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【シバース】受けが柴犬化してオロオロする攻めの話
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※シバースとは
極度のストレスを与えられると柴犬になってしまう現象のことを指す。
ストレスが緩和すると再び人間に戻るが、柴犬化している間は柴犬の本能が理性を凌駕するため、柴距離・拒否柴など様々な問題行動を起こしてしまう。
**************************
攻めにはラブラブの可愛い恋人がいる。
焦げ茶色の髪にスッと通った鼻、小さな口がとても可愛くて、一目惚れして拝み倒して付き合って貰った。
付き合ってみると本当に性格も可愛くて、ご飯を買ってきて一緒に食べようとか、一緒に映画見てたらぴとっとくっついてきたり。
そのたびに攻めはぎゅんってしてしまって恋人を押し倒してしまうから、映画を最後まで見ることができない始末。
けれど攻めのすることすべてを受け入れてくれて「しょうがないね」って優しく笑うからもっと好きになってしまう。
好みの顔で好きになったのに、性格まで好きになって、全部が好きで好きでどうしようもない。
いつだって一緒に居たくてベタベタしたくて、時間があれば恋人の側に行ってしまう。
そんな攻めのことも許してくれるから、もう好きが止まらなくなる。
大学を卒業して二人とも就職して、別々の会社だけど週末はずっと一緒に過ごした。
「ごめん、今までずっと隠してたんだけど、僕ちょっと特種なんだ……それでも嫌わないでくれる?」
聞けば、ストレスが溜まると犬化するという。
割合は少ないけれど一定数そういう人間がいるのは学校で習ったし、嫌いになるにはあまりにも好きになりすぎて無理だった。
「どんな恋人でも俺は大好きだ!」
「ありがとう。本当に嫌いにならないでね」
そんなの当たり前じゃないかーとまた押し倒してしまうのだが。
それが予告だったと知るのは翌週。
恋人から無言電話が続いて慌てて彼のマンションに駆けつければチョコンと座っていたのは、柴犬。
「もしかして……恋人?」
聞けばこくんと頷いた……ように見えた、多分。
けれど大丈夫、だって俺、実家で犬飼ってたしと余裕の攻めはまずはご飯作りと下手くそな料理を出した。
「犬化したらご飯食べれないもんな」
だが犬恋人はクンクンと匂いを嗅いだだけでプイ、ベッドに上がって伏せしてしまった。
うそ! 今まで俺の料理を「独創的だね」って嬉しそうに笑って食べてくれてたじゃん!!
犬化すると味覚変わるのかなとちょっと落ち込んで、コンビニでお弁当を買ってきた。
それはバクバクと凄い勢いで食べていくから泣けてくる。
綺麗好きな恋人の部屋はいつも片付いている分、床に落ちた抜け毛が凄く気になる。
定位置に置かれてあるコロコロで取っていくと、犬恋人がサッと近づいてそれを見てゴロンと寝っ転がった。
真っ白なお腹を見せてくる。
えっ、して欲しいって事なのかな? と手を伸ばしたらペシっとはたき落とされた。
「えっあ……ごめんごめん、もしかしてコロコロ?」
コロコロを押し当てたら力を抜いてだらーんする。
なんで? 俺よりもコロコロ? とかちょっと悲しくなってしまう。
(いやいや、恋人も部屋が汚れるのが嫌なんだよな、大丈夫、俺はちゃんとわかってるから)
満足するまでコロコロで綺麗にして、ちらりと犬恋人を見た。
そわそわしている。
これは、そろそろ散歩の時間かな。
この部屋にトイレシートがないからずっと我慢していたのかもしれないとリードを探すとクローゼットを鼻でツンツンした。
開ければガサゴソと犬恋人がリードを取り出した。
それを巻き付けて散歩に出る。
恋人の嬉しそうな姿にこちらまで嬉しくなる……が、どうしてかあっちこっち好き勝手引っ張り始める。
いつもは一緒に歩くときは身体の一部がくっつくかくっつかないかの距離にいるのに。
勢いよくリードを引っ張られて転びそうになってもこちらを向いてくれない。
実家の飼い犬が当たり前のようにするアイコンタクトも全然してくれない。
しかも、引っ張り回すだけ引っ張り回した後、家に帰ろうとすると、突然発動される拒否!
グーッと後ろ足に力を入れるもんだから、全部が前にグーッと伸びて顔がしわくちゃになる。
なにこれ!?
引っ張ってもびくとも動かない。
「えっえっなんで? ……もしかして抱っこ?」
それすらも違うと拒否される。
引っ張れば見ていた人たちが笑いながら「初めて見たー拒否柴(ハート)」とか言うし。
なんとか連れて帰り、足を洗えばあんなに拒否していたのが嘘だったみたいに「あー疲れた」とゴロンと腹を見せ始めた。
犬になったからってちょっと大胆……もしかして俺誘われてる?と顔を近づければぶにっとした感触の後に肉球特有の匂いが鼻に届いた。
まさかの拒否。
「も……もしかして、俺って嫌われてる?」
抱きつこうとしたらすっと躱された。
なんで????
シクシク泣いているのに、実家の犬なら寄り添ってくれるのに、犬恋人はこちらを見てもくれないままグーッと伸びをしてペタッと伏せをした。
しかも全然関係ないところに顔を向けて。
それから犬恋人の世話をするために通い続けるんだけど、とにかく距離を置かれる。
近寄ればその分離れるし、「おいで」と言っても一定距離以内には入ってこようとしない。
二人の間には見えないバリケードでもあるのかと思うくらい、綺麗な一戦から絶対に入ってこようとしない。
なぜ?
もしかしてこれが犬恋人の本音?
俺って実は嫌われていたとか?
ハラハラと涙を零していても相変わらずツーン、見てもくれない。
勝手なことをして、飽きたらベッドでセクシーな足を投げ出して寝ようとしている。
せめて頭くらいは撫でてもいいよね、と手を伸ばしたら「ばうっ!」と噛まれそうになる。
えええええ、それもだめぇぇぇぇ?
シクシクと泣いては早くストレス緩和しないかなと、タオルハンカチで顔を覆う。
鼻水までしっかり拭ってせっせと世話を続ける。
我慢できるのは、ドアを開けた途端に尻尾をブンブンに振って出迎えてくれるからだ。
でも触ろうとするとするりと躱されるし、数秒で目を合わせるだけですぐに「あー、デモンストレーションは終わった」とばかりにUターンされる。
そして、ご飯を出すときだけピターッと張り付いてキラキラした目で見上げてくるのだ。
その目が可愛すぎてついつい好きなものを上げてしまう。
なのに食べ終わった途端どこかに行ってしまう……なぜ?
そんなことをして一週間、また冷たい対応されるのかとビクビクして扉を開くと恋人が元の姿に戻っていた。
「よがっだーーーーーーーーー!」
攻めは号泣で抱きついてしまう。
「ごめんね、ああなっちゃうと自分でもコントロールできないんだ。本当にごめんね」
「いいんだ、いいんだ……でもメチャクチャ俺のこと甘やかしてよぉぉ」
なんせずっとツンを味わった攻めはもうハートブレーク寸前だったのだから。
「当たり前だろう。ありがとうね、ずっと僕のことを気に掛けてくれて。とても嬉しかったんだ」
ぎゅっぎゅっと恋人を抱きしめて、クンクンと彼の匂いを嗅いで元気になっちゃった下半身を押しつけて。
それでも恋人は笑って身体を許してくれてた。
一週間分の交わりに大興奮してストックしてあったゴムを使い切っても収まらない感情をありのままでぶつけてしまった。
「やばっ、生サイコー」
「今日は特別だからね。普段はちゃんとゴム着けてね」
白濁を零してヒクヒクする蕾を見せながら恋人が窘めるけど、それを見ただけでまた元気になって……。
それからというもの半年に一回くらい仕事のストレスで犬化する恋人の世話をしては、じわじわとツンに慣れていくのだが、そうなったら今度はそれに嵌まってしまい、ツンってされるのを悦んでしまうようになり。
恋人が犬化すると様々な貢ぎ物を下げて彼の部屋に赴くのだった。
おしまい
極度のストレスを与えられると柴犬になってしまう現象のことを指す。
ストレスが緩和すると再び人間に戻るが、柴犬化している間は柴犬の本能が理性を凌駕するため、柴距離・拒否柴など様々な問題行動を起こしてしまう。
**************************
攻めにはラブラブの可愛い恋人がいる。
焦げ茶色の髪にスッと通った鼻、小さな口がとても可愛くて、一目惚れして拝み倒して付き合って貰った。
付き合ってみると本当に性格も可愛くて、ご飯を買ってきて一緒に食べようとか、一緒に映画見てたらぴとっとくっついてきたり。
そのたびに攻めはぎゅんってしてしまって恋人を押し倒してしまうから、映画を最後まで見ることができない始末。
けれど攻めのすることすべてを受け入れてくれて「しょうがないね」って優しく笑うからもっと好きになってしまう。
好みの顔で好きになったのに、性格まで好きになって、全部が好きで好きでどうしようもない。
いつだって一緒に居たくてベタベタしたくて、時間があれば恋人の側に行ってしまう。
そんな攻めのことも許してくれるから、もう好きが止まらなくなる。
大学を卒業して二人とも就職して、別々の会社だけど週末はずっと一緒に過ごした。
「ごめん、今までずっと隠してたんだけど、僕ちょっと特種なんだ……それでも嫌わないでくれる?」
聞けば、ストレスが溜まると犬化するという。
割合は少ないけれど一定数そういう人間がいるのは学校で習ったし、嫌いになるにはあまりにも好きになりすぎて無理だった。
「どんな恋人でも俺は大好きだ!」
「ありがとう。本当に嫌いにならないでね」
そんなの当たり前じゃないかーとまた押し倒してしまうのだが。
それが予告だったと知るのは翌週。
恋人から無言電話が続いて慌てて彼のマンションに駆けつければチョコンと座っていたのは、柴犬。
「もしかして……恋人?」
聞けばこくんと頷いた……ように見えた、多分。
けれど大丈夫、だって俺、実家で犬飼ってたしと余裕の攻めはまずはご飯作りと下手くそな料理を出した。
「犬化したらご飯食べれないもんな」
だが犬恋人はクンクンと匂いを嗅いだだけでプイ、ベッドに上がって伏せしてしまった。
うそ! 今まで俺の料理を「独創的だね」って嬉しそうに笑って食べてくれてたじゃん!!
犬化すると味覚変わるのかなとちょっと落ち込んで、コンビニでお弁当を買ってきた。
それはバクバクと凄い勢いで食べていくから泣けてくる。
綺麗好きな恋人の部屋はいつも片付いている分、床に落ちた抜け毛が凄く気になる。
定位置に置かれてあるコロコロで取っていくと、犬恋人がサッと近づいてそれを見てゴロンと寝っ転がった。
真っ白なお腹を見せてくる。
えっ、して欲しいって事なのかな? と手を伸ばしたらペシっとはたき落とされた。
「えっあ……ごめんごめん、もしかしてコロコロ?」
コロコロを押し当てたら力を抜いてだらーんする。
なんで? 俺よりもコロコロ? とかちょっと悲しくなってしまう。
(いやいや、恋人も部屋が汚れるのが嫌なんだよな、大丈夫、俺はちゃんとわかってるから)
満足するまでコロコロで綺麗にして、ちらりと犬恋人を見た。
そわそわしている。
これは、そろそろ散歩の時間かな。
この部屋にトイレシートがないからずっと我慢していたのかもしれないとリードを探すとクローゼットを鼻でツンツンした。
開ければガサゴソと犬恋人がリードを取り出した。
それを巻き付けて散歩に出る。
恋人の嬉しそうな姿にこちらまで嬉しくなる……が、どうしてかあっちこっち好き勝手引っ張り始める。
いつもは一緒に歩くときは身体の一部がくっつくかくっつかないかの距離にいるのに。
勢いよくリードを引っ張られて転びそうになってもこちらを向いてくれない。
実家の飼い犬が当たり前のようにするアイコンタクトも全然してくれない。
しかも、引っ張り回すだけ引っ張り回した後、家に帰ろうとすると、突然発動される拒否!
グーッと後ろ足に力を入れるもんだから、全部が前にグーッと伸びて顔がしわくちゃになる。
なにこれ!?
引っ張ってもびくとも動かない。
「えっえっなんで? ……もしかして抱っこ?」
それすらも違うと拒否される。
引っ張れば見ていた人たちが笑いながら「初めて見たー拒否柴(ハート)」とか言うし。
なんとか連れて帰り、足を洗えばあんなに拒否していたのが嘘だったみたいに「あー疲れた」とゴロンと腹を見せ始めた。
犬になったからってちょっと大胆……もしかして俺誘われてる?と顔を近づければぶにっとした感触の後に肉球特有の匂いが鼻に届いた。
まさかの拒否。
「も……もしかして、俺って嫌われてる?」
抱きつこうとしたらすっと躱された。
なんで????
シクシク泣いているのに、実家の犬なら寄り添ってくれるのに、犬恋人はこちらを見てもくれないままグーッと伸びをしてペタッと伏せをした。
しかも全然関係ないところに顔を向けて。
それから犬恋人の世話をするために通い続けるんだけど、とにかく距離を置かれる。
近寄ればその分離れるし、「おいで」と言っても一定距離以内には入ってこようとしない。
二人の間には見えないバリケードでもあるのかと思うくらい、綺麗な一戦から絶対に入ってこようとしない。
なぜ?
もしかしてこれが犬恋人の本音?
俺って実は嫌われていたとか?
ハラハラと涙を零していても相変わらずツーン、見てもくれない。
勝手なことをして、飽きたらベッドでセクシーな足を投げ出して寝ようとしている。
せめて頭くらいは撫でてもいいよね、と手を伸ばしたら「ばうっ!」と噛まれそうになる。
えええええ、それもだめぇぇぇぇ?
シクシクと泣いては早くストレス緩和しないかなと、タオルハンカチで顔を覆う。
鼻水までしっかり拭ってせっせと世話を続ける。
我慢できるのは、ドアを開けた途端に尻尾をブンブンに振って出迎えてくれるからだ。
でも触ろうとするとするりと躱されるし、数秒で目を合わせるだけですぐに「あー、デモンストレーションは終わった」とばかりにUターンされる。
そして、ご飯を出すときだけピターッと張り付いてキラキラした目で見上げてくるのだ。
その目が可愛すぎてついつい好きなものを上げてしまう。
なのに食べ終わった途端どこかに行ってしまう……なぜ?
そんなことをして一週間、また冷たい対応されるのかとビクビクして扉を開くと恋人が元の姿に戻っていた。
「よがっだーーーーーーーーー!」
攻めは号泣で抱きついてしまう。
「ごめんね、ああなっちゃうと自分でもコントロールできないんだ。本当にごめんね」
「いいんだ、いいんだ……でもメチャクチャ俺のこと甘やかしてよぉぉ」
なんせずっとツンを味わった攻めはもうハートブレーク寸前だったのだから。
「当たり前だろう。ありがとうね、ずっと僕のことを気に掛けてくれて。とても嬉しかったんだ」
ぎゅっぎゅっと恋人を抱きしめて、クンクンと彼の匂いを嗅いで元気になっちゃった下半身を押しつけて。
それでも恋人は笑って身体を許してくれてた。
一週間分の交わりに大興奮してストックしてあったゴムを使い切っても収まらない感情をありのままでぶつけてしまった。
「やばっ、生サイコー」
「今日は特別だからね。普段はちゃんとゴム着けてね」
白濁を零してヒクヒクする蕾を見せながら恋人が窘めるけど、それを見ただけでまた元気になって……。
それからというもの半年に一回くらい仕事のストレスで犬化する恋人の世話をしては、じわじわとツンに慣れていくのだが、そうなったら今度はそれに嵌まってしまい、ツンってされるのを悦んでしまうようになり。
恋人が犬化すると様々な貢ぎ物を下げて彼の部屋に赴くのだった。
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