ツイノベ置き場

椎名サクラ

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愛犬家の話~野良犬の場合

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受けは野良犬だった。

この世界には同じ人間でも犬に分類される種族がいた。

犬は権力階級の象徴だった。

だが、野良犬はその枠にははまらず、見つかれば殺処分されるのが当たり前だった。

受けは成犬になるまで山で暮らしていたが、その冬は食べ物が少なく人里まで下りて家畜を襲い、捕まった。

すぐに殺されそうになったが、「面白い、私が飼ってみよう」と言い出したのは領主の若く逞しい貴族だ。

受けはすぐに首輪を付けられたが、それまでに何人もの使用人の腕を噛んだ。

「随分な暴れん坊だ。だがこれを飼い慣らすのも一興だろう。なにより血統書付きよりも美しい身体をしている」

野生で野山を駆けまわった受けはしなやかな身体をしていた。

ジェントルマンリードを付けられ全身を洗われトリミングを済ませれば、今まで見たどの犬よりも美しかった。

領主は満足した。

だがどれほど躾をしようと受けは飼い慣らされることはなかった。

「それくらいでなければ面白くない」

領主は受けの手足をベッドに縛り付けた。

成犬としての最も大事な役目である飼い主を慰める身体にするためだ。

受けは嫌がって暴れたが、領主は容赦しなかった。

繋がるための場所を暴き、潤し欲するクスリで慣れさせていった。

受けは屈辱に吠え、だが次第に身体の中から熱くなり悶え始めた。

どこに触れてもビクリと震えるまでクスリをたっぷりと使い、唸り声が啼き声に変わるのを待ってまた鞭を与えた。

「お前は私の犬だ、いいな。決して忘れるな」

領主は何度も言い聞かせては、少しでも反抗的な態度を取ったら鞭で打った。

そして、またクスリを塗り込んだ。

受けは狂ったように悶え、最後には「あんたの……犬だっ」と叫んだ。

「いい子だ、褒美をくれてやる」

受けは領主を受け止め狂ったように悦がった。

自分から尻を振り、感じすぎては震え、中の刺激でいっては腰を高く上げた。

脳が焼き切れたように感じ続けた。

気持ちよすぎて内腿は震えたままになった。

だが翌朝になればまた元通り狂犬へと戻る受け。

野良犬としての矜持を捨てられず、誰彼構わず吠え続けた。

「やはり野良犬を躾けるのは難しいな」

そう言って、領主は笑った。

なぜならどれだけ他の者達に吠える受けでも、領主には怯えた表情を見せるからだ。

一歩近づけば後ろに下がり、手を伸ばせばビクリと身体を震わせた。

美しい犬がひたすら怯える様は領主を面白がらせた。

そして夜ごとベッドに縛られ、無理矢理領主の慰めをさせられた。

大人しく言うことを聞くまでクスリを使い、一月後には何も使われずとも受けは挿れられて悦がり狂うようになった。

しかし、比例して日中は敵意を剥き出しにし続け、部屋の隅から動かなくなった。

どの人間も怖くて仕方なかった。

「さすがに一月では慣れないか」

「旦那様、やはり野犬を飼い慣らすのは難しいものがございますよ」

執事まで諦めるよう進言するが領主は首を縦には振らなかった。

面白そうに夜ごと受けを抱いた。

受けも悦び啼きはするが、決して領主の言うことを聞くことはなかった。

領主はそれが嬉しくもあった。

誰にも懐かない自分だけの犬、自分にしか抱かれない犬。

友人の忠犬を一度目にしてからそんな犬を育てたいと思っていた。

だが血統書付きの犬は皆、どこか主人だけではなく人間全てに媚びているように映り、興ざめしていた。

野犬ならばと試したが、領主の欲望を満たしてあまりあった。

怯えても繋がるものを見せれば涎を垂らさんばかりに見つめ、挿れればあれほど唸っていたのを忘れ狂ったように悦がる。

「いやだ、離せ」と口にしても可愛がられることを覚えた身体は快楽に貪欲だった。

領主は受けに溺れていった。

ジェントルマンリードを付けずに手を出して噛まれそうになっても笑い、使用人があまりの凶暴さに悲鳴を上げても笑って許した。

だが受けは領主が怖かった。

自分の知らない感覚を教え押さえつける強い存在に逃げ出したくてしょうがなかった。

なのに、身体は悦んでしまい勝手に足が開いてしまう。

自分がどこまでも飼い慣らされていくようで、余計に凶暴な態度を取ることでしか己を保てなかった。

使用人が悲鳴を上げて逃げれば安堵するのに、唸って領主が手を引っ込めると急に寂しくなった。

そんな自分を認められなかった。

誰もが恐れる野犬、言うことを聞かせられるのは領主だけ。

なのに、面白がった若い使用人が複数で受けを押さえつけ、慰めに使おうとした。

受けは暴れた。

あんなことされるのは領主だけで充分だとばかりに暴れ容赦なく噛もうとした。

だが頭も手も身体まで押さえつけられ牙を剥くこともできなかった。

若い使用人は容赦なく受けを使い己の欲望を果たした。

一人終われば次が。また終われば休むことなく次が挿ってくるのを何時間も続けられ、最後には声も出なくなった。

若い使用人たちは笑った。

これで領主様に従順な犬になるだろうと。

だがそれを見つけた領主は烈火のごとく怒った。

若い使用人は皆鞭打ちに処され、それは受けもだった。

「お前は私のものだというのになんて薄汚れてしまったんだ!」

血が出るまで全身を鞭で打ち、寝起きを領主の寝室から馬小屋の横の荒ら屋へと移された。

鍵を掛け、誰も出入りできないようにし、受けを鎖で繋いだ。

夜ごとそこを訪れては怒りにまかせて鞭を振るい、素手で尻を叩いた。

そして受けがぐったりすると、今度は慰めに使った。

今までと違って乱暴に強引に、己の快楽のみを追いかける残忍さで抱き続けた。

それでも領主の怒りは収まりはしなかった。

ある夜、領主は犬の躾用の前の形を模した器具を受けの繋がる場所に挿れた。

狂うほど痒くなり、中を飼い主のもので擦って貰わなければ収まらないというそれは、受けを狂わせた。

「かゆいっ……いやだっ!」

床に転がって身悶える受けを領主は冷徹な目で見つめた。

「もぉ……ぁぁっ」

だが受けの両手は縛られ、そこを掻くことすらできない。

「どうにかして欲しければ私のものを舐めろ」

出されたそれを受けは必死で舐めた、早く中の痒みを収めて欲しくて、来るって変なことを口にする前に挿れて欲しくて。

口でそれを慰めるのが初めての受けは勝手がわからずひたすら舐めた。

領主は「下手くそ」といい、鼻を摘まんで口を開けさせると奥までそれを挿れた。

「んんっ! ぅぅっ」

容赦なく腰を使い、同時に受けの中に挿ったままの器具を動かした。

「噛むなよ、僅かでも噛んだらこれを一生お前の中に挿れたままにしてやる」

恐ろしい言葉に受けは震え、涙を流して必死に口を開き続けた。

「ふっ、つまらないな。舌を使うこともできないのか」

尻を鞭で叩かれ悲鳴を上げ、それが締め付ける効果を与えた。

「これは良い」

領主は容赦なく受けに鞭を喰らわせ、器具と腰を動かした。

受けは泣いた、泣き続けた。

自分の中の何かが毀れるのを感じた。

硬くなったものが口から出るとやっと器具が抜かれ、領主のものが挿ってきた。

「ぁぁっ……これをもっと……もっとくれぇぇ」

「品がないな、まぁ野犬にはこれ以上求めてもしょうがないか」

腰を打ち付けるごとに尻を素手で叩いた。

そのたびに中がギュッと締まって領主を悦ばせた。

受けも何度も白いものを吐き出すが、それでも中の痒さが収まらなくて、終いには自分から領主の腰に乗り腰を落としては悦んだ。

しかしその夜から受けは鳴かなくなった。

唸ることもしなくなった。

一日中薄暗い小屋で丸まり、領主が訪れても動こうとはしなかった。

無理矢理に慰めに使えば身を震わせるが、終わればまた丸まった。

領主は慌てた。

獣医を呼んで見せたが、どこも悪いところはないと言われる。

だが受けは動かない。

ぼんやりと虚ろな目をして何もない場所を見つめるばかりだ。

薄暗い小屋から自分の寝室へと場所を移しても、受けは同じ姿勢で丸まっているだけで動こうとしない。

一日の大半を寝ているようでもあった。

老犬には程遠い若々しい受けが衰弱したのかと心配し、食事を与えたが口を開かなくなった。

領主は無理矢理口を開けさせ、食事を流し込んだ。

水も口移しに飲ませた。

美しくしなやかな身体が次第に痩せ細っていく。

領主は堪らなく不安になり、友人に相談した。

友人は人目受けを見て「可哀想に」と呟いた。

「死ぬつもりだろう、心が毀れてしまっている。愛情は与えたのか?どうやって可愛がってやっていたんだ?」

領主は素直に自分がしたことを話すと嘆息された。

「愛情を与えなければ犬だってお前を主とは認めない。そんな奴に好き勝手されるなら死んだ方が良いとこの子は思っているのかもな」

残酷な言葉だ。

「もう野性に返してやれ。そうでなければ安楽死させろ」

野犬は元々見つければ捕まえ安楽死させるものだと友人は言ったが、領主は頑なに拒んだ。

「これは私の犬だ、私だけの犬だ!」

「ならば可愛がってやれ。それしかない」

友人はそう言って帰って行った。

だが領主は可愛がり方など知らなかった。

犬など、餌をやって夜の慰みをすれば良いと思っていた、どう可愛がれば良いかわからなかった。

試しに抱きしめた。

身体をゆっくりと撫でてやった。

それでも受けは反応しない。

それから毎日、時間を見つめては食事を与え水を飲ませ、腕の中で抱いて過ごした。

夜には自分のベッドに入れ、守るように抱きしめ続けた。

話しかけるようにもなり、受けに名前を付けてさえ居ないことに気付いた。

「美しいお前に似合いな名前を付けなければな。何が良いか……」

とめどなく話して領主なりに慈しんだ。

一日中寝ていた受けが目を覚ます時間が次第に長くなった。

そうなればもっと精の付くものを食べさせていった。

領主は屋敷の中にいる間は常に受けを抱き続けた。どこに行くにもどこの部屋に行っても必ず膝に受けを乗せて。

元の美しくしなやかな身体に戻るまでそれを続けた。

「なぜ殺さない」

寝台に横たえた受けが久しぶりに声を出した。

「殺せば良い」

「お前は殺さない」

「なぜだ」

領主にもわからなかった、なぜあれほどに怒り、なぜあれほどに責め続けたのか。

わかっているのは、殺せない、それだけだ。

領主はいつものように受けを抱きしめた。

受けも静かに抱きしめられていた。

領主は受けの身体を自分の上に乗せ、美しい背中を何度も撫でた。

しなやかな肉の弾力を味わい、だがそれ以上は何もしなかった。

領主の身体に乗せられた受けは身体を硬くしたが、何もされないことに安心して力を抜いた。

鞭の傷も随分と癒えた美しい裸体は欲情を注ぐが領主は耐えた。

その理由すらわからなかった。

変わらずどこに行くにも受けを抱いて移動しては膝に乗せてその身体を撫で続けた。

時折髪を撫で共に風呂に入るようになった。

受けは大人しくされるがままになっていた。

まるで領主を受け入れたように思えた。

その夜もいつものように身体の上に乗せ身体を撫でた。

「お前の名をルーンにしよう。月のように美しいお前にぴったりだ」

返事はなかったがビクリと身体が跳ねたように思えた。

領主は気にせず身体を撫で続けた。

背骨に沿って撫で尾てい骨を擽り、臀部の形を確かめた。

受けから熱い吐息が零れた。

太腿を撫でたとき、また受けが身体を震わせた。

夜着越しに何かが押しつけられた。

領主は唇を舐め臀部を揉みし抱いた。

また受けから熱い吐息が零れ、必死にシーツを握っているのが見えた。

堪らなかった。

領主は己の夜着を破き受けはそれに驚いて戦いた。

だが逃げぬように強く抱きしめ二人のものを擦り合わせた。

「ぁぁっ」

受けの身体を上下に揺すり前の尻尾が硬くなってから、繋がる場所に指を挿れた。

しなやかで美しいからだが仰け反った。

領主は興奮し、寝台の側に置いたままにしていたクスリを手に取るとたっぷりと手に取り、繋がる場所を濡らした。

受けから腰を揺らめかせるようになると、抱き合ったまま繋がった。

「はぁっ」

吐息のような啼き声に領主は我慢できず、逃げぬよう抱いたまま腰を使い始めた。

啼き声が大きくなり、腕の中で身悶える受けが可愛くてしょうがなかった。

そう、領主は受けを愛おしいと思っていたのだ。

だから殺すこともできずにいたのだとはっきりと理解した。

腕の中で身悶え悦ぶ受けに囁いた。

「お前が可愛くてしょうがない。この腕の中に一生閉じ込めてしまいたい」

「なにをっあぁぁ」

「私のものを挿れて悦ぶお前ほど美しいものはない。お前の全てが欲しいんだ」

領主は受けの唇を貪った。

舌も口内も啼き声も貪って腰の動きを早めた。

両足をバタつかせた受けは何度も白いものを領主の腹に飛ばしたが、それでも感じ続けさせられた。

終いには飛ばすものをなくしても、奥を突かれて身体を跳ねさせた。

それすら領主の逞しい腕に抱き留められ身体を浮かせられなくされる。

痙攣が止まらなくなった受けは、掠れた声で「もう許してくれ」と懇願した。

「もう一度誓え、お前の全ては私のものだと」

「そこばかり……くるう、くるう!」

「誓うんだ、ルーン」

名前を呼ばれて受けは震えた。

熱い吐息を零して「誓う、オレの全部はあんたのものだ」震える内腿で領主の身体を挟み込んだ。

「なんて可愛いんだ。一生お前だけを大事にすると誓おう」

人間の言うことなんて信じない、そう思っていたのに受けは嬉しくて身体を震わせて、白いのをその身体の奥に受け止めた。

それでもまだ領主のものは太いままだ。

受けの身体を起こし下からその美しさを堪能した。

久しぶりに胸を弄ってみた。

「ああっ、やめてくれっ」

嫌がるのに中はきついくらいに締め付けて領主を悦ばせる。

「お前は私だけに懐けば良い。他のものなど見るな、私だけを見ろ」

口にしてわかった、受けが自分以外の手で慣らされたのが悔しかったのだ。

そして美しい瞳に領主だけを映し、領主だけを慕って欲しかった。

鞭もクスリも使わずに。

下から小刻みに腰を動かせば胸を差し出すように悶える受けは、美しいまま妖艶さを濃くしていく。

「その顔も私以外に見せるな、いいな!」

「わかったっあんただけ……あんただけだからっ! 全部あんたのものだからっ!」

その夜、受けが気を失うまで慰めさせた。

足の力を弱らせてはいけないと散歩をさせる時以外は常に抱き上げ、自分の膝に乗せた。

受けも領主に従い、その膝に大人しく座り、犬にするには濃厚な接吻を受け取るほど従順になった。

野犬を飼い慣らした初めての事例として驚いた貴族たちが受けを一目見ようと懇願しても、領主は決して首を縦に振らなかった。

そして美しい自分の犬をいつまでも慈しみ、夜にはたっぷりと啼かせるのだった。

受けもどこまでも自分を慈しんでくれる領主にだけ心を許し、身体を許すのだった。


おしまい
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