ツイノベ置き場

椎名サクラ

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【オメガバース】中学の先輩に無理矢理番にされ終いには喧嘩ップルになったオメガの話

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オメガだとわかったとき、受けは上級生のアルファにむりやり番にされた。

拒んだが小柄で痩身な受けは敵わなかった。

中学の時だった。

それから受けはアルファの家に住むことを命じられた。

「あんなカッコいい人と番とか羨ましい」

「いい人と番になったのね」

と、口々に言われるが受けはちっとも嬉しくなかった。

むしろ悲しくて悔しくて、逃げ出したかった。

けれどアルファはそれを許さず、まだ中学生だというのに、当たり前のように寝室を一緒にされた。

飽きてくれるようにとあえて地味な格好をして、陰キャを通した。

難しいことではなく、元々受けは人見知りでインドアだから、髪を伸ばして黒縁の厚底メガネを掛ければすぐに完成した。

なのにアルファは受けを手放そうとしなかった。

夜になるとうなじを噛んでは、「お前は俺のものだ」と、品行方正な生徒会長の仮面を剥ぎ取り、命じるのだった。

拒みたいのにムリヤリ押さえつけられ噛まれた時の恐怖を思い出すと震えが起こり、頷いてしまう。

受けが素直に言うことを聞けばアルファは上機嫌になった。

発情もまだなのに、受けの背中は歯型でいっぱいだった。

アルファが高校に入学し学校が別れる1年だけ、オメガは学校で自由に過ごせたが、送り迎えはアルファ宅の運転手がしてくれ、学校以外の自由な時間などなかった。

発情が始まったらアルファは当たり前のように受けを抱くだろう。

それもまた憂鬱の種だった。

すでに番のいるオメガだからと抑制剤も必要ないと飲ませてもらえず、受けは息苦しさを感じてしまう。

高校生になってアルファと同じ学校に進学させられた。

そうなると四六時中一緒で、オメガは辛くなった。

そのせいかいつまで経っても発情が来ない。

「きっと僕は発情しないからもう構わないでください」

「まだ体ができていないだけだ、発情したらすぐにでもお前を抱く」

寝る前の僅かな時間、そんな押し問答する日が増えた。

なぜアルファがこんなにも自分に執着するのかわからなかった。

オメガは希少で他のアルファに取られる前に唾を付けたかっただけだと思った。

そしていつの日にか沢山の人に会って、その中には見目の麗しいオメガがいて、アルファの気持ちはそっちに行くだろうと期待して高校時代を過ごした。

発情は起きず、なのに同じベッドで寝るのが不思議でならなかった。

アルファが何を考えているのかわからなかった。

親の勧めで大学に進学しても窮屈な生活に変わりはなく、アルファはサークルだ飲み会だと忙しくしてても、オメガにそれを許さなかった。

講義が終わればすぐ帰るように言われ、運転手も大学の前で待つので仕方なく従うしかなかった。

早く飽きてくれ、早く他に乗り換えてくれ。

そう願うのに、アルファはオメガを離そうとしてくれない。

「二十歳になっても発情しないのはきっと欠陥品なんだと思います、もう諦めてください」

デロンデロンに酔って帰ってきたアルファに言ったら、すごく怒った顔をしてパジャマを脱がされた。

「なんでいつも逃げようとするんだ!発情を待ってたのがいけなかったんだ」

そう言ってオメガを抱いた。

嫌がって逃げようとしても押さえつけられて、気持ちよくなるジェルを使われて、次第に気持ちよくなってしまう。

やだやだ言っても感じてしまう受けをアルファはその日から何度も抱いた。

「なんで嫌がるんだ!なんで受け入れないんだ!」

「やだっ、ぬ……いてぇ」

抜いたら抜いたで寂しくなるのに、受けはそう言ってしまう。

そして荒々しく抱かれてはも喜ぶのだった。

いい加減疲れ果てた受けは、アルファが体を清めてくれるときに、長年の疑問をぶつけた。

「なんで俺なんですか」

「……番にして六年目にしてそれを聞くか?とっくに知ってるはずだろう」

「知らないから聞いてるんです」

「ばっ!ばかか!そんなの好きだからに決まってるだろう。発情もしてないのにオメガとすぐわかった時点で察しろ!」

「いや、あんたが勝手に襲って番にしたんでしょうが!」

「違う、ちゃんと好きだと言った!」

「1回も言ってないですよ!!」

ヒートアップした二人は、一緒に暮らしてから初めての喧嘩をした。

言った言わないの言い争いはとうとう三行半に発展して、受けは実家に帰った。

久しぶりご自分の部屋でぷんすか怒り、どう記憶を辿っても言われてないと腹を立て続けた。

「早く他のオメガに乗り換えろバカ!」

叫んで枕を殴り続けるが、そんなことをしても気が治まらない。

けれど三行半を突きつけたのにいつまで経ってもアルファは受けの家に謝罪に来ない。

なんでだと悶々する自分に気づいてしまう。

「別に待ってるわけじゃない」

と、ツンデレなことをブツブツ言う自分にすら気づいていない。

このまま迎えに来なくて番い解消してくれたら望み通りじゃないかと自分に言い聞かせても落ち着かない。

勉強も身に入らなくて落ち着かない受けは無意識に大学の構内でアルファを探して視線を彷徨わせてしまう。

同じ大学でも別の科で滅多に会うことがないのに。

そんな中、ゼミのメンバーに誘われて飲み会に参加した。

初めての飲み会でちょっとテンションが上がった。

酒を飲むのも初めてで、自分の限界も知らずに甘い酒をお茶のように飲みまくった。

当然酔いすぎてフラフラになる。

「そういや受けってオメガだって本当か?」

同じゼミの名も知らぬ上級生が訊ねてきた。

チョーカーからはみでるほどの噛み跡があれば隠すほうが難しい。

しかも発情したこともないので危機感も希薄な受けは素直に頷いた。

「ってことはやるのが好きなんだよな。やぁらしー」

ゲラゲラと笑われたがやるのが好きなわけではない。

というか、アルファとしか経験がないからわかるわけもなく。

しかも飲み会特有のセクハラすら無経験できた受けは対応に困った。

「違いますよ……」

酔っぱらいのヘロヘロの返事は更に笑われる結果となり、相手を増長させた。

「そんなに好きなら俺が相手してやるよ!」

酔ってない学生が「やめなよ、受けくんは番いるんだから」と窘めるが酔っ払いを止めることはできない。

急にベタベタ触り始め、このあとホテルへと誘い始める。

「嫌です……やめてください!」

必死に押しのけようとしても、全身が伸しかかれば相手がベータでも押し退けることができないのがオメガだ。

あちこち触られて気持ち悪くて泣きそうになる。

「やめて……ヤダやめろって……助けろよアルファ‼️‼️」

酔って力が入らないで先輩の下で藻掻いて叫んだ。

「ったく、呼ぶの遅すぎるんだよ」

どこから現れたのか、ため息をついてアルファがヒョイッと上に倒れてた先輩を片手で引き上げた。

「……なんでいるの?」

「なんでって……あーもういい。帰るぞ!」

ぽいっと先輩を放り投げて今度は受けを抱き上げた。

しかもお姫様抱っこで。

「なっ、なんだよこれ……恥ずかしいから降ろせ!」

「うるさい酔っぱらい。飲み方も知らねぇで無茶な飲み方すんなよ。しかも押し倒されて何やってんだ。もしお前がやられてたら俺あいつを殺してるところだぞ」

恐ろしいことをサラリと告げる攻めに周囲がゾッとして鳥肌を立てるが、受けは腕の中でバタバタ暴れ回る。

だがそこは酔っぱらい、バタバタしても可愛いもので、そのまま外に連れて行かれる。

当たり前のように送迎してくれてる車が運転手付きで停まっており、二人が乗り込むと出発した。

「なんで勝手に連れ出すんだよ!」

「酔っ払いは黙って反省してろ。自分の身すら守れないくせに」

「うるさいうるさい!お前全然謝りに来ないくせに説教ばかりするな!」

「はいはいわかったから黙れ」

いなされてるのが悔しくて、どうせあのとき好きだって言ったのも勢いで、本当は衝動に決まってる。

グズグズ泣き出す受けの頭を撫で、暴言を受け流される。

いつだって向き合わないんだ、だったらもう番でいるのが辛い。

酔って心のリミッターが外れてる受けは着いたアルファの部屋で泣きながら「もう番でいたくない」と本音を吐露した。

「はあ、そんなに俺が嫌いなのか」

「当たり前だろっあんた全然俺のこと見ないじゃないか。なのに俺の邪魔ばっかして……」

「なんだ、そんなことか」

「そんなって……どうせ俺と番になったのもその時の勢いとかなんだろ、だったらもう開放してくれよ」

「あーもう、だから言っただろ、お前が好きなんだって!!!!」

「言ってなかった!7年も何も言わなかった!」

三行半突きつけたときと同じやり取りをまた繰り返してるとも気付かず、二人は言い合いになる。

しかし今日は受けがひたすら泣いていて悲壮感が半端ない。

番になってから受けが泣くところを見たことがないアルファは初めて折れた。

「わかった、俺が悪かった。……お前の顔をまともに見たら閉じ込めてしまいそうだったんだよ」

「なんだよそれ、犯罪者!」

「犯罪者にならないようにするので精一杯なんだよ!」

なんせ中学の入学式で受けに一目惚れしたのだ。

オメガとかそんなこと考える暇すらなかった。

とりわけ目を惹く容姿でもないのに存在が焼き付いて離れなかった。

それでも堪えた、すぐに噛まないように。

けれどずっと我慢するにはアルファは若く衝動を抑えられなかった。

まさかバース判定の結果が出た日とは知らず、噛んでしまったのだ。

後悔した、もっと仲を深めてから相手の了承を獲ればよかったと。

同時にこれで自分のものだと喜んでもいた。

まだ発情期が来ないというから、ずっと我慢して我慢して、隣で寝てる受けをおかずに抜いてはいたが手を出さないように自分を抑えた。

あの日までは。

顔を合わせたり話をしたり、そんな当たり前のことすらできないくらい襲いたくてしょうがなかったんだ。

それを聞いて受けはまた泣いた。

「んなこと言ったってあんた俺のこと襲ったじゃんか‼️」

「それの何が悪い!7年も我慢したんだぞ、たった一ヶ月抱いただけで解消できるか!」

「じゃあなんで迎えにこないんだよ‼️」

「頭冷やそうと思ったから……なのに勝手に飲み会なんかに行きやがって……」

「なんで知ってんだよ飲み会のこと」

「お前のゼミに俺のスパイ送り込んでるからに決まってるだろ。でなきゃ今頃、お前俺以外のやつに襲われてたんだぞ!もっと自覚持て!」

「愛されてる自覚すらないのに、どうして他の自覚なんて持てるんだよ!」

叫んでまたグズグズ泣き出す。

「なんだ、俺が浮気すると思ってたのか」

急に不機嫌になったアルファにベッドに押し倒された。

「この七年、お前以外目にはいらねーってのに信じてねーのか……だったら信じられるくらい抱いてやる!」

服を脱がされあちこちチュッチュペロペロされて、泣き声が啼き声に変わる。

気持ちよくてふわふわしてクラクラしてしまう。

そう、クラクラして気持ち悪くなって、最中なのにケロケロしてしまった。

当然盛り上がった雰囲気は台無しになり、急性アルコール中毒を疑われ病院にかつぎこまれとワタワタした夜になった。

翌朝、激しい頭痛て苦しむ受けの横で、寝不足で不機嫌なアルファが「次は覚えてろよ」とこめかみに青筋を立ててそうブツクツ言うが当然受けの耳に入ってなくて。

何度もそんな押し問答を繰り返し色々失敗しながら少しずつ心の距離が縮まった二人は、受けが遅い発情を迎えたとき、ズッコンバッコンやりまくって

「もう完全にお前俺のものだから」

「やだ、中で出すな子供できるっ!」

「安心しろ、たっぷり出して何回だって妊娠させてやる」

なんてやり取りをした次の日、結婚届を提出するのだった。


おしまい
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