ツイノベ置き場

椎名サクラ

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【リクエスト】妻を亡くしたやもめ受けの話

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妻を亡くしたやもめ受け。

息子はすくすく育ち、高校生になった。

ある日、息子から明日は帰らないと言われた。

「どうしたんだ?」

「彼氏の家に泊まりに行くから」

「ああそうか……彼氏?」

うちにいるのは男の子じゃなかったか?

受けは根掘り葉掘り『息子の彼氏』情報を聞き出し、翌日その家にクレームを言いに乗り込んだ。

学校のある時間だが親はいるだろう。

話し合えば相手と別れさせてくれるんじゃないか、そんな強かな計算があった。

が、到着したのは豪邸と呼ぶにふさわしい家。

日本家屋で敷地がとにかく広い。

「もしかしてヤクザ……とか?」

嫌なことを考え、慌てて気を取り直しインターフォンを押した。

お手伝いさんが出てきそうな大きさなのに、インターフォンに出たのは男だった。

「ご子息の友人の○○の父です……あの、お話がありまして」

「あぁ、○○くんのお父さんですか、どうぞお入りください」

声のニュアンスで、相手の親だと分かった。

扉が開き出てきたのは長身の自分よりも年上の男性だった。

息子の恋人の父親だという。

日本家屋らしい落ち着いた居間に案内され、日本茶が出てくるかと思いきや洒落た紅茶が出された。

聞けば、すでに息子はこの父と挨拶をしているらしい。

「とても可愛らしい子で羨ましいです。うちのは粗雑で……きっと可愛いのはお父さんに似たのでしょうね」

「いや、妻に似たんです……もうなくなりましたが」と口にしてしんみりとしてしまう。息子が生まれたのと引き換えに命を落とした妻との結婚生活は短かったが、感謝しかない。

「奥様はすでに他界されていると伺ってますが、男で一つで素敵なお子さんを育て上げたんですから自信を持って下さい」

「いや、そうだといいんですが……」

なぜか子育て話になり、しんみりと苦労などを語っていた。

男性がまた聞き上手でいいタイミングの時に相づちを打つものだから、ぽろっぽろっと出ていた言葉がぽろぽろになり、終いにはボロボロと涙まで零れ出てしまった。

いい父親だったか不安だったが、両親に頼らず一人で育て上げてやるという気概だけで突っ走って、気がついたら17年。

ふとこれで良かったのかと反芻しても、正解が分からず相変わらず暗中模索だ。

「とてもご苦労をなさったのに、その姿は見せないなんて親の鑑じゃないですか」

「別にそういうわけじゃ……」

おだてられ宥められ、緊張していたはずなのに、気がつけば顔が綻んでいた。

「そういう貴方が育てたから○○くんも真っ直ぐに育ったんでしょうね」

「お世辞でもそう言っていただけると嬉しいです」

「お世辞ではありませんよ、お父さんが頑張った成果の表れです」

気がつけば家にお邪魔してから二時間も経過していた。

本来の目的を忘れてしまった受け。

紅茶を追加され、刻々と渇いた喉を潤していく。

「親子揃ってとても素直で好感が持てます。これからは是非、家族ぐるみでお付き合いいただけると嬉しいです」

男性は終始柔和な笑顔を浮かべていて、敵愾心を全て剥ぎ取り信頼を寄せてしまう。

ジャパニーズサラリーマンの受けはそんなことを言われて「嫌だ」とは言えず、しかもすでに心開いてしまい、「こちらこそ」と返事をしてからやっと本来の目的を思い出した。

「あっ、その……いや、あの……」

慌てて二人を別れさせたいために来たのだと口にしようとしても、上手く出てこない。

一度肯定を口にしてそれをすぐさまひっくり返すのは男らしくなく、男性に軽蔑されるのではないかと恐くなった。

(俺は可愛い息子の彼女を紹介して貰うのを夢見てたはずなのに……孫だって抱きたいぞ!)

なのに口にはできないジャパニーズサラリーマン。

「本当に親子で愛らしい。こんなにも可愛い人が17年も一人でいるなんて」

なぜか隣に座ってきた男性は当たり前のように腰に手を回してきた。

本能的な危機を感じて逃げようとしても、慣れない正座で足が動かない。

「ずっとここをご自分で慰めてきたんですね」

男性の手が男の一番弱い場所に触れて「ひっ」と悲鳴を上げたが、僅かに動くだけで痺れが襲ってきた。

足の、ではないのはすぐに分かった。

「人に触って貰うのは久しぶりですか? それともそういうお店のお世話になりましたか?」

「ぁ……やめっ」

抵抗したいのに、久しぶりの自分の手ではない刺激に受けは腰砕けになった。

「本当に可愛い……○○くんも可愛いが、貴方はその奥に色気を含ませてますね」

ズボンの上から弄っていた手が、ファスナーを下ろし入ってきて形を変えた物を玩び始める。

それだけで受けはどうしようもなくなり、力が抜けていく。

男性が後ろから抱きしめてきた。

その身体に凭れかかってしまうほど力が入らない受けは、ズボンのボタンを外し下着を下ろされた格好になる。

両手で丁寧に扱かるともう駄目だった、達することしか考えられず身悶える。

そして大量の蜜をその手に吐き出した。

はぁはぁと荒い息をしていると「頑張って子育てして、こんなにも溜めていたんですね。ああ、本気になってしまいました」

男性はチュッと唇にキスをすると、受けの服を整えた。

「本気で貴方を口説かせてください。好きになりました」

驚いた受けは慌ててそこから逃げ出した。

だが、次の日からGPSを仕込まれているんじゃないかと行く先々でバッタリと男性に会う。

そのたびに「好きですよ」とか「付き合いましょう」とか言ってくる。

男同士でそんなことはおかしいと思うのに、男性は優しく紳士的に接してくる。

初めて会ったあの日にされたことが嘘じゃないかと思うくらい。

お茶に誘われても何もしてこない。

初めてはビクビクしていた受けもドンドンと警戒心を解いていった。

なにせ男の話はとても興味深い。

弁護士をしているだけあって知識は豊富だし話術も巧みだ。

小さな会社のしがない営業である受けにとって興味深い話をたくさんしてくれた。

それを取引先での商談前の雑談で豆知識のように出せば感心されてしまうようになった。

営業ノルマなんて達成したこともないのに、不思議と徐々にではあるが営業成績も伸びていく。

そう言えば必死で子育てし始めてから新聞どころかニュースを見るのも稀だと気付いた。

勉強不足を自覚して少しずつではあるが新聞を読んだりニュースを追ったりしてみれば、余計に男性と話すのが楽しくなる。

なにせ打てば響くのだ。

そしてもっと深い知識や別の角度から見た場合を告げられる。

初めてノルマを達成した日、受けは自分から男性に連絡して喜びを伝えた。

男性も同じように喜んでくれた。

「お祝いしないと駄目ですね」

「貴方のおかげで見識が広がったので是非お礼をさせてください」

そんなやりとりをしてなぜか夕食を一緒にすることになった。

息子に伝えれば、あっさり了承される。

さすがに高校生になれば親が鬱陶しくなるのかと少し淋しかったが、受けはすっかり忘れていた、その夜会うのは息子の彼氏の父親であることに。

男性が予約したホテルの上階にあるレストランで食事をし、久しぶりに酒を飲んだ受け。

気持ちがふわふわしてしまい、普段だったら聞かないことを聞いてしまった。

男性になぜ奥さんがいないのか。

「仕事にかまけていたら浮気をされてしまったんですよ」

「その人、男を見る目がないですねーこんなにもいい人なのに」

「貴方がそう思ってくれるなら嬉しいです」

「思ってますよ、俺だったら浮気なんかしないのにな」

酔った勢いで口にして笑った、男からそんなことを言われても嬉しくないだろうと思って。

男性も笑った。

「では是非、浮気しないところを見せてください」

「いいですよー」

酒の席の冗談だと思ったのに、受けはそのままホテルの一室に連れ込まれて抱かれてしまった。

しかもめちゃくちゃ巧くて、途中で逃げられないくらい感じさせられてしまった。

終わったときには、初めて後ろで男を受け入れたのに痙攣が止まらない。

「こんなにも感じてくれたんだ……嬉しいな。もっと貴方を可愛がらせてください」

感じすぎて正気になれないまま、また抱かれ身も世もなく感じてしまい、そのまま朝まで一緒にいてしまう。

正気に戻った受けは慌てたが、すぐに腰を抱かれてキスをされた。

それがまた気持ちよくてどうしようもない。

抵抗したいのにずるずると気持ちいいに流されてしまい、手も足も出なくなる。

それからというもの、週末になれば呼び出されて「恋人の時間」を無理矢理に作られては、そのたびに気持ちいいことをされて溺れてしまう。

だがどうしても自分も男だというプライドが邪魔をしてこの関係を素直に受け入れられない。

どうやら子供達も親密になっていっていると気付いてはいるが、自分も男性の手管に絡め取られ抜け出せなくなった後ろ暗さから見て見ぬ振りをしてしまう。

本当は別れさせたいのにと思っても口には出せない。

そのままずるずると付き合っていく。

男が男と付き合うなんておかしいと思うのに、男性から離れるつもりがない自分もいた。

ベッドの相性だけでなく、会話をするだけでも心地よいし、なによりも「好きだ」とか「愛してる」とか「君と付き合えたことが何よりもの幸運だ」なんて言われて、こっぱずかしいのに胸が躍るのだ。

どう返したらいいのかも分からないのに、ひたすら愛情を注いでくる。

こんな風に誰かに愛情を向けられたのは初めてではないかというレベルでとにかく構ってこようとする。

平日はメッセージアプリでの連絡だけと言わなければ電話を掛けてきては「君の声が聞きたかった」なんて赤面もののセリフを平気で言うしで、心まででロデロにされてしまいそうだ。

せめて平日くらいはちゃんと父親をしないとと思っても、メッセージアプリの画面いっぱいに「愛してる」なんて送られてきて赤面してしまう。

「君と一緒に住めたらいいのに、どうしても駄目かい?」

何度もしたやりとりをその日もされた。

男性はどうしても受けと住みたいらしい。

だがそんなことをしたらますます気持ちが切り替えられなくて困ってしまうと断るのが常だ。

「またその話?」

「毎日でも君の傍にいたいんだ。仕事で疲れた君が帰ってきたら出迎えたいし疲れを癒やしてあげたい」

そんなことを言われたら絆されてしまいそうだが、最後の一線を越えてはいけないと自分をセーブする。

想像したらすごく幸せそうで、一度でも味わったら絶対に離れなくなりそうだ。

受けはそれが恐かった。

男なのに男に愛されることに慣れてしまうのが。

だが神がそれを許さないかのように、受けのアパートが上階の風呂故障により水浸しになってしまう。

とても住むことができなくて困っていると、息子の彼氏がいち早く情報をゲットして男性に伝えた。

「聞いたよ、家が水浸しなんだって?直るまでの間、うちに泊まれば良い。部屋は余っているんだから」

さすがに緊急事態だし、大家からは復旧の見通しが立たないと言われ、仕方なく息子共々お世話になることに。

男性親子はそれはもう嬉しそうに受け親子を迎え入れ、甲斐甲斐しく世話を焼く。

仕事に行っている間に掃除洗濯は終わっているし、帰ってきたら美味しい料理もできあがっている。

しかも凄く手が込んでいて、受け親子は感動し胃袋を鷲掴みされた。

こんなのを知って家に帰って自分で料理するのが馬鹿らしくなる。

しかも夜になれば隅と隅に離れた部屋に受け親子はバラバラに引きずられてしまい、防音だという空間でめちゃくちゃ甘やかされてしまう。

息子もいる家の中でそんなこと! と思っても「防音だから声が漏れることはないし、鍵もかかってる。安心しなさい」と甘く溶かされてしまう。

そのままなし崩しで一ヶ月二ヶ月と過ごせば、もう男性親子と住むのがなんとなく当たり前になり、これでいいのかなと思いながらも居心地の良い空間で共同生活を楽しむのだった。



おしまい
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