ツイノベ置き場

椎名サクラ

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異世界に召喚された壁希望の腐男子の話

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腐男子の受けは気がついたら異世界に召喚されていた。

しかもそれはハマっていたBLゲーム!

騎士団長×第二王子最推しだった受け。

同人誌出しまくって最大手になるくらい大好きだったカップリングが目の前にいることに大興奮!

異世界召喚サイコー!と異世界ライフを満喫する。

召喚者が第二王子と騎士団長のストーカーしてるキモーイと宮中で噂されても全く気にしない受け。

とにかく二人がラブいちゃするシーンをこの目で見るまではとストーカーを続ける。

だがなかなか第二王子と騎士団長のラブいちゃに遭遇しない。

時折やってくる魔獣討伐や瘴気除去もウハウハで参加しては召喚者の萌えパワーで勢いよく魔物を退治しては瘴気を払っていく。

だって、騎士団長の勇姿が見られるから嫌でもテンションは爆上がり。

しかもいつからか第二王子まで討伐に参加するものだからもういつ死んでも良い状況。

だがあまりにもトントン拍子に受けが討伐してしまうものだから、二人の絡みシーンがちっとも見られやしない。

もしかしたら自分が倒してしまうのがいけないかもと思った受けは、平常心で討伐に臨んだ。

案の定パワー不足で魔獣を倒せない受けに、魔獣が襲いかかってきた。

涎だらけの口を思い切り開けて襲いかかってくる魔獣。

このまま推しを前にして死んでしまうのかと諦めたその時、騎士団長と第二王子が助けてくれる。

二人の見事なまでのコンビネーションで魔獣は怯み、「推しに助けて貰った!」現実に萌えパワーが発動した受けにとどめを刺されてしまう。

「大丈夫か、受け!」

「怪我はないかい?」

推し二人に見つめられ、別の意味で鼻血を吹き出して昇天した受けが目を覚ましたのは王宮の医療室だった。

「目を覚ましたね、大丈夫?」

「痛いところはないか、些細なことでも教えてくれ」

あなたたちに興奮しすぎて倒れましたとは言えない受けは、推し二人に甲斐甲斐しく世話をされてしまう。

こんなに幸せで良いのだろうかとほわほわするが、どう見ても二人の間に進展がない。

なぜだ?

考えに考え抜いた結果、まだ二人の間に恋心が芽生えていないのではと思い至った受け。二人をくっつけるために三人で一緒に出かけるのだが、良い雰囲気になったところでこっそり席を外すのになぜか二人が探しに来る。

違うんだ、俺を探してどうする!

心で叫んでもなぜか気遣ってくれるのが嬉しい。

だって最推しに見つめられたら卒倒するくらいテンションが上がってしまうオタク性。

そんなことを何度も繰り返し、いつものようにそっと抜け出して一人で池をお散歩するとうっかり落ちそうになる。

すぐに二人に助けて貰いドキドキしてしまう。

やっぱりこの二人最高!

モブキャラにも親切とか眩しすぎるだろうと心の中で叫んで礼を言えば、なぜか二人が真っ赤になる。

あれ、もしかしてオレ邪魔では?

またその場を離れようとするとがっしりと両側から身体を掴まれた。

「受けは危なっかしいから私が支えよう」と騎士団長が言えば「私に掴まれ、お前よりは逞しいぞ」とすぐさま第二王子が言う。

推しにサンドイッチにされてることにまた脳が飽和して倒れそうになる。

何度も二人きりの機会を作るが悉く失敗して、二人が結ばれる気配がない。

このままでは二人のイチャラブが見られないじゃないか!

ハッ、もしかしたら受けが邪魔をしているのかも知れない。

案外、第二王子の寝室では毎晩……想像して鼻血を拭いた受けは、その夜こっそりと第二王子の部屋に忍び込む。

そこへ二人がやってきた。

オレの読みバッチリ!と壁に徹して二人の営みを観察しようと息を潜めていると、何か話し合いを始め、それがなかなか終わらない。

そしたら第二王子が騎士団長の胸ぐらを掴み、騎士団長も第二王子の両肩を掴んだ。

これは!

はぁはぁ興奮しすぎた受けは、もっと側で見たいという欲望のままふらふらと二人に近づいてしまう。

なぜここに受けが、と思った二人は慌てて聞き出す。

「すみません、二人の愛の時間を邪魔しようと言うつもりは……ちょっと覗き見たかったんです!オレのことを壁だと思って続けてください!」

「へぇ、見たかったの、これが」

第二王子が服を脱ぐのを見て顔を真っ赤にする受け。

「そうですか、では私も」

騎士団長まで脱いで筋肉質な綺麗な身体を晒してくる。

どちらも受けより逞しくて綺麗で、キャーッと顔を隠しても指の間からガン見してしまう。

「随分と特殊な趣味だけど、付き合うのはやぶさかじゃないよ」

「そうですね、貴方が望むならなんでもいたしましょう」

二人がシコシコし始める。

なんていう眼福!

思わず二人の足元にしゃがみ込んでしまう。

受けは恍惚としたまま二人の一人遊びをガン見してははぁはぁしてしまう。

「うっ」

若い分、第二王子が先に達ってしまい、しかも受けにガンシャする。

それに興奮して騎士団長も手を早め、受けにガンシャした。

うそっうそ!

あまりのことに恍惚とする受けの顔に二人は蜜を塗り広げていく。

「こういうことされるのが好きなんだ、結構趣味が合うね」

「なんて淫乱なんだ……これでは貴方に溺れてしまう」

なぜか受けに伸びてくる四本の手。

男同士のあれこれになれた大人のテクニックを披露する騎士団長に後ろを開発されてアンアンし、焦らしプレイが大好きな第二王子の鬼畜テクニックに達けなくて悶え腰を振ってしまう。

一晩のソロプレイ記録を優に超える回数達ってしまった受けは激しく後悔した。

なぜもっと壁に徹さなかったんだ、と。

だが確信もあった。

二人はできている、そして普段は面に出さないが夜には濃厚な愛の時間を育んでいると。

次の日もこっそりと第二王子の寝室に潜り込む。

今度はちゃんと壁に擬態できるように女官にお願いして壁紙と同じ柄のパジャマを用意して貰ったから完璧だ。

これであとは二人のプレイが始まるのを待つだけ、のはずがすぐに見つかってしまう。

「だから壁だと思ってください、邪魔はしませんから」

「そうか、壁か……では動いちゃだめだよね」

「壁ならきちんと立っていなければ」

受けを立たせた二人はまた前後から可愛がり始める。

しかも今回はしっかりと受けを喜ばせるために薬まで用意していたのだ。

「もっとここをたっぷりと濡らさなければ、私のものは挿らないな」

媚薬入り潤滑剤で中を解す騎士団長。

「きっと君はこういうもののほうが好きになるよ」

肌を敏感にさせる薬を身体中に塗ってくる第二王子。

そこから胸を開発され、そこに刺激だけで達くまでに育てられ、解すだけだった後ろは知識だけで知っている良い場所を何度も押されてまた達ってしまう。

もう立ってることもできず床にしゃがみ込んだ受けに二人のものが差し出される。

「どっちが欲しい、当然王子であるこっちだよね」

「いや、君をどこまでも気持ちよくする私のだろう」

頭上で火花が散らされているのに気付かない受けは、フラフラと灯りに近づく夏の虫のように二人のものをペロペロしてしまう。

あまりにも淫猥な絵に二人は興奮し、串刺しから始まって交互に抱き始めた。

どこを触られても気持ちいい受けはもう感じすぎて我を忘れてしまい、喜びすぎては記録を更新してしまう。

翌朝生まれたてのバンビのような足腰で起き上がれず、二人にまた甲斐甲斐しく世話をされてしまう。

違うんだ、違うんだー--!と心の中で叫んでも、公務の合間にやってきた第二王子に「泣いてる顔も可愛い」とあんなにしても満足しなかったのかと言いたくなるくらいまた挿れられ、騎士団の練習が終わって見舞いに来た騎士団長にも、あんた疲れってもんを知らないのかと思うくらいバンバンされて。

伏せっているのにちっとも体力は回復しない。

そして夜になると昨夜の続きとばかりにまた変な薬を使われて二人に抱かれてしまう。

気持ちよすぎて途中から「もっとぉきもちぃぃ」とハート喘ぎ状態になる受け。

だが次の朝また「違う--」と泣き叫ぶのを繰り返す。

このままではこの国全員から敵視されると怯えたが、なぜか王宮は祝福モード。

なぜか結婚式の準備を始め、気がつけば受けはよろよろの腰のまま、二人に支えられ祭壇に立って宣言とサインをさせられていた。

なんで?なんでなんで?

「召喚者はこちらの人間と交わればもう帰ることができないんだ」

「これでずっと貴方と一緒にいられるんですね」

「えっ、三人で結婚とかおかしくないんですか?」

「当然普通ではあり得ないけれど、例外だ」

「貴方は召喚者だ、この国の法律は適用されない」

また二人におかしくなるくらい抱かれてしまい、気持ちよくなって我を忘れてしまう受けだが、次の日も抱かれそうになって大号泣。

「違うんだーーーー、オレが望んでいるのはこれじゃないんだぁぁぁぁぁぁ」

あまりの号泣っぷりに二人の夫はオロオロしてしまう。

「お前の望みならこの第二王子がなんでも叶えるぞ」

「私も貴方の願いならどんなことでも叶えましょう」

「……ほんと?なんでも???」

「もちろんだ」

「私を信じて欲しい」

涙で可愛く濡れた受けの顔に二人とも脂下がっているが、告げられた願いに固まった。

「本当にやらないとだめか?」

「他のことではだめなのだろうか」

「やっぱりだめだったんだぁぁぁぁぁ」

「いや、やる!やるから泣き止んでくれ」

「分かった。分かったから泣かないでくれ」

第二王子と騎士団長は嫌々互いの絡みポーズを受けに見せれば、一瞬にしてニコニコしてスケッチブックに描き殴っていく。

「なんでこのような……」

「こんな筋肉お化けとか気持ち悪い」

「あっ動かないで二人とも笑って!」

この屈辱は絶対にお前の身体で……と誓う二人に、デッサンが終わるとすぐさまベッドに引きずり込まれ、いつも以上に泣かされるのだが、受けは理解しなかった。

そして受けが発行した同人誌は市井でバカ売れした。

『召喚者様の愛欲の日々』というタイトルが付けられ、二人の夫を見せびらかす本として王立図書館にまで所蔵されることになったが、当然受けは知らないまま。

夜ごと二人の夫に可愛がられてしまうのだった。


おしまい
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