍えて死んでしまう。
けれど村には帰れない。
(そうだ!あそこがいい!)
セラヴィは相手の手を引いて以前ちらりと見た木まで引っ張って行った。
「今日中に家に帰りたいかもしれないけど、ごめんね。この雪じゃ山を下りたら危ないんだ。今日はここで夜を過ごそう」
針葉樹の大きな古木には穴が空いており、雪風を凌ぐのにぴったりだ。
「……入っていいのか、お前の家じゃないのか?」
「俺の家じゃないよ……入ろう、寒いだろう」
セラヴィよりも大きな身体の彼を先に入れないと二人で入ることはできない。
早く早くと急かして大きな身体を穴の中に押し込めると、セラヴィもチョコンと彼の腹に包まれるように穴の中へと入っていった。
「良かったら食べて。冬にだけ生えてる木の実」
隠し持っていた木の実を出せば彼は手を伸ばし……すぐにセラヴィの手の中にそれを戻した。
「どうしたの、食べないの?これはね、俺だけが知ってる場所にあるんだ。珍しいんだぞ、冬にしか生えない実なんだ」
「そうか。ならお前が食べればいい。私はいらない」
「そう?もったいないな」
セラヴィは木の実をもぐもぐと食べたが、あまり腹はいっぱいにならなかった。
もう一個食べるには雪がいつ止むかもわからないから今は我慢だ、
「お前は家に帰らないのか」
「うん……帰れないんだ」
笑って言おうと思ったのに、どうしても涙が滲んでしまう。
未だに殴り蹴られた身体が痛みを訴えている。
みそっかす、出来損ない、お前と家族だってのが恥ずかしい、なんで死なないんだよ。
そんなことを言われて心までも傷んだ。
誰も助けてくれなかったのが余計に辛くて、行く当てもないのに村から出るしかなかった。
雪が溶けて少し冷たくなった被毛がセラヴィの頬を擽る。
まるで泣くなと言っているようでそっと身体を預ける。
自分よりもずっと大きな個体の彼はそれに文句を言わなかった。
ギュッとセラヴィを抱きしめるように身体に手を回してくれた。
雪国で遭難すればこうして身を寄せ合い互いに温め合うのは当たり前なのに、どうして兄弟は自分と寝てくれないのだろうと、今更寂しくなった。
「どうして帰れないんだ?」
「……みそっかすらから、餌をちゃんととってこないからって……追い出されたんだ」
「そうか」
彼はそれ以上追求してこなかった。
たださっきよりも少しだけ強い力でセラヴィを抱きしめてくれた。
ふわふわの被毛が心地よい。
細く細かい毛のせいで温かさが残り二人の間で心地よい熱源となっている。
心地よくなってもっと彼に身体を預けようとして、「いたっ」と悲鳴を上げた。
「どうしたんだ」
「うん、大丈夫……いつものことだから」
「痛いのがいつものことなのか?」
「うん……兄弟に殴られたり蹴られたり……でもしょうがないんだ。だってみそっかすだから、ちゃんと役に立たないから……」
しょうがないと笑おうとして失敗した。
彼はそんなセラヴィを包み込むように抱きしめてくれた。頬を寄せ被毛を擦り合わせた。
「どうした、泣いているのか?」
「なっ、泣くわけないだろ!」
兎族が泣き虫だなんて思われたらまた兄弟に殴られる。
それに初めて会った人の前でみっともないと慌てて浮かんだ涙を瞬きで散らした。
「そうか……お前はどこに住んでいるんだ?」
「ここに近い村だよ。でも今日まで、かな?」
あははと笑って散らしたばかりの涙がまた集まってくる。
自分が情けなくて笑って誤魔化そうとするのを察したのか、彼は話題を変えた。
自分が住んでいる場所の話をするが、山を下りたことのないセラヴィには物珍しかった。
「もっと話してくれよ。いいなぁお前の住んでるところ」
キラキラと絵本の中の世界はセラヴィを魅了した。
雪しかなく食料も見つけるのが困難なこんな山奥よりもずっと温かそうだ。
家も人々も。
彼は色んな話をしてくれた。
セラヴィは温かい被毛に包まれたままそれを聞いて、勝手に夢想した。
暖炉のある温かい家、美味しいご飯が並んだテーブル、たくさんの兄弟たちに見たこともないプレゼントの数々。
同じ空間にいるだけで幸せがそこかしこからやってきそうで、ほんの少しでもいいから自分もその中にいたいと思った。
同時に目を開くと寒々とした現実が目の前に吹き荒れていた。
白一色の世界は陽光を失えば、ただ恐ろしいだけの景色でしかなかった。
暗闇の中で僅かにチラリチラリと雪の陰が確認できるだけ。
それにゴーッと恐ろしい風の音が覆い被さる。
厳しいばかりの山の中。
彼が語るものは何一つ存在しなかった。
当たり前のようにある、母の愛すら。
「いいな、俺もその中に混じりたい……」
「どうしてだ?お前だって凄いじゃないか。こんな穴を知っているし、冬しか実らない木の実のありかも知っている」
「でも……誰も俺のこと愛してくれない」
ポロポロ、現実に目をやった途端、セラヴィは涙を零した。
涙は顔を塗らし被毛まで塗らしていく。
呼吸でなく気配を察した彼はセラヴィの顔を豊かな被毛に埋めさせた。
「そんなに泣くな。お前を愛してくれる誰かが現れる」
「いないよ、そんなの……誰も」
押し殺した泣き声に彼は背中をそっと撫で始めた。
優しい手つきに心が弱くなって余計涙が溢れ出る。
「なんで誰も愛してくれないの?おればっかりどうして……」
「泣くな、泣くな……。私はそんなお前を愛しているぞ」
「うそっ……だって会ったばかりだろう。そんな嘘いらないっ!」
「嘘じゃない。なら誓おう。お前を私の番にしよう」
「……つがい?」
「そうだ、番の誓いをするぞ」
彼はセラヴィの身体を反転させると、鼻水で濡れた鼻に自分のをくっつけてきた。
それから頭を少し傾けて唇同士をぶつけた。
「これでお前は私の番だ。これからはずっと二人一緒だ」
「……そう、なの?」
「ああ。番だからな。毎晩こうやって抱き合おう」
彼は豊かな被毛の中にセラヴィを閉じ込めた。
今までにないほど温かくて、セラヴィも彼に腕を回して「うん、うん。離れないで」とせがんだ。
「当たり前だろう」
彼はそう言ってセラヴィを抱きしめてくれた。
腕の中は温かくて心地よくて、セラヴィはそのままうとうとした。
「ずっと一緒にいてくれ」
そう言って、スッと眠りの中に入っていった。
「ああ、ずっと一緒だ」
その声がとても心地よくて、肺いっぱいにその匂いを吸い込んだ。
けれど、目を覚ましたときセラヴィは一人だった。
木の穴には他に誰もいなくて、自分はとても優しい夢を見たんだと忘れることにした。
心地よい優しい記憶は、いつだって今を助けてはくれないから。
おしまい
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本作は、現在Kindleで発行しております「ねこうさアンソロジー」に寄稿した話の過去編となっております。
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